2017/08/23

アニ イモウト

 アニ イモウト

 ムロウ サイセイ

 アカザ は ネンジュウ ハダカ で カワラ で くらした。
 ニンプガシラ で ある カンケイ から フユ でも カワバ に でばって いて、 コヤガケ の ナカ で チチブ の ヤマ が みえなく なる まで シゴト を した。 マンナカ に イシ で へりどった ロ を こしらえ、 タキビ で、 カン の ウチ は うまい フナ の ミソシル を つくった。 ハル に なる と、 カラダ に シュ の セン を ひいた ウグイ を ヒトアミ うって、 それ を ジャカゴ の ノコリダケ の クシ に さして じいじい あぶった。 オナカ は コ を もって はちきれそう な やつ を、 アカザ は ホネゴト しゃぶって いた。 ニンプ たち は めった に わけて もらえなかった が、 そんな に くいたかったら テメエダチ も ヒトアミ うったら どう だ と、 トアミ を アゴ で しゃくって みせる きり だった。
 アカザ は ジャカゴ で セギ を つくる の に、 ジャカゴ に つめる イシ の ミハリ が きいて いて、 アカザ の ジャカゴ と いえば ユキゲドキ の アシ の はやい デミズ や、 ツユドキ の コシ の つよい ゾウスイ が マイニチ つづいて カワゾコ を さらって も、 たいてい、 リュウシツ される こと が なかった。 イシヅミブネ の ウエ で なげこむ ジャカゴ の イシ を ミハリ して いる カレ は ジャカゴ の ソコ ほど おおきい イシ で かため、 アイダ に コガタ の イシ を なげこませ、 スキマ も なく たたみこむ よう に メイレイ した。
 なげこむ イシ は ちからいっぱい に やれ、 イシ より も イシ を たたむ こちら の キアイ だ と おもえ、 へたばる なら イマ から シャツ を ほして かえれ、 アカザ は こんな チョウシ を フネ の ウエ から どなりちらして いた。 テメエ の フンドシ は かわいて いる では ねえ か、 そんな フンドシ の かわいて いる トセイ を した オボエ は ない オレ だ から、 そんな ヤツ は オレ の テ では つかえない、 アカザ は そんな ふう で ニンプ たち の タイキ を みせる ヤツ を どんどん カイコ した。 アサヒ が カワラ の イシ を まだ しろく しない マエ に、 いつも その ヒ の ニンプ だち の デアシ を しらべ 8 ジ が 5 フン おくれて いて も、
 ――なあ、 オレ にも オハット が ある と いう もの じゃ ない か。
 そう いう と シゴト の ワリアテ を しない で、 その ヒ は そんな ニンプ を つかおう と しなかった。 ドウグ を かついで ニンプ は カワラ から ドテ へ、 ドテ から イマ でて きた ばかり の イエ へ もどらねば ならなかった。 そんな ヤツ を ふりかえり も しない で、 7 ハイ の フネ に イシヅミ の テワケ を し、 ジャカゴドメ の ボウグイ を うつ モノ を ハダカ で ミズ の ナカ へ おいこみ カワラ では ジャカゴ を あむ シゴト を ヒトマワリ しらべる と フネ を フチ の ウエ に とめて スイシン に わりあてられる ジャカゴ の カズ を よんで いたり した。 そういう アカザ の モチブネ の ナカ に ながい タケ の エ の ついた ヤス が 1 ポン ヨウイ されて あって、 シンマス が およぎすんで いて、 ミズ と おなじ イロ を して いる の を メ に いれる と、 その ヤス の エ が スイシン いっぱい に しずみこんで ゆき、 さらに 5 スン ばかり トツゼン に ぐいと つきこまれた な と みる と、 ウソツキ の よう な クチ を あけた ぎちぎち した マス の アタマ の フカミドリイロ が、 みごと な 3 ボン の サカサボコ の カタチ を した ヤス の サキ を ゆすぶりながら さされて いた。 その オ の サキ で ウデッパラ を たたかれたら しびれて しまう と いわれた カワマス も、 アカザ の コブシ で がん と ヒトツ はられる と、 マス は オンナ の アシ の よう に べっとり と うごかなく なる の で あった。
 ニンプ だち は カワゾコ の シゴト で すら ゴマカシ が きかず に、 アカザ の ガン の ナカ で ミズ を くぐり イキ を はき に うかび、 また ミズ の ナカ に もぐって いった。 ワカバ の キセツ は ミズ の ソコ も そのよう に あたらしい ワカアユ や ハゼ や、 イシ まで あおむ こころよい シュン で あった から、 アカザ は カンシャク を おこす と ジブン も とびこんで いって、 ニンプ の カラダ を こづいたり アタマ を ヒトツ ひっぱたいたり して セスジ を たつ コウジ に いちばん カンジン な ソコダタミ に おおきな イシ を しずませる の で あった。 ミズ の ナカ で すら アカザ の シワガレゴエ が やまず に どなりちらされた。 どんな はやい ソコミズ の ある フチ でも アカザ は ヒラメ の よう に カラダ を うすく して しずんで ゆき、 スイチュウ の イキ の ながい こと は ニンプ たち も およばなかった。 ニンプ たち は ミズ の ナカ で おこった ギョウソウ を こわがった が、 ミズ の ナカ から あがる と いつも キゲン が よかった。 カワ の ヌシ で ある より も、 ジブン で つくった イケ くらい に しか、 カワ の こと を かんがえて いなかった。
 コヤガケ に ツキ に 2 ド の ゼニカンジョウ の ヒ には、 アカザ の ツマ の リキ が たずねて きた が、 これ は ミンナ から カカアボトケ と いわれる ほど、 ゆったり と モノワカリ の よい ニュウワ な オンナ だった。 リキ は いつも アカザ を あんな ヒト だ から あんな ヒト と おもうて つきあって くだされ、 いくら ソト から いったって ダメ だ から ききたく ない こと は きかなく とも よい から と、 てんで アカザ を アタマゴナシ に ときふせて いる が、 アカザ は リキ に かまいつけない で、 ふん とか、 うん とか、 それ だけ コトバミジカ に ヘンジ を する だけ だった。 ゼニカンジョウ は カワラ シゴト には めずらしい くらい きれい に しはらわれ、 ケチ な ハシタ を けずる こと なぞ しなかった。 リキ が ウケオイ の アトバライ を サキ に まわす こと に ニンキ を えて、 カンジョウビ に センベイ や オイモ の ツツミ を もって ドテ の ウエ に スガタ を あらわす と ニンプ たち は ミンナ テ を ふって むかえた。 オチャ の 3 ジ には リキ を とりかこんで アラオトコ たち が ゲンキ に べちゃくちゃ しゃべり、 リキ の テ から もらう カネ を キモノ に いれたり テヌグイ に つつんだり して、 カワラ が いっぱい に コエ を そろえて、 にぎおうて くる の で あった。 アカザ は リキ から ホウコク を きく だけ で カネ の こと は ながい アイダ の シュウカン で、 マカセキリ で あった。 アカザ は シゴト だけ を し に きて いる よう で、 ヨウジ の ない 3 ジ にも カワラ と カワラ を ニブン して いる ナガレ と を、 みつめて いる に すぎなかった。 ニッコウ の ナカ で シゴト を しつづけて いる ニンゲン は、 メ の ナカ に まで ヒヤケ が して いる ごとく アカザ の メ も そのよう で あった。 そのよう な メ は ただ カワシゴト を する だけ に うまれついて いる よう で あり、 アメツヅキ の デミズ の ヒ にも わざわざ デバ まで いって、 にごって ぶつぶつ ドロ を にて いる カワミズ を ながめて いた。 そんな とき に にごった アカザ の メ は かなしそう に しぼんで、 ダクリュウ の ナカ に そそぎこまれて いる よう で あった。 つないで ある フネ は キシ と スレスレ に ナミ に おしあげられ、 コヤ は きれい に ながされて しまった ドロナミ の たった カワラ は、 アカザ なんぞ の チカラ や メイレイ が どんな に ナカマ の アイダ に ハバ が きいて も、 デミズ の イキオイ には かなわなかった。 ナナツ の とき から カワラ で そだち、 15 で イチニンマエ の イシオイ が でき、 ジャカゴ の タケ の ササクレ で アシ を チダラケ に して そだった アカザ は、 デミズ の ドロニゴリ を みる たび に おそろしい もん だなあ と おもう が、 どうして そんな デミズ が おそろしい ヒャク スウジッポン の セギ の ジャカゴ を おしながして しまう か が わからなかった。 ハタチ コロ から イッポンダチ に なって も ジャカゴ の コシラエ は 1 ネン と もたない で ながされて しまう が、 やっと カワゾコ の ブン だけ は いつも のこって いて それ だけ でも ナカマ では 「アカザ の ジャカゴ」 と して ほめられて いた。
 アカザ は リキ が カンジョウ を すまして かえろう と する と、
 ――モンチ は かえって きた か。
 と、 カンジョウ を あらわさない で、 なんでも ない こと を そういう よう に きいた。
 ――かえって こない ん です。
 ――イノスケ は シゴト に でた か。
 ――あれきり フテネ して いる の。
 ――もう ヨウ は ない よ。
 アカザ は そう リキ に いう と、 モチバ に ついた ニンプ だち の ほう に むいて あるきだした。 ふとった アカザ は ふとった ヒト が どっしり と あるく クセ が ある よう に、 カワラ の ウエ に たくましい カラダ を はこんで いった。
 アカザ には 3 ニン の コドモ が あった。 コドモ は コドモ で ある が、 チョウナン の イノ は 28 に なり イシヤ に ネンキ を いれ イチニンマエ に なって いた が、 ナマケモノ の うえ に どこ で どう カンケイ を つける か、 しょっちゅう オンナ の こと で ゴタゴタ が たえなかった。 ワタリ の きく イシ ショッコウ でも イノ は ボヒ の ブンコク に ウデ が さえて いた から、 コクメイ に さえ はたらけば カネ に なった が、 1 シュウカン か トオカ-カン も はたらきつめる と その カネ を もった きり、 2~3 ニチ は かえって こなかった。 イモウト の モン の イイグサ では ない が アサクサ アタリ の デンシャ や ジドウシャ が ごう と なって きこえる の でしょう と いって いた。 ミッカ も たって かえる と また シゴト を はじめ その カネ が テ に はいる と、 また すぐ でかけて しまう の で あった。 リキ の コゴト など てんで ミミ に いれず、 アカザ は ヒ が くれなければ シゴト から かえらない ので、 バン は うまく オヤジ と カオ を あわす こと を さけて ソト に でて いた。
 イノ の シタ に イモウト が フタリ いて アネ は モン と いい、 ミンナ から アイショウ を モンチ と いわれて いた が、 シタヤ の ダントウジ に ホウコウ して いる うち に ガクセイ と できて しまい、 その コドモ を はらむ と、 ガクセイ は クニ に かえって しまい ブンツウ は なかった。 ぐれだした モン は ホウコウサキ で ツギ から ツギ と オトコ が でき、 コンド は コリョウリヤ や サカバ を それ から それ と わたりあるいて ハントシ も かえって こなかった。 かえって くる と だらしなく ねそべって ナニ か だるそう に あえいで いる よう な イキヅカイ で、 リキ を アゴ で つかって いた。 リキ は クチコゴト を いいながら も、 この コ は つまらない こと で クロウ して いる が、 イイカゲン に しない か と いい、 ハンブン は カオ を みる の も いや そう に しながら、 ハンブン は きつく あわれがって たべたい もの を つくって やり、 ねむれる だけ ねむらして おく の だった。 じっさい、 モン は ねむりたりた と いう こと も ない ほど カオ が マッサオ に なる まで ねむって いた。 リキ は そんな クタビレ が よく わかる キモチ が し、 アニ の イノ が ソトドマリ で かえって くる と、 やはり シュウジツ ウチトオシ で カラダ に アナ の あく ほど ねむって いた。 カレラ キョウダイ は おきる と、 メ を ほそめ いまだ クタビレ の のこる だるい カラダ を カタテ で ささえながら、 ハハオヤ の テマメ に うごく スガタ を めずらしく も なく ながめる だけ で あった。 イノ は この ハハオヤ が しんだら この イエ には いられない と おもう とき だけ、 リキ が ハタラキツメ で うちたおれ でも しなければ よい が と、 ハハオヤ の カオ を ちょっと の マ ミ に しみて みる の で あった。 だが、 そんな こと は その アイダ だけ で すぐ わすれて しまった。
 モン は こんな こと を いって それ が いちばん カンジン な こと で ある よう に、
 ――オカネ の シンパイ だけ は させない わ。
 と、 ハハオヤ に いう の で あった。
 やっと 1 ネン も たって ガクセイ で あった オバタ が アカザ の イエ に たずねて きた とき は、 モン は ゴタンダ の どこ か に つとめて いた が、 レイ に よって トコロバンチ は しらない ので タズネヨウ が なかった。 そのかわり ツキ に イチド は キタク する から と いう の だ。 リキ ヒトリ で この モンダイ の カイケツ の シヨウ が なく カワラ の デバ に いって アカザ に この ハナシ を した。 アカザ は だまって コヤ から でる と、 リキ と イッショ に ドテ の ウエ に のぼり、 ドテヅタイ に ちかい ジタク へ いそいだ が、 リキ は アイテ が わかい ガクセイ の こと で ある から てあら な こと を しない で いて くれる よう に いった。
 ――たぶん、 コドモ の シマツ を つけ に きた ん でしょう。 まだ、 コドモ が いきて いる と でも かんがえて いる の じゃ ない かしら。
 ――すれた オトコ に みえる か。
 ――まるで ボッチャン です。
 アカザ は コバタ と むきおうた が、 アカザ の タイシツ フウボウ の イアツ で オバタ は すぐ モノ が いえない ふう で あった。 アカザ は タンテキ に ヨウケン を てばやく いって いただきましょう と いった きり、 むっつり と だまりこんで しまった。 オバタ は イマ まで うっちゃって おいて あがれた ギリ では ない が、 クニ の オヤジ に キンソク ドウヨウ に されて いて ぬけだす スキ が なかった の だ と いった。 コンド ジョウキョウ して イロイロ の ヒヨウ を フタン させて もらい、 それ を ジブン だけ の リョウシン の ツグナイ に したい と いった が、 カンジン の モン と イッショ に なる とか、 モン に あわせて くれ とか いう こと を ヒトコト も いわなかった。 かえって モン が いない の が この オトコ に ツゴウ の よい ゴタゴタ を さけさせて いる よう に、 アカザ は すぐ みぬいて しまった。 もひとつ よわそう な ガクセイ アガリ に みえる この セイネン の ジッチョク そう な ヨウス とは ハンタイ に こういう オトコ だ から 1 ネン の アイダ どんな テガミ を やって も、 ヘンジ 1 ポン ださず に いる コンキ ヨサ と、 ツッパナシ の コシ を すえる こと が できた の だ と、 あおじろい カオ に リコウ そう に カクゴ を きめて しゃべって いる オバタ を、 コイツ バカ で ない カケアイ を もって きた と おもった。
 ――コドモ は シザン でした。 モン は あれ から、 やぶれかぶれ です。
 アカザ は これ だけ いう と、 おどろいて メ を きょとん と させた オバタ に つつみきれない メンドウクササ から ぬけた ほっと した キモチ を かんじる こと が でき、 アカザ には それ が すぐ わかって ヤロウ うまく やりやがった と おもい、 とおい タマ まで アシ を はこんだ カイ が あったろう と、 そう カレ は だぶだぶ の ハラ の ナカ で おもった。 オモン さん は イマ どこ に いる の でしょう、 よかったら イドコロ を しらして いただけない でしょう か。 ボク は あやまりたい こと も たくさん たまって いる ので、 それ を あやまって さっぱり した キモチ に なりたい の です と、 イキオイ を えた ミョウ な コウフン した ゴセイ で オバタ は いった が、 アカザ は この アオニサイ イイキ に なって いる と、 みえすいた カレ の アンド した キモチ が、 アタマ を あおって きた。 モン の ハラ に コドモ が ある と リキ から きいた とき の ぐらぐら した いや な キモチ を もてあつかった あの ジブン の、 カワラ シゴト の デバ の フキゲン を けちらす こと が できず に、 どれだけ コモノ ニンプ に コブシ や ホオウチ を くらわした か わからなかった。 アカザ は つかれて いる の じゃ ない か と カゲグチ を たたかれる ほど、 そこら に キモチ を おちつける ところ が なかった。
 モン は オクノマ で ネタキリ で あった。 ムスメ が はっきり と ダレ か に オモチャ に され まけて かえって きた と、 かんがえる と、 まけた こと の ない アカザ は モン の カオ を みたく も なかった。 ドウラクモノ の イノ は ああ なる こと は ハジメ から わかりきって いる こと だ、 だから オレ は イエ から オンナ を はなす こと は あぶない と いった の だ と、 リキ を ヒマ さえ あれば いじめた。 リキ は いじめられた きり で だまって いた が、 イノ が ときどき きたない もの を ひっくりかえす よう に モン の ネドコ に たちあがった まま、 おおかた、 ニヤケ ヤロウ に べたついて、 コドモ ジブン の ヨダレ を もう イッペン たらしやがった ので、 ヘソ の ウエ が せりだした の だろう。 イヌ だ か ムク だ か ワケ の わからない もの を へりだす マエ に、 なんとか、 リコウ に カタ を つけた ほう が いい、 ラシャ-くさい ショセッポ の ひいひい なきやがる ガキ の タマゴ の ヨナキ なんぞ きく の は まっぴら だ と、 ズツウ で コオリ で ひやして いる マクラガミ で どなる ので、 リキ は わざわざ イノ に あんまり クチ が すぎる よ、 オマエ の しった こと じゃ ない から こっち に きて いて くれ と いって も、 チカゴロ ヨソ の オンナ との アイダ の うまく ゆかない イノ は なんの ハライセ だ か、 どなる こと を やめなかった。 シンミ の キョウダイ の にくみあう キモチ は こんな に つっこんで アクタレグチ を たたく もの か と、 ハハオヤ は あきれて モノ が いえない くらい だった。 イノ は ツヅケザマ に その ツラツキ で いちゃつきやがった か と おもう と、 オラ、 ヘドモノ だ、 しかも アイテ の ヤロウ は テメエ より 10 バイ-ガタ リコウ と きて いる から、 しゃぶって しまったら アト に ヨウ の ない オンナ と ズイトクジ を きめこんだ、 まったく ネンジュウ その ツラ を みて いる ヤツ も たまらない から なあ、 ナマエ も いわなければ クニ の トコロ も いわず ヤロウ は ヤロウ で うん とも すう とも いって こない じゃ ない か。 そんな ヤロウ を かばいやがって いとしがる なんて コンチクショウ あ、 まったく ほれた ん だ か ぬけやがった ん だ か しらない が ホウズ の ない アマッチョサ、 ハラ ん ナカ の ガキ が どんどん ふとりやがって ズ に のって ぽんと とびだした ヒ にゃ、 セケン じゃ ダレ あって アイテ に して くれる モノ は なし さ、 ガキ を つれて ドテ から ノリアイ に のって トウキョウ の マンナカ へ でも いって、 どこ か に カエル の よう に つぶれて しまう か しなければ おさまる シロモノ じゃ ない と、 ジブン で チョウシ-づいて ドクゼツ の コヤミ も なかった。 リキ が とめる と また かっと なって オッカア も オッカア じゃ ない か、 こんな シタタカモノ を うみつけて おいて いまさら オレ の クチ を ふさごう なんて、 おんならしく も ない こと さ、 イモウト の サン の こと を おもう と オラ サン が かわいそう な くらい さ、 ――イノ は スエ の イモウト の サン が キマジメ に ホウコウサキ に いて ときどき ハキモノ なぞ ミヤゲ に もって かえる こと を、 ほめて いう の で あった。 サン の ハナシ が でる と ミンナ だまって サン の こと を かんがえて いた。 あんな おとなしい コドモ も いる のに、 イノ よ、 オマエ の よう に シゴト も しない で アサ から トウサン の コメ さ たべて がんがん いって いる ヒト も いる ん だ、 おこって いい とき と わるい とき と が ある、 イマ は、 モン を とっつかまえて おこる とき では ない の だ もの、 おこって よかったら トッサン に おこって もらえば いい の だ、 トウサン は だまって いなさる の だ もの、 ミナ も だまって モン を しずか に して やらん ならん じゃ ない か と リキ は モチマエ の コエ の やさしい わり に ヒト の アタマ に くいこむ よう な コトバヅカイ で たしなめる の で あった。 モン は モン で ネドコ の ナカ で ズツウ で カオ を しかめながら、 ニイサン だって アヒル と おなじ で ウミッパナシ に して おいて カアサン に アトクチ を いつも ふいて もらって ばかり いる じゃ ない か。 ウラ の トグチ まで オンナ を ひきずりこんで いて とうとう トウサン に みつかった の を、 アタシ が ふらり と でて やって さ、 ソト の オンナ の スガタ を かくまって あげた とき あ、 くらい ところ で テ を あわせて オレイ を いった くせ に、 こんな よわって いる アタシ を イヌ の コ か ナニ か の よう に ヒマ さえ あれば きたない もの アツカイ も タイガイ に して ちょうだい、 ニイサン に たべさして もらって いる ん じゃ あるまい し、 ナニ か の くせ に ぶりぶり して つっかかったり して、 あんまり ひどい わ。 オナカ の ほう の カタ が ついたら アタシャ カカリ は どんな こと を したって つぐなう つもり です。 それ を シオ に もう いっさい カアサン トウサン に シンパイ は かけない わ。 だから、 ワタシ の カラダ に キズ が ついた の を キッカケ に、 アタシ の カラダ を アタシ が もらいきって どんな に しよう が ダレ から も なんにも いわれない つもり よ、 トウサン だって いってた わよ、 オマエ は オマエ で カタ を つけろ、 そんな ムスメ の ツラ あ みる の も いや だ と いって いた わ。 だから ニイサン から そんな ニイサンヅラ を されたって ズツウ が する ばかり で なんにも こたえない わ。 ヨソ の オンナ の シュビ が わるい から って そんな キモッタマ の ちいさい こと で わめきたてる と、 いっそう オンナ に すかれない もの さ。
 アカザ は こういう ごちゃごちゃ した イッカ の ナカ で むんずり と くらして いた あの ジブン の よわった キモチ を かんがえる と、 メノマエ に かしこまって いる ハナ を たらしそう な アオショセイ が、 ムスメ の アイテ とは おもえない キ も して いた。 リキ が てあら な こと を して くれるな と いった が、 だんだん そんな キ が しない で コイツ も かわいそう な どこ か の コセガレ だ と おもわず に いられなかった。 その ハンタイ に カエリ に ドテ の ウエ に おびきだして おもうさま コンチクショウ を はりたおし、 ムスメ の イッショウ を めちゃくちゃ に した ツグナイ を して やろう か とも かんがえて みた が、 アオショセイ を アイテ に して いい トシ を して そんな てあら な こと が できる もの では なかった。 アカンボウ は しんで いる し ムスメ も まんざら で なかった オバタ の こと だ から、 そっと かえして しまった ほう が いい よう に おもわれた。
 ――モン は アンタ に あいたく も なかろう から このまま ひきとって もらいましょう。
 アカザ は こう いう と シゴトチュウ だ から と、 もう たちあがって ドマ に おりて いった。 そして もう イチド オバタ の ほう を みる と、 アカザ は ハンブン しょぼしょぼ な カオツキ に なって、 かんがえて いる こと の ハンブン も いえない よう な コエ で いった。
 ――オバタ さん、 もう こんな ツミツクリ は やめた ほう が いい ぜ、 コンド は アンタ の カチ だった がね。
 アカザ は ジブン で いった コトバ に すっかり まいった キモチ に なり、 いそいで ドテ の ウエ に あがって いった。 ハレツヅキ の カワラ は、 マッシロ に ひかって いる ところ と、 ザッソウ に へりどられた カワラ の ハナレバナレ に なった ところ と、 さらに べっとり と しめった ス の うつくしい アメイロ の ハダ を ひろげた ところ と、 それら の こうぼう と した ケシキ は ひかった ブブン から サキ に メ に はいって ゆき、 はやい ナガレ を つづる 7 ハイ の シゴトブネ が チョウ の ハネ の よう に しろく みえた。 モン も イノ も、 そして サン も ミンナ フナシゴト の アガリ で そだてられた。 モン や、 サン の ウマレガケ の ジブン は リキ は わかくて サキ の やさしい トガリ を もった チブサ を もって いて、 ベントウ の とき には その カラ を もって かえる まで チブサ を ふくませ、 つんで くえる クキ を ぬいて いたり して いた の も、 そんな に とおい こと とは おもえなかった。 だのに ムスメ は コドモ を うみおとす よう に なり その オトコ と つきあって も ショウジキ に どなる キ さえ おこらなかった の は、 よほど アカザ の ココロ が こういう モンダイ に ヨワリ を みせて いる と しか おもえなかった。 リキ に して も アカザ の オウタイ が あんまり オウヨウ-すぎる の と、 かえって アカザ ジシン が はやく この モンダイ から カンガエ を もぎとりたい と あせって いる こと さえ、 さっせられた の で あった。 あの ヒト も よほど よく なり モノワカリ が よく なった と、 リキ は ちょっと ありがたい キモチ に さえ なった の だ。 テ の はやい アカザ は ハナシ の ハンブン から なぐる こと しか かんがえなかった。 なぐる こと が しゃべる 10 バイ の キキメ が ある と いう こと を、 シゼン に ヒトツ の ホウソク の よう に して いる アカザ は リキ に モノ を いう の に、 すこし の マワリクドサ が ある と すぐに なぐる こと しか しらなかった。 リキ は ナグラレドオシ だった が それ の カズ が すくなく なり、 なぐられる と こわい ぞ と いう カンカク が リキ の アタマ に カゲ を ひそめて から、 だいぶ トシツキ が たって いた。 オバタ に そう しなかった の が リキ には うれしく、 オバタ は にくみたりなかった けれど なんの カンガエ も なく やった こと を、 リキ は、 モン も わるい し オバタ も わるい と かんがえて いた。 その カンガエ の ソコ を かっさらって みる と どうにか した エン の マワリアワセ で、 モン と オバタ と が イッショ に なれない もの か と そんな こと も かんがえて みた が、 モン は もう ジダラク な、 ダレ も トリツキヨウ の ない オンナ に なって いた から オバタ に その こと を とく にも、 オバタ が あんまり おとなしすぎる ので ひかえられた。 リキ は オバタ を あいした モン の キモチ が だんだん わかって くる よう な キ が し、 オバタ が かえって ゆく の が おしい よう な キ が した。
 ――コンド ヤドサガリ を して きましたら、 アナタ が おたずね くだすった こと を モン に そう いいつけます。
 リキ は ハハオヤ-らしく そんな やさしい コトバ さえ つい だして しまった。
 ――そして トコロ を きいて おいて ください。
 オバタ は カネ の ツツミ を とりだし ムリ に リキ の テ に おさめさせた。 リキ は オバタ を おくって でて、 この ヒト には イッショウ あえない だろう と かんがえた。 オバタ も ハハオヤ-らしい リキ に したしむ こと が こころよく かんじられた ので、 ぐずついて すぐに マエニワ から トオリ へ でよう と しなかった。 リキ が つちこうた ナツギク とか バショウ とか アヤメ とか を みて いて、 ナツ さく キク は どんな イロ です か と たずねたり して いて、 ヘン な ナツカシサ から わかれられなそう に みえた。
 リキ は おもわず たずねて みる の で あった。
 ――アナタ は オイクツ に なる ん です か。
 ――ボク です か、 ボク は 24 に なった ところ です。
 イロ が しろくて シンケイシツ な オバタ は トシ より も わかく みえた。 モン と できた の は 23 の ハル に なる、 モン と ヒトツ チガイ に しか ならない と、 リキ は かんがえた。 リキ が アカザ の ところ に きた の は 22 の とき で、 あの ジブン まるきり オンナ と して の アカンボウ と しか おもえない ほど、 なにもかも わからなかった。 オバタ が 1 ネン たって も たずねて きた の は セイイ が ある から で あって、 その セイイ に キ の つかなかった センコク から の ジブン が ウカツ に おもわれだした。 まったく の わるい ニンゲン なら イマ に なって たずねて くる など と いう トンマ な マネ は しない で あろう。
 オバタ は マンネンヒツ で メイシ に トコロバンチ を こまかく かきいれ、 それ が ジブン の ジュウショ だ から と いった。
 ――オモン さん に わたして おいて ください。
 オバタ は そう いう と タンボミチ を ドテ の ほう へ、 ナンド も アイサツ を しながら わかい セイ の たかい カラダ を はこんで いった。 リキ は ぼんやり みおくって いた。 わるい とき には わるい もの で 2~3 ニチ カオ を みせなかった イノ が ふらふら かえって きて、 メ を ほそめて オバタ を みて いた が モン の オトコ で ある こと を しる と、 ひどく つかれて あおく なって いる カオ に カンシャク を むらむら と あらわした。 そして オバタ が イエ を でて タンボミチ から ドテ へ あがる と、 リキ に みられない よう に オバタ の アト に ついて いった。 オバタ も チョッカクテキ に モン の アニ だな と かんじ、 その カンジ が キュウゲキ に キョウフ の ジョウ に かわって しまった。 イノ は だまって 1 チョウ ばかり ついて ゆき、 やがて おいついて も キュウ に コエ を かけず に シュウネン-ぶかく、 オバタ と カタ を スレスレ に あるいて いった。 アカザ に にた イノ の カオ は あかるい ドウブツテキ な カンシャク で モミクチャ に なり、 オバタ は いつ イノ が とびかかって くる か わからない アセアブラ を にちゃつかす、 ソコオソロシサ に アシ が すくんで しまった。 はやく コエ を かけて くれれば よい と、 かんがえて も、 イジワル な かさなる ケンオ に キ を とられた イノ は ジブン でも すぐに コエ の かけられない ほど せっぱつまって、 ミミ の アタリ が ぶんぶん なって くる ほど の ハラダタシサ で あった。
 ――キミ、 ちょっと。
 イノ の コエ は これ だけ で あった が、 よばれた ので オバタ は たすかった と おもい、 できる だけ ジュウジュン に こたえた。
 ――は、
 ――オレ は モン の アニ です。
 イノ は こう いう と オバタ は マッサオ な カオツキ に なった。 キミ に ハナシ を したい こと が ある の だ。 そこ に すわれ ハナシ が ある から と ほとんど メイレイ する よう に いった。 オバタ は しかたなく ドテ の ウエ に コシ を おろした。
 イノ は ソノゴ モン に あった か と オバタ に いい、 オバタ は あわない と こたえた。 いったい、 キミ は モン を オモチャ に して おいて オレダチ イッカ を サンザン な メ に あわせた が、 それ で よく ウチ に こられた もの だ、 モン は オレ が コドモ の とき に だいて イッショ に ねて やり、 ヨナカ には ショウベン に おこして マイバン ドマ が くらい から ついて いって やった もん だ。 モン は まるきり アカンボウ だった ジブン から いつも オンブ して いて、 シマイ に、 モン の コモリ を しない と あそび に でられなかった もの だ。 オレ は モン の 17 くらい の とき まで、 モン の カオ を みない ヒ は なく モン と メシ を くわない ヒ が なかった。 モン の カラダ の どこ に アザ が ヒトツ あって それ を モン が おおきく なる まで しらなかった こと を おしえた の も オレ だ。 オレ と モン とは まるで キョウダイ より か もっと ナカ が よかった。 テメエ の コドモ を ハラ の ナカ に もって かえった とき は オレ は モン を いじめ、 モン に アクタイ の ある だけ を つくし、 シマイ に イヌチクショウ の よう に きたながって やった もの だ。 ハハ は あんまり ひどい クチ を きく オレ を それ が ホントウ の オレ の よう に にくみだし、 オレ を ケムシ の よう に きらいだし モン の ほう に つく よう に なった の だ、 そう しない と ミナ が モン を ジャマモノ に する から だ。 オレ は きっと テメエ が たずねて くる とき が ある こと を みぬいて いて、 そしたら テメイ に モン と オレ と が そんな に ナカ の よい キョウダイ だった こと と、 オレ が アカンボウ から そだてた よう な もの だ と いう こと を しらせて やりたかった の だ。 テメエ は タダ の ショセッポ で、 オトコ に うまれついて いる から やる だけ の こと を やって しまったら、 ニンプ フゼイ の ムスメ なんぞ に もう ヨウ は ない だろう。 ありがち の こと だ から うっちゃって しまえば ワケ は ない だろう、 だが、 そう は うまく、 ウチ の オヤジ の よう に きれい に テメエ を テメエ に もどす こと は できない の だ。 イノ は こう いう うち にも オバタ の テクビ を いつのまにか つかんで、 それ を ちからいっぱい に つかみかえし ギャク に もみあげたり しながら、 メ に ナミダ を うかべて ドウラクモノ と いう もの は こんな ヘン な オモイアガリ を する もの か と おもえる くらい、 シンミ に ぞくぞく した クヤシサ に かきむしられて、 その メ の イロ は アイテ に かみつかん ばかり の クチツキ と イッショ に とがって ゆき、 オバタ は つかまれた ブン から サキ の テ を しびれさせ、 キョウフ イジョウ の キョウ に おいつめられた まま、 これから サキ どう なる の か、 どういう てあら な こと を されて も こばめない ジブン から、 どういう ふう に にげだしたら いい か さえ かんがえつけない ほど、 イノ の いう まま に なり まるで バカ の よう に なって いた。
 ――キミ は ただ あやまり に きた だけ か。
 ――あやまる より ホカ に いう こと が ない ん です。
 ――モン を アノママ に うっちゃって おく つもり か。
 ――あったら なんとか フタリ で ソウダン する つもり で いる の です。
 ――イッショ に なる キ か。
 ――そう なる かも しれません。
 ――ウソ つきやがれ。
 イノ は かっと して オバタ の ホオ を ヒラテ で うち その ハズミ に ドテ の ウエ に けとばした。 そんな ランボウ な こと を しない で クチ で いえば わかる では ない か と いう オバタ を、 イノ は チカラ に まかせて いっそう はげしく ホオウチ を くわした。 テメエ の よう な ヤツ は ここ で どんな ひどい メ に あったって イッショウ ろく な こと を しない こと は わかって いる が、 これ くらい の こと は、 モン の こと を かんがえたら ガマン して いろ。 モン は もう イチニンマエ の オンナ には ならず に ハシ にも ボウ にも かからない オンナ に なって しまった の だ。 けれども テメエ の よう な ヤロウ と イッショ に なろう とは かんがえない だろう、 そんな ハナシ を もちこんだって モン は つっぱなして しまう だろう、 モン は カラダ は ジダラク に なって いる が キモチ は イゼン より か しっかり して いる の だ。 テメエ が くどきおとした キムスメ-らしい もの は モン の どこ を さがして も さがしきれない だろう し、 モン は そんな オボコ-らしい もの は すっかり なくして いる の だ、 それ は テメエ が みんな そう させた の だ、 テメエ さえ テダシ を しない で いたら、 アイツ は あんな オンナ に ならなかった の だ。
 ――もう ニド と くるな、 そして アイツ を なかせたり もう イッペン だましたり オモチャ に しない こと を ヤクソク しろ。
 ――まったく ボク が わるい の です。 なんと いわれて も シカタ が ない の です。
 イノ は たちあがる と、 アイテ が あまり ジュウジュン なので ハリアイ が ぬけ、 いくらか の きはずかしい キモチ で ジブン の した こと が アタマ に こたえて きて ならなかった。
 ――それでは キミ は もう かえれ。 オレ は モン の アニ なん だ、 キミ も イモウト を もって いた なら オレ の した こと くらい は わかる はず だ。
 ――では。
 オバタ は イマ イノ の いった コトバ が よく わかる よう な キ が し、 センコク と くらべる と イノ の カオ が おだやか に なって いる の を、 ひどい メ に あった こと と まるで ハンタイ な コウカン を もって みる こと が できた。
 イノ は なにやら いいたい フウ を した が、 オバタ は それ が イノ ジシン の した こと で ユルシ を こう もの に かんがえられて ならなかった。 イノ は とうとう いった。
 ――マチ に でる と ノリアイ が ある。 ヨツツジ で まてば いい の だ。

 1 シュウカン の ノチ モン は ふらり と かえって きた が、 おりよく スエ の イモウト の サン も ヤドサガリ を して フタリ は アカザ の コヤ に ベントウ を もって いった が、 アカザ は フタリ の スガタ を みた きり なんとも いわなかった。 めずらしい シマイ が ドウジ に かえって きて も ヒトコト も クチ を きかなかった。 シマイ が ドテ の ウエ を かえって ゆく の を フタリ が キ の つかない うち に、 アカザ は しばらく みつめて いた。
 リキ が このあいだ オバタ が たずねて きた こと を はなした が、 モン は その ハナシ を ゆっくり きいて べつに おどろく フウ も みせなかった が、 トウサン は どう いって オウタイ して いた か と それ が キ に なる らしく、 それ だけ を せきこんで きいた。 トウサン は なんにも いわず むしろ いたわる よう な チョウシ だった と いう と、 そう、 わるかった わね、 あの ヒト は もう こなく とも よかった のに と いった。 そして コンド イノ ニイサン と あわなかった の と たずねた が、 リキ は あわなかった らしい と こたえた。 それ や ナニ より だわ、 あの ヒト に あう と メンドウ な こと に なった かも しれない もの、 と、 モン は アンシン して ヨコ に なり、 ソラメ を して、 ちょっと いい オトコ じゃ ない の カアサン と いった。 バカ ナニ を イマ に なって いう の だ、 コドモ まで しょいこませた オトコ の こと を まだ ほめて いる なんて、 イイカゲン に する が いい と リキ は にがにがしく いった が、 モン は あの オトコ から アト に オトコ が できて も あんな に アルタケ の もの を すき に なれる オトコ なんて なかった。 オバタ には ゆるせる もの でも ホカ の オトコ には ゆるせない もの が あり、 オバタ より ずっと いい オトコ で あって も その いい オトコ-すぎる の が キザ だったり して、 ちょうど いい コロ カゲン の オバタ と くらべる と ものたりない と いい、 けれども オバタ が きたって イッショ に なって やらない さ、 すき なの は かんがえて いる とき だけ で あったら アタシ には もう なまぬるい オトコ に なって いる から と わらって いった。
 サン は ネエサン と いう ヒト は どうして そう オトコ の ヒト の こと ばかり を いう の。 ワタシ には そんな ふう に ずけずけ いえ も しない し、 かんがえて いる こと の ハンブン も しゃべれない わ。 だいいち、 オトコ の ヒト の こと を はなす ザイリョウ が ない ん だ もの と いった。 そりゃ オマエ は なんにも しらない けれど、 アタシ の よう に スレッカラシ に なる と、 みんな オトコ の こと わかる わ。 オトコ なんて きたない わ、 はなれて かんがえて いる と きたない けど、 でも いつのまにか ふだん かんがえて いる こと を みんな わすれて しまって、 ケイカイ する だけ した アト は もう コンキ の つづかない こと が ある もの よ と いった。
 イノ は オヒル に かえって くる と モン を みて、 すぐ ダラク オンナ め、 また おめおめ と かえって きやがった、 おおかた 1 シュウカン くらい くいつぶして いく つもり だろう、 ミンナ から あかれない サキ に さっさと かえって、 どこ か へ いって どろくさい ニンソク ども を アイテ に して さわいで いた ほう が いい ぜ、 こう みえて も ここ は カタギ な ウチ だ から その つもり で ウチ の ナカ の フウギ を わるく して もらいたく ない もの だ と レイ の ゴセイ で いった が、 サン は、 ニイサン ヒサシブリ で かえって きた ネエサン を そんな に ひどく いう もん じゃ ない わ と いう と、 ナン だ アカンボウ の サン ジョロウ、 だまって ひっこんで いろ、 モン の よう な オンナ は うんと やっつけて も それ で ショウネ が なおる とか、 アクタレグチ に まいって しまう とか いう そんな なまやさしい シロモノ じゃ ない ん だ から、 ヨコアイ から クチ を さしはさむ だけ バカ を みる ん だよ、 ――イノ は また モン が にらむ よう な メツキ を して いる の を みる と いいつづけた。 いったい いつまで キママ な カセギ を して いて いつ ちゃんと した セイギョウ に つく ん だ か、 そんな アイマイ な クラシ を して いる アイダ は ここ の ウチ に アシブミ を して もらいたく ない もん だ。 このあいだ きやがった ヤロウ に して も ニド と こられる ギリ で ない のに、 ずうずうしく やって きた の は こっち を なめて いる から だ と いった。
 ――ニイサン は オバタ さん に このあいだ おあい に なった の。
 モン は、 カオイロ を かえ、 あわなかった と いった ハハオヤ と、 イノ の カオ と を みくらべた。 サン も、 ハハオヤ も びっくり した。
 ――あった とも、 カエリ を みすまして つけて いった の だ。
 ――ナニ を なすった の。
 ――おもう まま の こと を して やった。
 イノ は にくたらしく モン の カオ を みて から、 アザワライ を クチモト に ふくんで いった。
 ――ランボウ を した ん じゃ ない わね。
 モン は イキ を ころした。
 ――けとばして やった が かなわない と おもいやがって テダシ は しなかった。 オラ ムネ が すっきり と した くらい だ。
 モン は アッケ に とられて いた が、 みるみる この オンナ の カオ が こわれだして、 クチ も ハナ も ひんまがって ほそながい カオ に かわって しまい、 ギャクジョウ から テッペン で だす よう な コエ で いった。
 ――もう イチド いって ごらん。 あの ヒト を どうした と いう の だ。
 モン は コシ を あげ カマクビ の よう な しろい あぶらぎった エリアシ を ぬいで、 なにやら フシギ な、 オンナ に おもえない サッキ-だった さむい よう な カンジ を ヒトビト に あたえた。 リキ も、 サン も、 こういう ギョウソウ の モン を みた こと が なかった。
 イノ は せせらわらって いった。
 ――ハンゴロシ に して やった の だ。
 ――テダシ も しない あの ヒト を ハンゴロシ に、……
 モン は そう いう と、 きあ、 と いう よう な コエ と オドロキ と を あらわした ワメキゴエ を あげる と、 チクショウ め と あらためて さけびだして たちあがって いった。
 ――ゴクドウ アニキ め、 ダレ が オマエ に そんな てあら な こと を して くれ と たのんだ の だ、 ナニ が オマエサン と あの ヒト の カンケイ が ある ん だ、 アタシ の カラダ を アタシ の カッテ に あの ヒト に やったって なんで オマエ が ゴタク を いう ヒツヨウ が ある ん だ。 それに ダレ が ふんだり けったり しろ と いった の だ。 テダシ も しない で いる ヒト を なぜ なぐった の だ、 ヒキョウモノ、 ブタ め、 ち、 ドウラクモノ め。
 モン は かつて ない ほど きおいたって いきなり イノ に つかみかかり、 その ふとった テ を ぺったり と イノ の カオ に ひっかけた な と みる と、 イノ の メジリ から ホオ に かけて ミスジ の ツメアト が かきたてられる と、 はれた アト の よう に あかく なり、 すぐに グミ の シル の よう な もの が ながれた。 この キチガイ アマ め、 ナニ を しやがる ん だ と イノ は モン の キ に のまれながら も、 すぐ はりたおして しまった。 モン は へたばった が、 すぐ おきあがって イノ の カタサキ に むしゃぶりついた が ヒトフリ ふられ、 そのうえ イノ の おおきな ヒラテ は ツヅケザマ に この イロキチガイ の フトッチョ め と いう コエ の シタ で、 ちからいっぱい に うちのめされた。 モン は きいい と いう よう な コエ で、
 ――さあ、 ころせ チクショウ、 さあ、 ころせ チクショウ。
 と、 シマイ に ぎあぎあ カエル の よう な コエガワリ を つづけた。 よし、 おもうさま キョウ は ロッコツ の おれる まで ひっぱたいて やろう と イノ が とびかかる と、 にげる と おもって いた モン は、 さあ なぐれ、 さあ ころせ と わめきたてて うごかなかった。
 もちろん、 リキ と サン は イノ を とめた が、 それでも イノ は コンチクショウ このまま おく と クセ に なる と いきおいたった が、 キ の よわい サン が なきだした ので イノ は それ イジョウ なぐる こと を あきらめて しまった。
 モン は きかなかった。
 ――オマエ の よう に しょうべんくさい オンナ を ひっかけて あるいて いる ヤツ と、 はばかりながら モン は ちがった オンナ なん だ、 オマエ の ゴタク-どおり に いう なら モン は インバイ ドウヨウ の、 ノンダクレ の ダラク オンナ だ、 ヒトサマ に コノママ では ヨメ には いけない バクレンモノ だ、 オヤ に トコロ も あかせない ナリサガリ の オンナ の クズ なん だ、 だけれど イチド ゆるした オトコ を テダシ の できない ハメ と ヨワミ に つけこんで ハンゴロシ に する よう な ヤツ は、 ニイサン で あろう が ダレ で あろう が だまって きいて いられない ん だ、 やい イシヤ の コゾウ、 それでも オマエ は オトコ か、 よくも、 モン の オトコ を ぶちやがった、 モン の アニキ が そんな オトコ で ある こと を オクメン も なく さらけだして、 モン に ハジ を かかせやがった、 チクショウ、 ゴクドウ ヤロウ!
 モン は そう いう と コンド は ひいひい と いう コエ で なきだして しまった。 リキ は コンド は モン に むかい おんなだてら に なんと いう クチ の キキヨウ を する の か、 もっと、 キ を つけない と トナリキンジョ も ある じゃ ない か と いう と、 モン は、 カアサン は だまって いて おくれ、 こんな ヨワイモノ イジメ の ニイサン だ と おもわなかった の だ、 こんな ヤツ に アニヅラ を されて たまる もの か と いった。
 ――まだ ぶたれたりない の か、 ジゴク め。
 ――もっと ぶちやがれ、 オンナ イッピキ が テメエ なんぞ の ゲンコツ で どう キモチ が かわる と おもう の は オオマチガイ だ、 そんな こと あ ムカシ の こと さ、 ドジョウ-くさい イナカ を うろついて いる オマエ なんぞ に アタシ が ナニ を して いる か わかる もの か。
 イノ は もう イチド とびかかろう と した が、 リキ に とめられて シゴト の ジカン に きづく と、 イイカゲン に うせやがれ と どなりちらして でて いった。
 イノ が ソト に でる と ドウジ に モン は なきだした。 リキ は モン の タンカ の キリヨウ が すさまじい ので モン が どういう ソト の セイカツ を して いる か が、 ソウゾウ する と すえおそろしい キ が した。
 ――オマエ は タイヘン な オンナ に オナリ だね。
 リキ の コエ は キュウ に おとろえて いる よう で、 モン の ミミ には つらく きこえた。
 ――そう でも ない のよ カアサン シンパイ しなく とも いい わ。
 ――でも、 あれだけ いえる オンナ なんて ワタシ はじめて さ。 ゴショウ だ から カタギ な クラシ を して もっと おんならしく おなり、 まるで オマエ あれ では ニイサン イジョウ じゃ ない か。
 ――アタシ、 カアサン の かんがえて いる ほど、 ひどい オンナ に なって いない わ、 だけど アタシ もう ダメ な オンナ よ。
 リキ は オバタ から の メイシ を だして みせた が、 しばらく みつめた アト、 こんな もの、 アタシ に ヨウ は ない わ と いい こまかく しずか に さいて しまった。 そして うつむいて しくしく なきだした。 すっかり ないて しまう と モト の まま の モン に なり、 ヨコズワリ を して ジブン で ジブン を ジャマモノ に する よう な、 だるそう な カオツキ を して リキ に いった。
 ――アタシ ミョウ に なった の かも しれない わ。 カラダ が だるくて。
 ――まさか オマエ また あれ じゃ ない だろう ね。
 ――まあ、
 と、 モン は わらって しまった。 わざとらしい ワライザマ が リキ の ココロ を しめつけた。 そんな こと だったら、 ウチ へ なんか かえって こない わ、 アタシ これ でも カアサン の カオ が みたく なって くる のよ、 わるい こと を して も いい こと を して も やはり へんに きたく なる わ、 あんな、 いや な ニイサン に だって ちょっと カオ が みたく なる こと が ある ん です もの と、 モン は それ を ホントウ の キモチ から いった。

 その ジブン、 アカザ は 7 ハイ の カワブネ を つらね、 ジョウリュウ から つんで きた イシ の オモミ で スイメン と スレスレ に なった フネ の ウエ で、 あと イクニチ と ない ツユイリドキ の カワ の テイレ を キミジカ に いそいで いた。 この シゴト を やって のければ ツユ の アイダ は やすめる の だ。 やすむ こと の きらい な カレ は ひきつづいて シゴト を ナツ まで ノベ で つづけよう、 その キモチ の ある モノ は はたらけ と どなって いた。
 ――シゴト に つく モノ は テ を あげろ。
 フネ が セギ に ついた とき に アカザ は 7 ハイ の フネ に のって いる ハダカ の ナカマ に、 ゲンキ の よい コエ で どなって みせた。 そういう とき の アカザ は ジョウキゲン だった。 ミンナ テ を あげて ツギ の シゴト に まわる こと を サンセイ した。 ようし、 その つもり で みっちり と はたらいて あつい ドヨウ に ヒボシ に ならない よう に する ん だ と、 アカザ は もう ツギ に イシ を おろす こと を てばやく メイレイ した。 コウテツ の よう な カワイシ は ニンプ の テ から どんどん ジャカゴ の ナカ に なげこまれ、 あらい セスジ が みる うち に ふさがれ とめられて いった。 カワミズ は イキオイ を そがれ どんより と かなしんで いる よう に しばらく よどんで みせる が、 すこし の ミズ の ハケグチ が ある と、 そこ へ イカリ を ふくんで はげしく ながれこんだ。 アカザ は そこ へ イシ の ナゲイレ を めいじ オオゴエ で わめきたてた。 そんな とき の アカザ の ムナゲ は さかだって ドウゾウ の よう な カラダ が はちきれる よう に、 フネ の ウエ で しゃちこだって みえた。

ある オンナ (ゼンペン)

 ある オンナ  (ゼンペン)  アリシマ タケオ  1  シンバシ を わたる とき、 ハッシャ を しらせる 2 バンメ の ベル が、 キリ と まで は いえない 9 ガツ の アサ の、 けむった クウキ に つつまれて きこえて きた。 ヨウコ は ヘイキ で それ ...