2016/09/01

グスコー ブドリ の デンキ

 グスコー ブドリ の デンキ

 ミヤザワ ケンジ

 1、 モリ

 グスコー ブドリ は、 イーハトーブ の おおきな モリ の ナカ に うまれました。 オトウサン は、 グスコー ナドリ と いう なだかい キコリ で、 どんな おおきな キ でも、 まるで アカンボウ を ねかしつける よう に わけなく きって しまう ヒト でした。
 ブドリ には ネリ と いう イモウト が あって、 フタリ は マイニチ モリ で あそびました。 ごしっごしっ と オトウサン の キ を ひく オト が、 やっと きこえる くらい な トオク へも いきました。 フタリ は そこ で キイチゴ の ミ を とって ワキミズ に つけたり、 ソラ を むいて かわるがわる ヤマバト の なく マネ を したり しました。 すると あちら でも こちら でも、 ぽう、 ぽう、 と トリ が ねむそう に なきだす の でした。
 オカアサン が、 ウチ の マエ の ちいさな ハタケ に ムギ を まいて いる とき は、 フタリ は ミチ に ムシロ を しいて すわって、 ブリキカン で ラン の ハナ を にたり しました。 すると コンド は、 もう イロイロ の トリ が、 フタリ の ぱさぱさ した アタマ の ウエ を、 まるで アイサツ する よう に なきながら ざあざあ ざあざあ とおりすぎる の でした。
 ブドリ が ガッコウ へ いく よう に なります と、 モリ は ヒル の アイダ たいへん さびしく なりました。 そのかわり ヒルスギ には、 ブドリ は ネリ と イッショ に、 モリジュウ の キ の ミキ に、 あかい ネンド や ケシズミ で、 キ の ナ を かいて あるいたり、 たかく うたったり しました。
 ホップ の ツル が、 リョウホウ から のびて、 モン の よう に なって いる シラカバ の キ には、
「カッコウドリ、 とおる べからず」 と かいたり も しました。
 そして、 ブドリ は トオ に なり、 ネリ は ナナツ に なりました。 ところが どういう ワケ です か、 その トシ は、 オヒサマ が ハル から へんに しろくて、 イツモ なら ユキ が とける と まもなく、 マッシロ な ハナ を つける コブシ の キ も まるで さかず、 5 ガツ に なって も たびたび ミゾレ が ぐしゃぐしゃ ふり、 7 ガツ の スエ に なって も いっこう に アツサ が こない ため に、 キョネン まいた ムギ も ツブ の はいらない しろい ホ しか できず、 タイテイ の クダモノ も、 ハナ が さいた だけ で おちて しまった の でした。
 そして とうとう アキ に なりました が、 やっぱり クリ の キ は あおい カラ の イガ ばかり でした し、 ミンナ で ふだん たべる いちばん タイセツ な オリザ と いう コクモツ も、 ヒトツブ も できません でした。 ノハラ では もう ひどい サワギ に なって しまいました。
 ブドリ の オトウサン も オカアサン も、 たびたび タキギ を ノハラ の ほう へ もって いったり、 フユ に なって から は ナンベン も おおきな キ を マチ へ ソリ で はこんだり した の でした が、 いつも がっかり した よう に して、 わずか の ムギ の コ など もって かえって くる の でした。 それでも どうにか その フユ は すぎて ツギ の ハル に なり、 ハタケ には タイセツ に しまって おいた タネ も まかれました が、 その トシ も また すっかり マエ の トシ の とおり でした。 そして アキ に なる と、 とうとう ホントウ の キキン に なって しまいました。 もう その コロ は ガッコウ へ くる コドモ も まるで ありません でした。 ブドリ の オトウサン も オカアサン も、 すっかり シゴト を やめて いました。 そして たびたび シンパイ そう に ソウダン して は、 かわるがわる マチ へ でて いって、 やっと すこし ばかり の キビ の ツブ など もって かえる こと も あれば、 なんにも もたず に カオイロ を わるく して かえって くる こと も ありました。 そして ミンナ は、 コナラ の ミ や、 クズ や ワラビ の ネ や、 キ の やわらか な カワ や いろんな もの を たべて、 その フユ を すごしました。 けれども ハル が きた コロ は、 オトウサン も オカアサン も、 ナニ か ひどい ビョウキ の よう でした。
 ある ヒ オトウサン は、 じっと アタマ を かかえて、 いつまでも いつまでも かんがえて いました が、 にわか に おきあがって、
「オレ は モリ へ いって あそんで くる ぞ」 と いいながら、 よろよろ ウチ を でて いきました が、 マックラ に なって も かえって きません でした。 フタリ が オカアサン に オトウサン は どう したろう と きいて も、 オカアサン は だまって フタリ の カオ を みて いる ばかり でした。
 ツギ の ヒ の バンガタ に なって、 モリ が もう くろく みえる コロ、 オカアサン は にわか に たって、 ロ に ホダ を たくさん くべて ウチジュウ すっかり あかるく しました。 それから、 ワタシ は オトウサン を さがし に いく から、 オマエタチ は ウチ に いて あの トダナ に ある コナ を フタリ で すこし ずつ たべなさい と いって、 やっぱり よろよろ ウチ を でて いきました。 フタリ が ないて アト から おって いきます と、 オカアサン は ふりむいて、
「なんたら いう こと を きかない コドモ ら だ」 と しかる よう に いいました。 そして まるで アシバヤ に、 つまずきながら モリ へ はいって しまいました。 フタリ は ナンベン も いったり きたり して、 そこら を ないて まわりました。 とうとう こらえきれなく なって、 マックラ な モリ の ナカ へ はいって、 いつか の ホップ の モン の アタリ や、 ワキミズ の ある アタリ を あちこち うろうろ あるきながら、 オカアサン を ヒトバン よびました。 モリ の キ の アイダ から は、 ホシ が ちらちら ナニ か いう よう に ひかり、 トリ は たびたび おどろいた よう に ヤミ の ナカ を とびました けれども、 どこ から も ヒト の コエ は しません でした。 とうとう フタリ は ぼんやり ウチ へ かえって ナカ へ はいります と、 まるで しんだ よう に ねむって しまいました。
 ブドリ が メ を さました の は、 その ヒ の ヒルスギ でした。 オカアサン の いった コナ の こと を おもいだして トダナ を あけて みます と、 ナカ には、 フクロ に いれた ソバコ や コナラ の ミ が まだ たくさん はいって いました。 ブドリ は ネリ を ゆりおこして フタリ で その コナ を なめ、 オトウサン たち が いた とき の よう に ロ に ヒ を たきました。
 それから、 ハツカ ばかり ぼんやり すぎましたら、 ある ヒ トグチ で、
「こんにちわ、 ダレ か いる かね」 と いう モノ が ありました。 オトウサン が かえって きた の か と おもって ブドリ が はねだして みます と、 それ は カゴ を しょった メ の するどい オトコ でした。 その オトコ は カゴ の ナカ から まるい モチ を とりだして ぽんと なげながら いいました。
「ワタシ は この チホウ の キキン を たすけ に きた モノ だ。 さあ なんでも たべなさい」 フタリ は しばらく あきれて いましたら、
「さあ たべる ん だ、 たべる ん だ」 と また いいました。 フタリ が こわごわ たべはじめます と、 オトコ は じっと みて いました が、
「オマエタチ は いい コドモ だ。 けれども いい コドモ だ と いう だけ では なんにも ならん。 ワシ と イッショ に ついて おいで。 もっとも オトコ の コ は つよい し、 ワシ も フタリ は つれて いけない。 おい オンナ の コ、 オマエ は ここ に いて も、 もう たべる もの が ない ん だ。 オジサン と イッショ に マチ へ いこう。 マイニチ パン を たべさして やる よ」
 そして ぷいっと ネリ を だきあげて、 セナカ の カゴ へ いれて、 そのまま 「おお ほいほい。 おお ほいほい」 と どなりながら、 カゼ の よう に ウチ を でて いきました。
 ネリ は オモテ で はじめて わっと なきだし、 ブドリ は、 「ドロボウ、 ドロボウ」 と なきながら さけんで おいかけました が、 オトコ は もう モリ の ヨコ を とおって ずうっと ムコウ の クサハラ を はしって いて、 そこ から ネリ の ナキゴエ が、 かすか に ふるえて きこえる だけ でした。
 ブドリ は、 ないて どなって モリ の ハズレ まで おいかけて いきました が、 とうとう つかれて ばったり たおれて しまいました。

 2、 テグス コウジョウ

 ブドリ が ふっと メ を ひらいた とき、 いきなり アタマ の ウエ で、 いやに ひらべったい コエ が しました。
「やっと メ が さめた な。 まだ オマエ は キキン の つもり かい。 おきて オレ に てつだわない か」
 みる と それ は チャイロ な キノコ シャッポ を かぶって ガイトウ に すぐ シャツ を きた オトコ で、 ナニ か ハリガネ で こさえた もの を ぶらぶら もって いる の でした。
「もう キキン は すぎた の? てつだえ って ナニ を てつだう の?」 ブドリ が ききました。
「アミカケ さ」
「ここ へ アミ を かける の?」
「かける のさ」
「アミ を かけて ナニ に する の?」
「テグス を かう のさ」
 みる と すぐ ブドリ の マエ の クリ の キ に、 フタリ の オトコ が ハシゴ を かけて のぼって いて、 イッショウ ケンメイ ナニ か アミ を なげたり、 それ を くったり して いる よう でした が、 アミ も イト も いっこう みえません でした。
「あれ で テグス が かえる の?」
「かえる のさ。 うるさい コドモ だな。 おい、 エンギ でも ない ぞ。 テグス も かえない ところ に どうして コウバ なんか たてる ん だ。 かえる とも さ。 げんに オレ ハジメ タクサン の モノ が、 それ で クラシ を たてて いる ん だ」
 ブドリ は かすれた コエ で、 やっと、 「そう です か」 と いいました。
「それに この モリ は、 すっかり オレ が かって ある ん だ から、 ここ で てつだう なら いい が、 そう でも なければ どこ か へ いって もらいたい な。 もっとも オマエ は どこ へ いったって くう もの も なかろう ぜ」
 ブドリ は なきだしそう に なりました が、 やっと こらえて いいました。
「そんなら てつだう よ。 けれども どうして アミ を かける の?」
「それ は もちろん おしえて やる。 こいつ を ね」 オトコ は テ に もった ハリガネ の カゴ の よう な もの を リョウテ で ひきのばしました。
「いい か。 こういう グアイ に やる と ハシゴ に なる ん だ」 オトコ は オオマタ に ミギテ の クリ の キ に あるいて いって、 シタ の エダ に ひっかけました。
「さあ、 コンド は オマエ が、 この アミ を もって ウエ へ のぼって いく ん だ。 さあ、 のぼって ごらん」
 オトコ は ヘン な マリ の よう な もの を ブドリ に わたしました。 ブドリ は しかたなく それ を もって ハシゴ に とりついて のぼって いきました が、 ハシゴ の ダンダン が まるで ほそくて テ や アシ に くいこんで ちぎれて しまいそう でした。
「もっと のぼる ん だ。 もっと、 もっと さ。 そしたら サッキ の マリ を なげて ごらん。 クリ の キ を こす よう に さ。 そいつ を ソラ へ なげる ん だよ。 ナン だい、 ふるえてる の かい。 イクジナシ だなあ。 なげる ん だよ。 なげる ん だよ。 そら、 なげる ん だよ」
 ブドリ は しかたなく ちからいっぱい に それ を アオゾラ に なげた と おもいましたら、 にわか に オヒサマ が マックロ に みえて サカサマ に シタ へ おちました。 そして いつか、 その オトコ に うけとめられて いた の でした。 オトコ は ブドリ を ジメン に おろしながら ぶりぶり おこりだしました。
「オマエ も イクジ の ない ヤツ だ。 なんと いう ふにゃふにゃ だ。 オレ が うけとめて やらなかったら オマエ は イマゴロ は アタマ が はじけて いたろう。 オレ は オマエ の イノチ の オンジン だぞ。 これから は、 シツレイ な こと を いって は ならん。 ところで、 さあ、 コンド は あっち の キ へ のぼれ。 もすこし たったら ゴハン も たべさせて やる よ」
 オトコ は また ブドリ へ あたらしい マリ を わたしました。 ブドリ は ハシゴ を もって ツギ の キ へ いって マリ を なげました。
「よし、 なかなか ジョウズ に なった。 さあ マリ は たくさん ある ぞ。 なまけるな。 キ も クリ の キ なら どれ でも いい ん だ」
 オトコ は ポケット から、 マリ を トオ ばかり だして ブドリ に わたす と、 すたすた ムコウ へ いって しまいました。 ブドリ は また ミッツ ばかり それ を なげました が、 どうしても イキ が はあはあ して、 カラダ が だるくて たまらなく なりました。 もう ウチ へ かえろう と おもって、 そっち へ いって みます と、 おどろいた こと には、 ウチ には いつか あかい ドカン の エントツ が ついて、 トグチ には、 「イーハトーブ テグス コウジョウ」 と いう カンバン が かかって いる の でした。 そして ナカ から タバコ を ふかしながら、 サッキ の オトコ が でて きました。
「さあ コドモ、 タベモノ を もって きて やった ぞ。 これ を たべて くらく ならない うち に もうすこし かせぐ ん だ」
「ボク は もう いや だよ。 ウチ へ かえる よ」
「ウチ って いう の は あすこ か。 あすこ は オマエ の ウチ じゃ ない。 オレ の テグス コウバ だよ。 あの ウチ も この ヘン の モリ も みんな オレ が かって ある ん だ から な」
 ブドリ は もう ヤケ に なって、 だまって その オトコ の よこした ムシパン を むしゃむしゃ たべて、 また マリ を トオ ばかり なげました。
 その バン ブドリ は、 ムカシ の ジブン の ウチ、 イマ は テグス コウジョウ に なって いる タテモノ の スミ に、 ちいさく なって ねむりました。 サッキ の オトコ は、 3~4 ニン の しらない ヒトタチ と おそく まで ロバタ で ヒ を たいて、 ナニ か のんだり しゃべったり して いました。 ツギ の アサ はやく から、 ブドリ は モリ に でて、 キノウ の よう に はたらきました。
 それから ヒトツキ ばかり たって、 モリジュウ の クリ の キ に アミ が かかって しまいます と、 テグスカイ の オトコ は、 コンド は アワ の よう な もの が いっぱい ついた イタキレ を、 どの キ にも 5~6 マイ ずつ つるさせました。 その うち に キ は メ を だして モリ は マッサオ に なりました。 すると、 キ に つるした イタキレ から、 タクサン の ちいさな あおじろい ムシ が、 イト を つたわって レツ に なって エダ へ はいあがって いきました。
 ブドリ たち は コンド は マイニチ タキギトリ を させられました。 その タキギ が、 ウチ の マワリ に コヤマ の よう に つみかさなり、 クリ の キ が あおじろい ヒモ の カタチ の ハナ を エダ イチメン に つける コロ に なります と、 あの イタ から はいあがって いった ムシ も、 ちょうど クリ の ハナ の よう な イロ と カタチ に なりました。 そして モリジュウ の クリ の ハ は、 まるで カタチ も なく その ムシ に くいあらされて しまいました。 それから まもなく ムシ は、 おおきな キイロ な マユ を、 アミノメ ごと に かけはじめました。
 すると テグスカイ の オトコ は、 キョウキ の よう に なって、 ブドリ たち を しかりとばして、 その マユ を カゴ に あつめさせました。 それ を コンド は カタッパシ から ナベ に いれて ぐらぐら にて、 テ で クルマ を まわしながら イト を とりました。 ヨル も ヒル も がらがら がらがら ミッツ の イトグルマ を まわして イト を とりました。 こうして こしらえた キイロ な イト が コヤ に ハンブン ばかり たまった コロ、 ソト に おいた マユ から は、 おおきな しろい ガ が ぽろぽろ ぽろぽろ とびだしはじめました。 テグスカイ の オトコ は、 まるで オニ みたい な カオツキ に なって、 ジブン も イッショウ ケンメイ イト を とりました し、 ノハラ の ほう から も 4 ニン ヒト を つれて きて はたらかせました。 けれども ガ の ほう は ヒマシ に おおく でる よう に なって、 シマイ には モリジュウ まるで ユキ でも とんで いる よう に なりました。
 すると ある ヒ、 6~7 ダイ の ニバシャ が きて、 イマ まで に できた イト を みんな つけて、 マチ の ほう へ かえりはじめました。 ミンナ も ヒトリ ずつ ニバシャ に ついて いきました。 いちばん シマイ の ニバシャ が たつ とき、 テグスカイ の オトコ が、 ブドリ に、
「おい、 オマエ の ライハル まで くう くらい の もの は ウチ の ナカ に おいて やる から な、 それまで ここ で モリ と コウバ の バン を して いる ん だぞ」
と いって へんに にやにや しながら、 ニバシャ に ついて さっさと いって しまいました。
 ブドリ は ぼんやり アト へ のこりました。 ウチ の ナカ は まるで きたなくて アラシ の アト の よう でした し、 モリ は あれはてて ヤマカジ に でも あった よう でした。 ブドリ が ツギ の ヒ、 ウチ の ナカ や マワリ を かたづけはじめましたら、 テグスカイ の オトコ が いつも すわって いた ところ から ふるい ボール-ガミ の ハコ を みつけました。 ナカ には 10 サツ ばかり の ホン が ぎっしり はいって おりました。 ひらいて みる と、 テグス の エ や キカイ の ズ が たくさん ある、 まるで よめない ホン も ありました し、 イロイロ な キ や クサ の ズ と ナマエ の かいて ある もの も ありました。
 ブドリ は イッショウ ケンメイ その ホン の マネ を して ジ を かいたり、 ズ を うつしたり して その フユ を くらしました。
 ハル に なります と、 また あの オトコ が 6~7 ニン の あたらしい テシタ を つれて、 たいへん リッパ な ナリ を して やって きました。 そして ツギ の ヒ から すっかり キョネン の よう な シゴト が はじまりました。
 そして アミ は みんな かかり、 キイロ な イタ も つるされ、 ムシ は エダ に はいのぼり、 ブドリ たち は また、 タキギ-ヅクリ に かかる コロ に なりました。 ある アサ、 ブドリ たち が タキギ を つくって いましたら、 にわか に ぐらぐらっ と ジシン が はじまりました。 それから ずうっと トオク で どーん と いう オト が しました。
 しばらく たつ と ヒ が へんに くらく なり、 こまか な ハイ が ばさばさ ばさばさ ふって きて、 モリ は イチメン に マッシロ に なりました。 ブドリ たち が あきれて キ の シタ に しゃがんで いましたら、 テグスカイ の オトコ が たいへん あわてて やって きました。
「おい、 ミンナ、 もう ダメ だぞ。 フンカ だ。 フンカ が はじまった ん だ。 テグス は みんな ハイ を かぶって しんで しまった。 ミンナ はやく ひきあげて くれ。 おい、 ブドリ。 オマエ ここ に いたかったら いて も いい が、 コンド は タベモノ は おいて やらない ぞ。 それに ここ に いて も あぶない から な、 オマエ も ノハラ へ でて ナニ か かせぐ ほう が いい ぜ」
 そう いった か と おもう と、 もう どんどん はしって いって しまいました。 ブドリ が コウジョウ へ いって みた とき は、 もう ダレ も おりません でした。 そこで ブドリ は、 しょんぼり と ミンナ の アシアト の ついた しろい ハイ を ふんで ノハラ の ほう へ でて いきました。

 3、 ヌマバタケ

 ブドリ は、 いっぱい に ハイ を かぶった モリ の アイダ を、 マチ の ほう へ ハンニチ あるきつづけました。 ハイ は カゼ の ふく たび に キ から ばさばさ おちて、 まるで ケムリ か フブキ の よう でした。 けれども それ は ノハラ へ ちかづく ほど、 だんだん あさく すくなく なって、 ついには キ も ミドリ に みえ、 ミチ の アシアト も みえない くらい に なりました。
 とうとう モリ を できった とき、 ブドリ は おもわず メ を みはりました。 ノハラ の メノマエ から、 トオク の マッシロ な クモ まで、 うつくしい モモイロ と ミドリ と ハイイロ の カード で できて いる よう でした。 ソバ へ よって みる と、 その モモイロ なの には、 イチメン に セイ の ひくい ハナ が さいて いて、 ミツバチ が いそがしく ハナ から ハナ を わたって あるいて いました し、 ミドリイロ なの には ちいさな ホ を だして クサ が ぎっしり はえ、 ハイイロ なの は あさい ドロ の ヌマ でした。 そして どれ も、 ひくい ハバ の せまい ドテ で くぎられ、 ヒト は ウマ を つかって それ を ほりおこしたり かきまわしたり して はたらいて いました。
 ブドリ が その アイダ を、 しばらく あるいて いきます と、 ミチ の マンナカ に フタリ の ヒト が、 オオゴエ で ナニ か ケンカ でも する よう に いいあって いました。 ミギガワ の ほう の ヒゲ の あかい ヒト が いいました。
「なんでも かんでも、 オレ は ヤマシ-ばる と きめた」
 すると も ヒトリ の しろい カサ を かぶった、 セイ の たかい オジイサン が いいました。
「やめろ って いったら やめる もん だ。 そんな に コヤシ うんと いれて、 ワラ は とれる ったって、 ミ は ヒトツブ も とれる もん で ない」
「うんにゃ、 オレ の ミコミ では、 コトシ は イマ まで の 3 ネン ブン あつい に ソウイ ない。 1 ネン で 3 ネン ブン とって みせる」
「やめろ。 やめろ。 やめろ ったら」
「うんにゃ、 やめない。 ハナ は みんな うずめて しまった から、 コンド は マメタマ を 60 マイ いれて、 それから トリ の カエシ、 100 ダン いれる ん だ。 いそがし ったら なんの、 こう いそがしく なれば、 ササゲ の ツル でも いい から テツダイ に たのみたい もん だ」
 ブドリ は おもわず ちかよって オジギ を しました。
「そんなら ボク を つかって くれません か」
 すると フタリ は、 ぎょっと した よう に カオ を あげて、 アゴ に テ を あてて しばらく ブドリ を みて いました が、 アカヒゲ が にわか に わらいだしました。
「よしよし。 オマエ に ウマ の サセトリ を たのむ から な。 すぐ オレ に ついて いく ん だ。 それでは まず、 のる か そる か、 アキ まで みてて くれ。 さあ いこう。 ホント に、 ササゲ の ツル でも いい から たのみたい とき で な」 アカヒゲ は、 ブドリ と オジイサン に かわるがわる いいながら、 さっさと サキ に たって あるきました。 アト では オジイサン が、
「トシヨリ の いう こと きかない で、 いまに なく ん だな」 と つぶやきながら、 しばらく こっち を みおくって いる ヨウス でした。
 それから ブドリ は、 マイニチ マイニチ ヌマバタケ へ はいって ウマ を つかって ドロ を かきまわしました。 1 ニチ ごと に モモイロ の カード も ミドリ の カード も だんだん つぶされて、 ドロヌマ に かわる の でした。 ウマ は たびたび ぴしゃっと ドロミズ を はねあげて、 ミンナ の カオ へ うちつけました。 ヒトツ の ヌマバタケ が すめば すぐ ツギ の ヌマバタケ へ はいる の でした。 イチニチ が とても ながくて、 シマイ には あるいて いる の か どう か わからなく なったり、 ドロ が アメ の よう な、 ミズ が スープ の よう な キ が したり する の でした。 カゼ が ナンベン も ふいて きて、 チカク の ドロミズ に サカナ の ウロコ の よう な ナミ を たて、 トオク の ミズ を ブリキイロ に して いきました。 ソラ では、 マイニチ あまく すっぱい よう な クモ が、 ゆっくり ゆっくり ながれて いて、 それ が じつに うらやましそう に みえました。
 こうして ハツカ ばかり たちます と、 やっと ヌマバタケ は すっかり どろどろ に なりました。 ツギ の アサ から シュジン は まるで キ が たって、 あちこち から あつまって きた ヒトタチ と イッショ に、 その ヌマバタケ に ミドリイロ の ヤリ の よう な オリザ の ナエ を イチメン うえました。 それ が トオカ ばかり で すむ と、 コンド は ブドリ たち を つれて、 イマ まで てつだって もらった ヒトタチ の ウチ へ マイニチ はたらき に でかけました。 それ も やっと ヒトマワリ すむ と、 コンド は また ジブン の ヌマバタケ へ もどって きて、 マイニチ マイニチ クサトリ を はじめました。 ブドリ の シュジン の ナエ は おおきく なって まるで くろい くらい なのに、 トナリ の ヌマバタケ は ぼんやり した うすい ミドリイロ でした から、 トオク から みて も、 フタリ の ヌマバタケ は はっきり サカイ まで みわかりました。 ナノカ ばかり で クサトリ が すむ と また ホカ へ テツダイ に いきました。
 ところが ある アサ、 シュジン は ブドリ を つれて、 ジブン の ヌマバタケ を とおりながら、 にわか に 「あっ」 と さけんで ボウダチ に なって しまいました。 みる と クチビル の イロ まで ミズイロ に なって、 ぼんやり マッスグ を みつめて いる の です。
「ビョウキ が でた ん だ」 シュジン が やっと いいました。
「アタマ でも いたい ん です か」 ブドリ は ききました。
「オレ で ない よ。 オリザ よ。 それ」 シュジン は マエ の オリザ の カブ を ゆびさしました。 ブドリ は しゃがんで しらべて みます と、 なるほど どの ハ にも、 イマ まで みた こと の ない あかい テンテン が ついて いました。 シュジン は だまって しおしお と ヌマバタケ を ヒトマワリ しました が、 ウチ へ かえりはじめました。 ブドリ も シンパイ して ついて いきます と、 シュジン は だまって キレ を ミズ で しぼって、 アタマ に のせる と、 そのまま イタノマ に ねて しまいました。 すると まもなく、 シュジン の オカミサン が オモテ から かけこんで きました。
「オリザ へ ビョウキ が でた と いう の は ホントウ かい」
「ああ、 もう ダメ だよ」
「どうにか ならない の かい」
「ダメ だろう。 すっかり 5 ネン マエ の とおり だ」
「だから、 アタシ は アンタ に ヤマシ を やめろ と いった ん じゃ ない か。 オジイサン も あんな に とめた ん じゃ ない か」 オカミサン は おろおろ なきはじめました。 すると シュジン が にわか に ゲンキ に なって むっくり おきあがりました。
「よし。 イーハトーブ の ノハラ で、 ユビオリ かぞえられる オオビャクショウ の オレ が、 こんな こと で まいる か。 よし。 ライネン こそ やる ぞ。 ブドリ、 オマエ オレ の ウチ へ きて から、 まだ ヒトバン も ねたい くらい ねた こと が ない な。 さあ、 イツカ でも トオカ でも いい から、 ぐう と いう くらい ねて しまえ。 オレ は その アト で、 あすこ の ヌマバタケ で おもしろい テヅマ を やって みせる から な。 そのかわり コトシ の フユ は、 ウチジュウ ソバ ばかり くう ん だぞ。 オマエ ソバ は すき だろう が」 それから シュジン は さっさと ボウシ を かぶって ソト へ でて いって しまいました。
 ブドリ は シュジン に いわれた とおり ナヤ へ はいって ねむろう と おもいました が、 なんだか やっぱり ヌマバタケ が ク に なって しかたない ので、 また のろのろ そっち へ いって みました。 すると いつ きて いた の か、 シュジン が たった ヒトリ ウデグミ を して ドテ に たって おりました。 みる と ヌマバタケ には ミズ が いっぱい で、 オリザ の カブ は ハ を やっと だして いる だけ、 ウエ には ぎらぎら セキユ が うかんで いる の でした。 シュジン が いいました。
「イマ オレ この ビョウキ を むしころして みる とこ だ」
「セキユ で ビョウキ の タネ が しぬ ん です か」 と ブドリ が ききます と、 シュジン は、
「アタマ から セキユ に つけられたら ヒト だって しぬ だ」 と いいながら、 ほう と イキ を すって クビ を ちぢめました。 その とき、 ミズシモ の ヌマバタケ の モチヌシ が、 カタ を いからして イキ を きって かけて きて、 おおきな コエ で どなりました。
「なんだって アブラ など ミズ へ いれる ん だ。 みんな ながれて きて、 オレ の ほう へ はいってる ぞ」
 シュジン は、 ヤケクソ に おちついて こたえました。
「なんだって アブラ など ミズ へ いれる ったって、 オリザ へ ビョウキ ついた から、 アブラ など ミズ へ いれる の だ」
「なんだって そんなら オレ の ほう へ ながす ん だ」
「なんだって そんなら オマエ の ほう へ ながす ったって、 ミズ は ながれる から アブラ も ついて ながれる の だ」
「そんなら なんだって オレ の ほう へ ミズ こない よう に ミナクチ とめない ん だ」
「なんだって オマエ の ほう へ ミズ いかない よう に ミナクチ とめない か ったって、 あすこ は オレ の ミナクチ で ない から ミズ とめない の だ」
 トナリ の オトコ は、 かんかん おこって しまって もう モノ も いえず、 いきなり がぶがぶ ミズ へ はいって、 ジブン の ミナクチ に ドロ を つみあげはじめました。 シュジン は にやり と わらいました。
「あの オトコ むずかしい オトコ で な。 こっち で ミズ を とめる と、 とめた と いって おこる から わざと ムコウ に とめさせた の だ。 あすこ さえ とめれば、 コンヤジュウ に ミズ は すっかり クサ の アタマ まで かかる から な。 さあ かえろう」 シュジン は サキ に たって すたすた ウチ へ あるきはじめました。
 ツギ の アサ ブドリ は また シュジン と ヌマバタケ へ いって みました。 シュジン は ミズ の ナカ から ハ を 1 マイ とって しきり に しらべて いました が、 やっぱり うかない カオ でした。 その ツギ の ヒ も そう でした。 その ツギ の ヒ も そう でした。 その ツギ の ヒ も そう でした。 その ツギ の アサ、 とうとう シュジン は ケッシン した よう に いいました。
「さあ ブドリ、 いよいよ ここ へ ソバマキ だぞ。 オマエ あすこ へ いって、 トナリ の ミナクチ こわして こい」
 ブドリ は いわれた とおり こわして きました。 セキユ の はいった ミズ は、 おそろしい イキオイ で トナリ の タ へ ながれて いきます。 きっと また おこって くる な と おもって います と、 ヒルゴロ レイ の トナリ の モチヌシ が、 おおきな カマ を もって やって きました。
「やあ、 なんだって ヒト の タ へ セキユ ながす ん だ」
 シュジン が また、 ハラ の ソコ から コエ を だして こたえました。
「セキユ ながれれば なんだって わるい ん だ」
「オリザ みんな しぬ で ない か」
「オリザ みんな しぬ か、 オリザ みんな しなない か、 まず オレ の ヌマバタケ の オリザ みな よ。 キョウ で ヨッカ アタマ から セキユ かぶせた ん だ。 それでも ちゃんと この とおり で ない か。 あかく なった の は ビョウキ の ため で、 イキオイ の いい の は セキユ の ため なん だ。 オマエ の ところ など、 セキユ が ただ オリザ の アシ を とおる だけ で ない か。 かえって いい かも しれない ん だ」
「セキユ コヤシ に なる の か」 ムコウ の オトコ は すこし カオイロ を やわらげました。
「セキユ コヤシ に なる か、 セキユ コヤシ に ならない か しらない が、 とにかく セキユ は アブラ で ない か」
「それ は セキユ は アブラ だな」 オトコ は すっかり キゲン を なおして わらいました。 ミズ は どんどん ひき、 オリザ の カブ は みるみる ネモト まで でて きました。 すっかり あかい マダラ が できて やけた よう に なって います。
「さあ オレ の ところ では もう オリザ-ガリ を やる ぞ」
 シュジン は わらいながら いって、 それから ブドリ と イッショ に、 カタッパシ から オリザ の カブ を かり、 アト へ すぐ ソバ を まいて ツチ を かけて あるきました。 そして その トシ は ホントウ に シュジン の いった とおり、 ブドリ の ウチ では ソバ ばかり たべました。 ツギ の ハル に なります と シュジン が いいました。
「ブドリ、 コトシ は ヌマバタケ は キョネン より は 3 ブン の 1 へった から な、 シゴト は よほど ラク だ。 そのかわり オマエ は、 オレ の しんだ ムスコ の よんだ ホン を これから イッショウ ケンメイ ベンキョウ して、 イマ まで オレ を ヤマシ だ と いって わらった ヤツラ を、 あっ と いわせる よう な リッパ な オリザ を つくる クフウ を して くれ」
 そして、 イロイロ な ホン を ヒトヤマ ブドリ に わたしました。 ブドリ は シゴト の ヒマ に カタッパシ から それ を よみました。 ことに その ナカ の、 クーボー と いう ヒト の モノ の カンガエカタ を おしえた ホン は おもしろかった ので ナンベン も よみました。 また その ヒト が、 イーハトーブ の シ で 1 カゲツ の ガッコウ を やって いる の を しって、 たいへん いって ならいたい と おもったり しました。
 そして はやくも その ナツ、 ブドリ は おおきな テガラ を たてました。 それ は キョネン と おなじ コロ、 また オリザ に ビョウキ が できかかった の を、 ブドリ が キ の ハイ と シオ を つかって くいとめた の でした。 そして 8 ガツ の ナカバ に なる と、 オリザ の カブ は みんな そろって ホ を だし、 その ホ の ヒトエダ ごと に ちいさな しろい ハナ が さき、 ハナ は だんだん ミズイロ の モミ に かわって、 カゼ に ゆらゆら ナミ を たてる よう に なりました。 シュジン は もう トクイ の ゼッチョウ でした。 くる ヒト ごと に、
「なんの オレ も、 オリザ の ヤマシ で 4 ネン しくじった けれども、 コトシ は イチド に 4 ネン-マエ とれる。 これ も また なかなか いい もん だ」 など と いって ジマン する の でした。
 ところが その ツギ の トシ は そう は いきません でした。 ウエツケ の コロ から さっぱり アメ が ふらなかった ため に、 スイロ は かわいて しまい、 ヌマ には ヒビ が はいって、 アキ の トリイレ は やっと フユジュウ たべる くらい でした。 ライネン こそ と おもって いました が、 ツギ の トシ も また おなじ よう な ヒデリ でした。 それから も ライネン こそ ライネン こそ と おもいながら、 ブドリ の シュジン は、 だんだん コヤシ を いれる こと が できなく なり、 ウマ も うり、 ヌマバタケ も だんだん うって しまった の でした。
 ある アキ の ヒ、 シュジン は ブドリ に つらそう に いいました。
「ブドリ、 オレ も モト は イーハトーブ の オオビャクショウ だった し、 ずいぶん かせいで も きた の だ が、 たびたび の サムサ と カンバツ の ため に、 イマ では ヌマバタケ も ムカシ の 3 ブン の 1 に なって しまった し、 ライネン は もう いれる コヤシ も ない の だ。 オレ だけ で ない、 ライネン コヤシ を かって いれれる ヒト ったら もう イーハトーブ にも ナンニン も ない だろう。 こういう アンバイ では、 いつ に なって オマエ に はたらいて もらった レイ を する と いう アテ も ない。 オマエ も わかい ハタラキザカリ を、 オレ の とこ で くらして しまって は あんまり キノドク だ から、 すまない が どうか これ を もって、 どこ へ でも いって いい ウン を みつけて くれ」
 そして シュジン は、 ヒトフクロ の オカネ と あたらしい コン で そめた アサ の フク と アカガワ の クツ と を ブドリ に くれました。 ブドリ は イマ まで の シゴト の ひどかった こと も わすれて しまって、 もう なんにも いらない から、 ここ で はたらいて いたい とも おもいました が、 かんがえて みる と、 いて も やっぱり シゴト も そんな に ない ので、 シュジン に ナンベン も ナンベン も レイ を いって、 6 ネン の アイダ はたらいた ヌマバタケ と シュジン に わかれて、 テイシャバ を さして あるきだしました。

 4、 クーボー ダイハカセ

 ブドリ は 2 ジカン ばかり あるいて、 テイシャバ へ きました。 それから キップ を かって、 イーハトーブ-ユキ の キシャ に のりました。 キシャ は イクツ も の ヌマバタケ を どんどん どんどん ウシロ へ おくりながら、 もう イッサン に はしりました。 その ムコウ には、 タクサン の くろい モリ が、 ツギ から ツギ と カタチ を かえて、 やっぱり ウシロ の ほう へ のこされて いく の でした。 ブドリ は イロイロ な オモイ で ムネ が いっぱい でした。 はやく イーハトーブ の シ に ついて、 あの シンセツ な ホン を かいた クーボー と いう ヒト に あい、 できる なら、 はたらきながら ベンキョウ して、 ミンナ が あんな に つらい オモイ を しない で ヌマバタケ を つくれる よう、 また カザン の ハイ だの ヒデリ だの サムサ だの を のぞく クフウ を したい と おもう と、 キシャ さえ まどろこくって たまらない くらい でした。
 キシャ は その ヒ の ヒルスギ、 イーハトーブ の シ に つきました。 テイシャバ を ヒトアシ でます と、 ジメン の ソコ から ナニ か のんのん わく よう な ヒビキ や どんより と した くらい クウキ、 いったり きたり する タクサン の ジドウシャ の アイダ に、 ブドリ は しばらく ぼうと して つったって しまいました。 やっと キ を とりなおして、 そこら の ヒト に クーボー ハカセ の ガッコウ へ いく ミチ を たずねました。 すると ダレ へ きいて も、 ミンナ ブドリ の あまり マジメ な カオ を みて、 ふきだしそう に しながら、
「そんな ガッコウ は しらん ね」 とか、 「もう 5~6 チョウ いって きいて みな」 とか いう の でした。 そして ブドリ が やっと ガッコウ を さがしあてた の は もう ユウガタ ちかく でした。 その おおきな こわれかかった しろい タテモノ の 2 カイ で、 ダレ か おおきな コエ で しゃべって いました。
「こんにちわ」 ブドリ は たかく さけびました。 ダレ も でて きません でした。
「こんにちわあ」 ブドリ は あらん かぎり たかく さけびました。 すると すぐ アタマ の ウエ の 2 カイ の マド から、 おおきな ハイイロ の アタマ が でて、 メガネ が フタツ ぎらり と ひかりました。 それから、
「イマ ジュギョウチュウ だよ。 やかましい ヤツ だ。 ヨウ が ある なら はいって こい」 と どなりつけて、 すぐ カオ を ひっこめます と、 ナカ では オオゼイ で どっと わらい、 その ヒト は かまわず また ナニ か オオゴエ で しゃべって います。
 ブドリ は そこで おもいきって、 なるべく アシオト を たてない よう に 2 カイ に あがって いきます と、 カイダン の ツキアタリ の ト が あいて いて、 じつに おおきな キョウシツ が、 ブドリ の マッショウメン に あらわれました。 ナカ には サマザマ の フクソウ を した ガクセイ が ぎっしり です。 ムコウ は おおきな くろい カベ に なって いて、 そこ に タクサン の しろい セン が ひいて あり、 サッキ の セイ の たかい メガネ を かけた ヒト が、 おおきな ヤグラ の カタチ の モケイ を あちこち ゆびさしながら、 サッキ の まま の たかい コエ で、 ミンナ に セツメイ して おりました。
 ブドリ は それ を ヒトメ みる と、 ああ これ は センセイ の ホン に かいて あった レキシ の レキシ と いう こと の モケイ だな と おもいました。 センセイ は わらいながら、 ヒトツ の トッテ を まわしました。 モケイ は がちっ と なって キタイ な フネ の よう な カタチ に なりました。 また がちっと トッテ を まわす と、 モケイ は コンド は おおきな ムカデ の よう な カタチ に かわりました。
 ミンナ は しきり に クビ を かたむけて、 どうも わからん と いう ふう に して いました が、 ブドリ には ただ おもしろかった の です。
「そこで こういう ズ が できる」 センセイ は くろい カベ へ ベツ の こみいった ズ を どんどん かきました。 ヒダリテ にも チョーク を もって、 さっさっ と かきました。 ガクセイ たち も ミンナ イッショウ ケンメイ その マネ を しました。 ブドリ も フトコロ から、 イマ まで ヌマバタケ で もって いた きたない テチョウ を だして ズ を かきとりました。 センセイ は もう かいて しまって、 ダン の ウエ に マッスグ に たって、 じろじろ ガクセイ たち の セキ を みまわして います。 ブドリ も かいて しまって、 その ズ を タテヨコ から みて います と、 ブドリ の トナリ で ヒトリ の ガクセイ が、
「あああ」 と アクビ を しました。 ブドリ は そっと ききました。
「ね、 この センセイ は なんて いう ん です か」
 すると ガクセイ は バカ に した よう に ハナ で わらいながら こたえました。
「クーボー ダイハカセ さ、 オマエ しらなかった の かい」 それから じろじろ ブドリ の ヨウス を みながら、
「ハジメ から、 この ズ なんか かける もん か。 ボク で さえ おなじ コウギ を もう 6 ネン も きいて いる ん だ」 と いって、 ジブン の ノート を フトコロ へ しまって しまいました。 その とき キョウシツ に、 ぱっと デントウ が つきました。 もう ユウガタ だった の です。 ダイハカセ が ムコウ で いいました。
「いまや ユウベ は はるか に きたり、 セッコウ も また ゼンカ を おえた。 ショクン の ウチ の キボウシャ は、 けだし イツモ の レイ に より、 その ノート をば セッシャ に しめし、 さらに スウコ の シモン を うけて、 ショゾク を けっす べき で ある」
 ガクセイ たち は わあ と さけんで、 ミンナ ばたばた ノート を とじました。 それから そのまま かえって しまう モノ が ダイブブン でした が、 50~60 ニン は イチレツ に なって ダイハカセ の マエ を とおりながら ノート を ひらいて みせる の でした。 すると ダイハカセ は それ を ちょっと みて、 ヒトコト か フタコト シツモン を して、 それから ハクボク で エリ へ、 「ゴウ」 とか、 「サイライ」 とか、 「フンレイ」 とか かく の でした。 ガクセイ は その アイダ、 いかにも シンパイ そう に クビ を ちぢめて いる の でした が、 それから そっと カタ を すぼめて ロウカ まで でて、 トモダチ に その シルシ を よんで もらって、 よろこんだり しょげたり する の でした。
 ぐんぐん シケン が すんで、 いよいよ ブドリ ヒトリ に なりました。 ブドリ が その ちいさな きたない テチョウ を だした とき、 クーボー ダイハカセ は おおきな アクビ を やりながら、 かがんで メ を ぐっと テチョウ に つける よう に しました ので、 テチョウ は あぶなく ダイハカセ に すいこまれそう に なりました。
 ところが ダイハカセ は、 うまそう に こくっと ヒトツ イキ を して、
「よろしい。 この ズ は ヒジョウ に ただしく できて いる。 その ホカ の ところ は、 ナン だ、 ははあ、 ヌマバタケ の コヤシ の こと に、 ウマ の タベモノ の こと かね。 では モンダイ を こたえなさい。 コウバ の エントツ から でる ケムリ には、 どういう イロ の シュルイ が ある か」
 ブドリ は おもわず オオゴエ に こたえました。
「クロ、 カツ、 キ、 ハイ、 シロ、 ムショク。 それから これら の コンゴウ です」
 ダイハカセ は わらいました。
「ムショク の ケムリ は たいへん いい。 カタチ に ついて いいたまえ」
「ムフウ で ケムリ が そうとう あれば、 タテ の ボウ にも なります が、 サキ は だんだん ひろがります。 クモ の ヒジョウ に ひくい ヒ は、 ボウ は クモ まで のぼって いって、 そこ から ヨコ に ひろがります。 カゼ の ある ヒ は、 ボウ は ナナメ に なります が、 その カタムキ は カゼ の テイド に したがいます。 ナミ や イクツ も キレ に なる の は、 カゼ の ため にも よります が、 ヒトツ は ケムリ や エントツ の もつ クセ の ため です。 あまり ケムリ の すくない とき は、 コルク-ヌキ の カタチ にも なり、 ケムリ も おもい ガス が まじれば、 エントツ の クチ から フサ に なって、 イッポウ ないし シホウ に おちる こと も あります」
 ダイハカセ は また わらいました。
「よろしい。 キミ は どういう シゴト を して いる の か」
「シゴト を ミツケ に きた ん です」
「おもしろい シゴト が ある。 メイシ を あげる から、 そこ へ すぐ いきなさい」 ハカセ は メイシ を とりだして、 ナニ か するする かきこんで ブドリ に くれました。 ブドリ は オジギ を して、 トグチ を でて いこう と します と、 ダイハカセ は ちょっと メ で こたえて、
「ナン だ、 ゴミ を やいてる の かな」 と ひくく つぶやきながら、 テーブル の ウエ に あった カバン に、 チョーク の カケラ や、 ハンケチ や ホン や、 みんな イッショ に なげこんで コワキ に かかえ、 さっき カオ を だした マド から、 ぷいっと ソト へ とびだしました。 びっくり して ブドリ が マド へ かけよって みます と、 いつか ダイハカセ は オモチャ の よう な ちいさな ヒコウセン に のって、 ジブン で ハンドル を とりながら、 もう うすあおい モヤ の こめた マチ の ウエ を、 マッスグ に ムコウ へ とんで いる の でした。 ブドリ が いよいよ あきれて みて います と、 まもなく ダイハカセ は、 ムコウ の おおきな ハイイロ の タテモノ の ヒラヤネ に ついて、 フネ を ナニ か カギ の よう な もの に つなぐ と、 そのまま ぽろっと タテモノ の ナカ へ はいって みえなく なって しまいました。

 5、 イーハトーブ カザン キョク

 ブドリ が、 クーボー ダイハカセ から もらった メイシ の アテナ を たずねて、 やっと ついた ところ は おおきな チャイロ の タテモノ で、 ウシロ には フサ の よう な カタチ を した たかい ハシラ が ヨル の ソラ に くっきり しろく たって おりました。 ブドリ は ゲンカン に あがって ヨビリン を おします と、 すぐ ヒト が でて きて、 ブドリ の だした メイシ を うけとり、 ヒトメ みる と、 すぐ ブドリ を ツキアタリ の おおきな ヘヤ へ アンナイ しました。 そこ には イマ まで に みた こと も ない よう な おおきな テーブル が あって、 その マンナカ に ヒトリ の すこし カミ の しろく なった ヒト の よさそう な リッパ な ヒト が、 きちんと すわって ミミ に ジュワキ を あてながら ナニ か かいて いました。 そして ブドリ の はいって きた の を みる と、 すぐ ヨコ の イス を ゆびさしながら、 また つづけて ナニ か かきつけて います。
 その ヘヤ の ミギテ の カベ いっぱい に、 イーハトーブ ゼンタイ の チズ が、 うつくしく いろどった おおきな モケイ に つくって あって、 テツドウ も マチ も カワ も ノハラ も みんな ヒトメ で わかる よう に なって おり、 その マンナカ を はしる セボネ の よう な サンミャク と、 カイガン に そって ヘリ を とった よう に なって いる サンミャク、 また それ から エダ を だして ウミ の ナカ に テンテン の シマ を つくって いる イチレツ の ヤマヤマ には、 みんな アカ や ダイダイ や キ の アカリ が ついて いて、 それ が かわるがわる イロ が かわったり じー と セミ の よう に なったり、 スウジ が あらわれたり きえたり して いる の です。 シタ の カベ に そった タナ には、 くろい タイプライター の よう な もの が 3 レツ に 100 でも きかない くらい ならんで、 みんな しずか に うごいたり なったり して いる の でした。 ブドリ が ワレ を わすれて みとれて おります と、 その ヒト が ジュワキ を ことっと おいて、 フトコロ から メイシイレ を だして、 1 マイ の メイシ を ブドリ に だしながら、
「アナタ が、 グスコー ブドリ クン です か。 ワタシ は こういう モノ です」 と いいました。 みる と、 [イーハトーブ カザン キョク ギシ ペンネンナーム] と かいて ありました。 その ヒト は ブドリ の アイサツ に なれない で もじもじ して いる の を みる と、 かさねて シンセツ に いいました。
「さっき クーボー ハカセ から デンワ が あった ので おまち して いました。 まあ これから、 ここ で シゴト しながら しっかり ベンキョウ して ごらんなさい。 ここ の シゴト は、 キョネン はじまった ばかり です が、 じつに セキニン の ある もの で、 それに ハンブン は いつ フンカ する か わからない カザン の ウエ で シゴト する もの なの です。 それに カザン の クセ と いう もの は、 なかなか ガクモン で わかる こと では ない の です。 ワレワレ は これから よほど しっかり やらなければ ならん の です。 では コンバン は あっち に アナタ の とまる ところ が あります から、 そこ で ゆっくり おやすみなさい。 アシタ この タテモノ-ジュウ を すっかり アンナイ します から」
 ツギ の アサ、 ブドリ は ペンネン ロウギシ に つれられて、 タテモノ の ナカ を いちいち つれて あるいて もらい、 サマザマ の キカイ や シカケ を くわしく おそわりました。 その タテモノ の ナカ の スベテ の キカイ は みんな イーハトーブ-ジュウ の 300 イクツ か の カッカザン や キュウカザン に つづいて いて、 それら の カザン の ケムリ や ハイ を ふいたり、 ヨウガン を ながしたり して いる ヨウス は もちろん、 ミカケ は じっと して いる ふるい カザン でも、 その ナカ の ヨウガン や ガス の モヨウ から、 ヤマ の カタチ の カワリヨウ まで、 みんな スウジ に なったり ズ に なったり して、 あらわれて くる の でした。 そして はげしい ヘンカ の ある たび に、 モケイ は みんな ベツベツ の オト で なる の でした。
 ブドリ は その ヒ から ペンネン ロウギシ に ついて、 スベテ の キカイ の アツカイカタ や カンソク の シカタ を ならい、 ヨル も ヒル も イッシン に はたらいたり ベンキョウ したり しました。 そして 2 ネン ばかり たちます と、 ブドリ は ホカ の ヒトタチ と イッショ に あちこち の カザン へ キカイ を スエツケ に だされたり、 すえつけて ある キカイ の わるく なった の を シュウゼン に やられたり も する よう に なりました ので、 もう ブドリ には イーハトーブ の 300 イクツ の カザン と、 その ハタラキ グアイ は テノヒラ の ナカ に ある よう に わかって きました。 じつに イーハトーブ には 70 イクツ の カザン が マイニチ ケムリ を あげたり、 ヨウガン を ながしたり して いる の でした し、 50 イクツ か の キュウカザン は、 イロイロ な ガス を ふいたり、 あつい ユ を だしたり して いました。 そして ノコリ の 160~170 の シカザン の ウチ にも、 いつ また ナニ を はじめる か わからない もの も ある の でした。
 ある ヒ ブドリ が ロウギシ と ならんで シゴト を して おります と、 にわか に サンムトリ と いう ミナミ の ほう の カイガン に ある カザン が、 むくむく キカイ に かんじだして きました。 ロウギシ が さけびました。
「ブドリ クン。 サンムトリ は、 ケサ まで なにも なかった ね」
「はい、 イマ まで サンムトリ の はたらいた の を みた こと が ありません」
「ああ、 これ は もう フンカ が ちかい。 ケサ の ジシン が シゲキ した の だ。 この ヤマ の キタ 10 キロ の ところ には サンムトリ の シ が ある。 コンド バクハツ すれば、 たぶん ヤマ は 3 ブン の 1、 キタガワ を はねとばして、 ウシ や テーブル ぐらい の イワ は あつい ハイ や ガス と イッショ に、 どしどし サンムトリ シ に おちて くる。 どうでも イマ の うち に、 この ウミ に むいた ほう へ ボーリング を いれて キズグチ を こさえて、 ガス を ぬく か ヨウガン を ださせる か しなければ ならない。 イマ すぐ フタリ で み に いこう」
 フタリ は すぐに シタク して、 サンムトリ-ユキ の キシャ に のりました。

 6、 サンムトリ カザン

 フタリ は ツギ の アサ、 サンムトリ の シ に つき、 ヒルゴロ サンムトリ カザン の イタダキ ちかく、 カンソク キカイ を おいて ある コヤ に のぼりました。 そこ は、 サンムトリ-サン の ふるい フンカコウ の ガイリンザン が、 ウミ の ほう へ むいて かけた ところ で、 その コヤ の マド から ながめます と、 ウミ は アオ や ハイイロ の イクツ も の シマ に なって みえ、 その ナカ を キセン は くろい ケムリ を はき、 ギンイロ の ミオ を ひいて イクツ も すべって いる の でした。
 ロウギシ は しずか に スベテ の カンソクキ を しらべ、 それから ブドリ に いいました。
「キミ は この ヤマ は あと ナンニチ ぐらい で フンカ する と おもう か」
「ヒトツキ は もたない と おもいます」
「ヒトツキ は もたない。 もう トオカ も もたない。 はやく コウサク を して しまわない と、 トリカエシ の つかない こと に なる。 ワタシ は この ヤマ の ウミ に むいた ほう では、 あすこ が いちばん よわい と おもう」 ロウギシ は サンプク の タニ の ウエ の ウスミドリ の クサチ を ゆびさしました。 そこ を クモ の カゲ が しずか に あおく すべって いる の でした。
「あすこ には ヨウガン の ソウ が フタツ しか ない。 アト は やわらか な カザンバイ と カザンレキ の ソウ だ。 それに あすこ まで は ボクジョウ の ミチ も リッパ に ある から、 ザイリョウ を はこぶ こと も ぞうさない。 ボク は コウサクタイ を シンセイ しよう」 ロウギシ は せわしく キョク へ ハッシン を はじめました。
 その とき アシ の シタ では、 つぶやく よう な かすか な オト が して、 カンソクゴヤ は しばらく ぎしぎし きしみました。 ロウギシ は キカイ を はなれました。
「キョク から すぐ コウサクタイ を だす そう だ。 コウサクタイ と いって も ハンブン ケッシタイ だ。 ワタシ は イマ まで に、 こんな キケン に せまった シゴト を した こと が ない」
「トオカ の うち に できる でしょう か」
「きっと できる。 ソウチ には ミッカ、 サンムトリ シ の ハツデンショ から、 デンセン を ひいて くる には イツカ かかる な」
 ギシ は しばらく ユビ を おって かんがえて いました が、 やがて アンシン した よう に また しずか に いいました。
「とにかく ブドリ クン。 ひとつ チャ を わかして のもう では ない か。 あんまり いい ケシキ だ から」
 ブドリ は もって きた アルコール ランプ に ヒ を いれて、 チャ を わかしはじめました。 ソラ には だんだん クモ が でて、 それに ヒ も もう おちた の か、 ウミ は さびしい ハイイロ に かわり、 タクサン の しろい ナミガシラ は、 イッセイ に カザン の スソ に よせて きました。
 ふと ブドリ は すぐ メノマエ に、 いつか みた こと の ある おかしな カタチ の ちいさな ヒコウセン が とんで いる の を みつけました。 ロウギシ も はねあがりました。
「あ、 クーボー クン が やって きた」
 ブドリ も つづいて コヤ を とびだしました。 ヒコウセン は もう コヤ の ヒダリガワ の おおきな イワ の カベ の ウエ に とまって、 ナカ から セイ の たかい クーボー ダイハカセ が ひらり と とびおりて いました。 ハカセ は しばらく その ヘン の イワ の おおきな サケメ を さがして いました が、 やっと それ を みつけた と みえて、 てばやく ネジ を しめて ヒコウセン を つなぎました。
「オチャ を よばれ に きた よ。 ゆれる かい」 ダイハカセ は にやにや わらって いいました。 ロウギシ が こたえました。
「まだ そんな で ない。 けれども どうも イワ が ぽろぽろ ウエ から おちて いる らしい ん だ」
 ちょうど その とき、 ヤマ は にわか に おこった よう に なりだし、 ブドリ は メノマエ が あおく なった よう に おもいました。 ヤマ は ぐらぐら つづけて ゆれました。 みる と クーボー ダイハカセ も ロウギシ も しゃがんで イワ へ しがみついて いました し、 ヒコウセン も おおきな ナミ に のった フネ の よう に ゆっくり ゆれて おりました。
 ジシン は やっと やみ、 クーボー ダイハカセ は おきあがって すたすた と コヤ へ はいって いきました。 ナカ では オチャ が ひっくりかえって、 アルコール が あおく ぽかぽか もえて いました。 クーボー ダイハカセ は キカイ を すっかり しらべて、 それから ロウギシ と いろいろ はなしました。 そして シマイ に いいました。
「もう どうしても ライネン は チョウセキ ハツデンショ を ゼンブ つくって しまわなければ ならない。 それ が できれば コンド の よう な バアイ にも その ヒ の うち に シゴト が できる し、 ブドリ クン が いって いる ヌマバタケ の ヒリョウ も ふらせられる ん だ」
「カンバツ だって ちっとも こわく なくなる から な」 ペンネン ギシ も いいました。 ブドリ は ムネ が わくわく しました。 ヤマ まで おどりあがって いる よう に おもいました。 じっさい ヤマ は、 その とき はげしく ゆれだして、 ブドリ は ユカ へ なげだされて いた の です。 ダイハカセ が いいました。
「やるぞ。 やるぞ。 イマ の は サンムトリ の シ へも かなり かんじた に ちがいない」
 ロウギシ が いいました。
「イマ の は ボクラ の アシモト から、 キタ へ 1 キロ ばかり、 チヒョウカ 700 メートル ぐらい の ところ で、 この コヤ の 60~70 バイ ぐらい の イワ の カタマリ が ヨウガン の ナカ へ おちこんだ らしい の だ。 ところが ガス が いよいよ サイゴ の イワ の カワ を はねとばす まで には、 そんな カタマリ を 100 も 200 も、 ジブン の カラダ の ナカ に とらなければ ならない」
 ダイハカセ は しばらく かんがえて いました が、 「そう だ、 ボク は これ で シッケイ しよう」 と いって コヤ を でて、 いつか ひらり と フネ に のって しまいました。 ロウギシ と ブドリ は、 ダイハカセ が アカリ を 2~3 ド ふって アイサツ しながら ヤマ を まわって ムコウ へ いく の を みおくって、 また コヤ に はいり、 かわるがわる ねむったり カンソク したり しました。 そして アケガタ フモト へ コウサクタイ が つきます と、 ロウギシ は ブドリ を ヒトリ コヤ に のこして、 キノウ ゆびさした あの クサチ まで おりて いきました。 ミンナ の コエ や、 テツ の ザイリョウ の ふれあう オト は、 シタ から カゼ が ふきあげる とき は、 テ に とる よう に きこえました。 ペンネン ギシ から は ひっきりなし に、 ムコウ の シゴト の ススミグアイ も しらせて よこし、 ガス の アツリョク や ヤマ の カタチ の カワリヨウ も たずねて きました。 それから ミッカ の アイダ は、 はげしい ジシン や ジナリ の ナカ で、 ブドリ の ほう も フモト の ほう も ほとんど ねむる ヒマ さえ ありません でした。 その ヨッカ-メ の ゴゴ、 ロウギシ から の ハッシン が いって きました。
「ブドリ クン だな。 すっかり シタク が できた。 いそいで おりて きたまえ。 カンソク の キカイ は イッペン しらべて ソノママ に して、 ヒョウ は ゼンブ もって くる の だ。 もう その コヤ は キョウ の ゴゴ には なくなる ん だ から」
 ブドリ は すっかり いわれた とおり に して ヤマ を おりて いきました。 そこ には イマ まで キョク の ソウコ に あった おおきな テツザイ が、 すっかり ヤグラ に くみたって いて、 イロイロ な キカイ は もう デンリュウ さえ くれば すぐに はたらきだす ばかり に なって いました。 ペンネン ギシ の ホオ は げっそり おち、 コウサクタイ の ヒトタチ も あおざめて メ ばかり ひからせながら、 それでも ミンナ わらって ブドリ に アイサツ しました。 ロウギシ が いいました。
「では ひきあげよう。 ミンナ シタク して クルマ に のりたまえ」 ミンナ は オオイソギ で 20 ダイ の ジドウシャ に のりました。 クルマ は レツ に なって ヤマ の スソ を イッサン に サンムトリ の シ に はしりました。 ちょうど ヤマ と シ との マンナカ-ゴロ で ギシ は ジドウシャ を とめさせました。
「ここ へ テント を はりたまえ。 そして ミンナ で ねむる ん だ」
 ミンナ は、 モノ を ヒトコト も いえず に、 その とおり に して たおれる よう に ねむって しまいました。
 その ゴゴ、 ロウギシ は ジュワキ を おいて さけびました。
「さあ デンセン は とどいた ぞ。 ブドリ クン、 はじめる よ」 ロウギシ は スイッチ を いれました。 ブドリ たち は、 テント の ソト に でて、 サンムトリ の チュウフク を みつめました。 ノハラ には、 シロユリ が イチメン さき、 その ムコウ に サンムトリ が あおく ひっそり たって いました。
 にわか に サンムトリ の ヒダリ の スソ が ぐらぐらっ と ゆれ、 マックロ な ケムリ が ぱっと たった と おもう と マッスグ に テン に のぼって いって、 おかしな キノコ の カタチ に なり、 その アシモト から キンイロ の ヨウガン が きらきら ながれだして、 みるまに ずうっと オウギガタ に ひろがりながら ウミ へ はいりました。 と おもう と ジメン は はげしく ぐらぐら ゆれ、 ユリ の ハナ も イチメン ゆれ、 それから ごうっ と いう よう な おおきな オト が、 ミンナ を たおす くらい つよく やって きました。 それから カゼ が どうっと ふいて いきました。
「やった やった」 と ミンナ は そっち に テ を のばして たかく さけびました。 この とき サンムトリ の ケムリ は、 くずれる よう に ソラ いっぱい ひろがって きました が、 たちまち ソラ は マックラ に なって、 あつい コイシ が ぱらぱら ぱらぱら ふって きました。 ミンナ は テント の ナカ に はいって シンパイ そう に して いました が、 ペンネン ギシ は、 トケイ を みながら、
「ブドリ クン、 うまく いった。 キケン は もう まったく ない。 シ の ほう へは ハイ を すこし ふらせる だけ だろう」 と いいました。 コイシ は だんだん ハイ に かわりました。 それ も まもなく うすく なって、 ミンナ は また テント の ソト へ とびだしました。 ノハラ は まるで イチメン ネズミイロ に なって、 ハイ は ちょっと ばかり つもり、 ユリ の ハナ は みんな おれて ハイ に うずまり、 ソラ は へんに ミドリイロ でした。 そして サンムトリ の スソ には ちいさな コブ が できて、 そこ から ハイイロ の ケムリ が、 まだ どんどん のぼって おりました。
 その ユウガタ ミンナ は、 ハイ や コイシ を ふんで、 もう イチド ヤマ へ のぼって、 あたらしい カンソク の キカイ を すえつけて かえりました。

 7、 クモ の ウミ

 それから 4 ネン の アイダ に、 クーボー ダイハカセ の ケイカクドオリ、 チョウセキ ハツデンショ は、 イーハトーブ の カイガン に そって、 200 も ハイチ されました。 イーハトーブ を めぐる カザン には、 カンソクゴヤ と イッショ に、 しろく ぬられた テツ の ヤグラ が じゅんじゅん に たちました。
 ブドリ は ギシ ココロエ に なって、 イチネン の ダイブブン は カザン から カザン と まわって あるいたり、 あぶなく なった カザン を コウサク したり して いました。
 ツギ の トシ の ハル、 イーハトーブ の カザン キョク では、 ツギ の よう な ポスター を ムラ や マチ へ はりました。

 チッソ ヒリョウ を ふらせます。
コトシ の ナツ、 アメ と イッショ に、 ショウサン アムモニア を ミナサン の ヌマバタケ や ソサイバタケ に ふらせます から、 ヒリョウ を つかう カタ は、 その ブン を いれて ケイサン して ください。 ブンリョウ は 100 メートル シホウ に つき 120 キログラム です。
 アメ も すこし は ふらせます。
カンバツ の サイ には、 とにかく サクモツ の かれない ぐらい の アメ は ふらせる こと が できます から、 イマ まで ミズ が こなく なって サクヅケ しなかった ヌマバタケ も、 コトシ は シンパイ せず に うえつけて ください。

 その トシ の 6 ガツ、 ブドリ は イーハトーブ の マンナカ に あたる イーハトーブ カザン の チョウジョウ の コヤ に おりました。 シタ は イチメン ハイイロ を した クモ の ウミ でした。 その あちこち から イーハトーブ-ジュウ の カザン の イタダキ が、 ちょうど シマ の よう に くろく でて おりました。 その クモ の すぐ ウエ を 1 セキ の ヒコウセン が、 センビ から マッシロ な ケムリ を ふいて、 ヒトツ の ミネ から ヒトツ の ミネ へ ちょうど ハシ を かける よう に とびまわって いました。 その ケムリ は、 ジカン が たつ ほど だんだん ふとく はっきり なって、 しずか に シタ の クモ の ウミ に おちかぶさり、 まもなく、 イチメン の クモ の ウミ には うすじろく ひかる おおきな アミ が、 ヤマ から ヤマ へ はりわたされました。 いつか ヒコウセン は ケムリ を おさめて、 しばらく アイサツ する よう に ワ を かいて いました が、 やがて センシュ を たれて しずか に クモ の ナカ へ しずんで いって しまいました。
 ジュワキ が じー と なりました。 ペンネン ギシ の コエ でした。
「フネ は イマ かえって きた。 シタ の ほう の シタク は すっかり いい。 アメ は ざあざあ ふって いる。 もう よかろう と おもう。 はじめて くれたまえ」
 ブドリ は ボタン を おしました。 みるみる サッキ の ケムリ の アミ は、 うつくしい モモイロ や アオ や ムラサキ に、 ぱっぱっ と メ も さめる よう に かがやきながら、 ついたり きえたり しました。 ブドリ は まるで うっとり と して それ に みとれました。 その うち に だんだん ヒ は くれて、 クモ の ウミ も アカリ が きえた とき は、 ハイイロ か ネズミイロ か わからない よう に なりました。
 ジュワキ が なりました。
「ショウサン アムモニア は もう アメ の ナカ へ でて きて いる。 リョウ も これ ぐらい なら ちょうど いい。 イドウ の グアイ も いい らしい。 あと 4 ジカン やれば、 もう この チホウ は コンゲツチュウ は タクサン だろう。 つづけて やって くれたまえ」
 ブドリ は もう うれしくって はねあがりたい くらい でした。 この クモ の シタ で ムカシ の アカヒゲ の シュジン も、 トナリ の セキユ が コヤシ に なる か と いった ヒト も、 ミンナ よろこんで アメ の オト を きいて いる。 そして アス の アサ は、 みちがえる よう に ミドリイロ に なった オリザ の カブ を テ で なでたり する だろう。 まるで ユメ の よう だ と おもいながら、 クモ の マックラ に なったり、 また うつくしく かがやいたり する の を ながめて おりました。 ところが みじかい ナツ の ヨル は もう あける らしかった の です。 デンコウ の アイマ に、 ヒガシ の クモ の ウミ の ハテ が ぼんやり きばんで いる の でした。
 ところが それ は ツキ が でる の でした。 おおきな キイロ な ツキ が しずか に のぼって くる の でした。 そして クモ が あおく ひかる とき は へんに しろっぽく みえ、 モモイロ に ひかる とき は ナニ か わらって いる よう に みえる の でした。 ブドリ は、 もう ジブン が ダレ なの か、 ナニ を して いる の か わすれて しまって、 ただ ぼんやり それ を みつめて いました。
 ジュワキ が じー と なりました。
「こっち では だいぶ カミナリ が なりだして きた。 アミ が あちこち ちぎれた らしい。 あんまり ならす と アシタ の シンブン が ワルクチ を いう から、 もう 10 プン ばかり で やめよう」
 ブドリ は ジュワキ を おいて ミミ を すましました。 クモ の ウミ は あっち でも こっち でも ぶつぶつ ぶつぶつ つぶやいて いる の です。 よく キ を つけて きく と やっぱり それ は きれぎれ の カミナリ の オト でした。 ブドリ は スイッチ を きりました。 にわか に ツキ の アカリ だけ に なった クモ の ウミ は、 やっぱり しずか に キタ へ ながれて います。 ブドリ は モウフ を カラダ に まいて ぐっすり ねむりました。

 8、 アキ

 その トシ の ノウサクブツ の シュウカク は、 キコウ の せい も ありました が、 10 ネン の アイダ にも なかった ほど、 よく できました ので、 カザン キョク には あっち から も こっち から も カンシャジョウ や ゲキレイ の テガミ が とどきました。 ブドリ は はじめて ホントウ に いきた カイ が ある よう に おもいました。
 ところが ある ヒ、 ブドリ が タチナ と いう カザン へ いった カエリ、 トリイレ の すんで がらん と した ヌマバタケ の ナカ の ちいさな ムラ を とおりかかりました。 ちょうど ヒルゴロ なので、 パン を かおう と おもって、 1 ケン の ザッカ や カシ を うって いる ミセ へ よって、
「パン は ありません か」 と ききました。 すると、 そこ には 3 ニン の ハダシ の ヒトタチ が、 メ を マッカ に して サケ を のんで おりました が、 ヒトリ が たちあがって、
「パン は ある が、 どうも くわれない パン で な。 セキバン だ もな」 と おかしな こと を いいます と、 ミンナ は おもしろそう に ブドリ の カオ を みて どっと わらいました。 ブドリ は いや に なって、 ぷいっと オモテ へ でましたら、 ムコウ から カミ を カクガリ に した セイ の たかい オトコ が きて、 いきなり、
「おい、 オマエ、 コトシ の ナツ、 デンキ で コヤシ ふらせた ブドリ だな」 と いいました。
「そう だ」 ブドリ は なにげなく こたえました。 その オトコ は たかく さけびました。
「カザン キョク の ブドリ きた ぞ。 ミンナ あつまれ」
 すると イマ の ウチ の ナカ や そこら の ハタケ から、 7~8 ニン の ヒャクショウ たち が、 げらげら わらって かけて きました。
「この ヤロウ、 キサマ の デンキ の おかげ で、 オイラ の オリザ、 みんな たおれて しまった ぞ。 なして あんな マネ した ん だ」 ヒトリ が いいました。
 ブドリ は しずか に いいました。
「たおれる なんて、 キミラ は ハル に だした ポスター を みなかった の か」
「なに この ヤロウ」 いきなり ヒトリ が ブドリ の ボウシ を たたきおとしました。 それから ミンナ は よって たかって ブドリ を なぐったり ふんだり しました。 ブドリ は とうとう ナニ が なんだか わからなく なって たおれて しまいました。
 キ が ついて みる と ブドリ は どこ か の ビョウイン らしい ヘヤ の しろい ベッド に ねて いました。 マクラモト には ミマイ の デンポウ や、 タクサン の テガミ が ありました。 ブドリ の カラダジュウ は いたくて あつく、 うごく こと が できません でした。 けれども それから 1 シュウカン ばかり たちます と、 もう ブドリ は モト の ゲンキ に なって いました。 そして シンブン で、 あの とき の デキゴト は、 ヒリョウ の イレヨウ を まちがって おしえた ノウギョウ ギシ が、 オリザ の たおれた の を みんな カザン キョク の せい に して、 ごまかして いた ため だ と いう こと を よんで、 おおきな コエ で ヒトリ で わらいました。
 その ツギ の ヒ の ゴゴ、 ビョウイン の コヅカイ が はいって きて、
「ネリ と いう ゴフジン の オカタ が たずねて おいで に なりました」 と いいました。 ブドリ は ユメ では ない か と おもいましたら、 まもなく ヒトリ の ヒ に やけた ヒャクショウ の オカミサン の よう な ヒト が、 おずおず と はいって きました。 それ は まるで かわって は いました が、 あの モリ の ナカ から ダレ か に つれて いかれた ネリ だった の です。 フタリ は しばらく モノ も いえません でした が、 やっと ブドリ が、 その ノチ の こと を たずねます と、 ネリ も ぼつぼつ と イーハトーブ の ヒャクショウ の コトバ で、 イマ まで の こと を はなしました。 ネリ を つれて いった あの オトコ は、 ミッカ ばかり の ノチ、 めんどうくさく なった の か、 ある ちいさな ボクジョウ の チカク へ ネリ を のこして、 どこ か へ いって しまった の でした。
 ネリ が そこら を ないて あるいて います と、 その ボクジョウ の シュジン が かわいそう に おもって ウチ へ いれて、 アカンボウ の オモリ を させたり して いました が、 だんだん ネリ は なんでも はたらける よう に なった ので、 とうとう 3~4 ネン マエ に その ちいさな ボクジョウ の いちばん ウエ の ムスコ と ケッコン した と いう の でした。 そして コトシ は ヒリョウ も ふった ので、 イツモ なら ウマヤゴエ を トオク の ハタケ まで はこびださなければ ならず、 たいへん ナンギ した の を、 チカク の カブラ の ハタケ へ みんな いれた し、 トオク の トウモロコシ も よく できた ので、 ウチジュウ ミンナ よろこんで いる と いう よう な こと も いいました。 また あの モリ の ナカ へ シュジン の ムスコ と イッショ に ナンベン も いって みた けれども、 ウチ は すっかり こわれて いた し、 ブドリ は どこ へ いった か わからない ので、 いつも がっかり して かえって いたら、 キノウ シンブン で シュジン が ブドリ の ケガ を した こと を よんだ ので、 やっと こっち へ たずねて きた と いう こと も いいました。 ブドリ は、 なおったら きっと その ウチ へ たずねて いって、 オレイ を いう ヤクソク を して ネリ を かえしました。

 9、 カルボナード-トウ

 それから の 5 ネン は、 ブドリ には ホントウ に たのしい もの でした。 アカヒゲ の シュジン の ウチ にも ナンベン も オレイ に いきました。
 もう よほど トシ は とって いました が、 やはり ヒジョウ な ゲンキ で、 コンド は ケ の ながい ウサギ を 1000 ビキ イジョウ かったり、 あかい カンラン ばかり ハタケ に つくったり、 あいかわらず の ヤマシ は やって いました が、 クラシ は ずうっと いい よう でした。
 ネリ には、 かわいらしい オトコ の コ が うまれました。 フユ に シゴト が ヒマ に なる と、 ネリ は その コ に すっかり コドモ の ヒャクショウ の よう な カタチ を させて、 シュジン と イッショ に、 ブドリ の ウチ に たずねて きて、 とまって いったり する の でした。
 ある ヒ、 ブドリ の ところ へ、 ムカシ テグスカイ の オトコ に ブドリ と イッショ に つかわれて いた ヒト が たずねて きて、 ブドリ たち の オトウサン の オハカ が、 モリ の いちばん ハズレ の おおきな カヤ の キ の シタ に ある と いう こと を おしえて いきました。 それ は、 はじめ、 テグスカイ の オトコ が モリ に きて、 モリジュウ の キ を みて あるいた とき、 ブドリ の オトウサン たち の つめたく なった カラダ を みつけて、 ブドリ に しらせない よう に、 そっと ツチ に うずめて、 ウエ へ 1 ポン の カバ の エダ を たてて おいた と いう の でした。 ブドリ は、 すぐ ネリ たち を つれて そこ へ いって、 しろい セッカイガン の ハカ を たてて、 それから も その ヘン を とおる たび に いつも よって くる の でした。
 そして ちょうど ブドリ が 27 の トシ でした。 どうも あの おそろしい さむい キコウ が また くる よう な モヨウ でした。 ソッコウジョ では、 タイヨウ の チョウシ や キタ の ほう の ウミ の コオリ の ヨウス から、 その トシ の 2 ガツ に ミンナ へ それ を ヨホウ しました。 それ が ヒトアシ ずつ だんだん ホントウ に なって、 コブシ の ハナ が さかなかったり、 5 ガツ に トオカ も ミゾレ が ふったり します と、 ミンナ は もう コノマエ の キョウサク を おもいだして、 いきた ソラ も ありません でした。 クーボー ダイハカセ も、 たびたび キショウ や ノウギョウ の ギシ たち と ソウダン したり、 イケン を シンブン へ だしたり しました が、 やっぱり この はげしい サムサ だけ は どうとも できない ヨウス でした。
 ところが 6 ガツ も ハジメ に なって、 まだ キイロ な オリザ の ナエ や、 メ を ださない キ を みます と、 ブドリ は もう いて も たって も いられません でした。 コノママ で すぎる なら、 モリ にも ノハラ にも、 ちょうど あの トシ の ブドリ の カゾク の よう に なる ヒト が たくさん できる の です。 ブドリ は まるで モノ も たべず に イクバン も イクバン も かんがえました。 ある バン ブドリ は、 クーボー ダイハカセ の ウチ を たずねました。
「センセイ、 キソウ の ナカ に タンサン ガス が ふえて くれば あたたかく なる の です か」
「それ は なる だろう。 チキュウ が できて から イマ まで の キオン は、 たいてい クウキ-チュウ の タンサン ガス の リョウ で きまって いた と いわれる くらい だ から ね」
「カルボナード カザントウ が、 イマ バクハツ したら、 この キコウ を かえる くらい の タンサン ガス を ふく でしょう か」
「それ は ボク も ケイサン した。 あれ が イマ バクハツ すれば、 ガス は すぐ ダイジュンカン の ジョウソウ の カゼ に まじって チキュウ ゼンタイ を つつむ だろう。 そして カソウ の クウキ や チヒョウ から の ネツ の ホウサン を ふせぎ、 チキュウ ゼンタイ を ヘイキン で 5 ド ぐらい あたたか に する だろう と おもう」
「センセイ、 あれ を イマ すぐ ふかせられない でしょう か」
「それ は できる だろう。 けれども、 その シゴト に いった モノ の ウチ、 サイゴ の ヒトリ は どうしても にげられない ので ね」
「センセイ、 ワタシ に それ を やらして ください。 どうか センセイ から ペンネン センセイ へ オユルシ の でる よう オコトバ を ください」
「それ は いけない。 キミ は まだ わかい し、 イマ の キミ の シゴト に かわれる モノ は そう は ない」
「ワタシ の よう な モノ は、 これから たくさん できます。 ワタシ より もっと もっと なんでも できる ヒト が、 ワタシ より もっと リッパ に もっと うつくしく、 シゴト を したり わらったり して いく の です から」
「その ソウダン は ボク は いかん。 ペンネン ギシ に はなしたまえ」
 ブドリ は かえって きて、 ペンネン ギシ に ソウダン しました。 ギシ は うなずきました。
「それ は いい。 けれども ボク が やろう。 ボク は コトシ もう 63 なの だ。 ここ で しぬ なら まったく ホンモウ と いう もの だ」
「センセイ、 けれども この シゴト は まだ あんまり ふたしか です。 イッペン うまく バクハツ して も まもなく ガス が アメ に とられて しまう かも しれません し、 また なにもかも おもった とおり いかない かも しれません。 センセイ が コンド おいで に なって しまって は、 アト なんとも クフウ が つかなく なる と ぞんじます」
 ロウギシ は だまって クビ を たれて しまいました。
 それから ミッカ の ノチ、 カザン キョク の フネ が、 カルボナード-トウ へ いそいで いきました。 そこ へ イクツ も の ヤグラ は たち、 デンセン は レンケツ されました。
 すっかり シタク が できる と、 ブドリ は ミンナ を フネ で かえして しまって、 ジブン は ヒトリ シマ に のこりました。
 そして その ツギ の ヒ、 イーハトーブ の ヒトタチ は、 アオゾラ が ミドリイロ に にごり、 ヒ や ツキ が アカガネイロ に なった の を みました。 けれども それから サン、 ヨッカ たちます と、 キコウ は ぐんぐん あたたかく なって きて、 その アキ は ほぼ フツウ の サクガラ に なりました。 そして ちょうど、 この オハナシ の ハジマリ の よう に なる はず の、 タクサン の ブドリ の オトウサン や オカアサン は、 タクサン の ブドリ や ネリ と イッショ に、 その フユ を あたたかい タベモノ と、 あかるい タキギ で たのしく くらす こと が できた の でした。

ある オンナ (ゼンペン)

 ある オンナ  (ゼンペン)  アリシマ タケオ  1  シンバシ を わたる とき、 ハッシャ を しらせる 2 バンメ の ベル が、 キリ と まで は いえない 9 ガツ の アサ の、 けむった クウキ に つつまれて きこえて きた。 ヨウコ は ヘイキ で それ ...