2015/08/28

アベ イチゾク

 アベ イチゾク

 モリ オウガイ

 ジュ-シイ ノ ゲ サコンエ ノ ショウショウ ケン エッチュウ ノ カミ ホソカワ タダトシ は、 カンエイ 18 ネン シンシ の ハル、 ヨソ より は はやく さく リョウチ ヒゴ ノ クニ の ハナ を みすてて、 54 マン-ゴク の ダイミョウ の はればれしい ギョウレツ に ゼンゴ を かこませ、 ミナミ より キタ へ アユミ を はこぶ ハル と ともに、 エド を こころざして サンキン の ミチ に のぼろう と して いる うち、 はからず ヤマイ に かかって、 テンイ の ホウザイ も コウ を そうせず、 ひにまし おもく なる ばかり なので、 エド へは シュッパツ ヒノベ の ヒキャク が たつ。 トクガワ ショウグン は メイクン の ホマレ の たかい 3 ダイメ の イエミツ で、 シマバラ イッキ の とき ゾクショウ アマクサ シロウ トキサダ を うちとって タイコウ を たてた タダトシ の ミノウエ を きづかい、 3 ガツ ハツカ には マツダイラ イズ ノ カミ、 アベ ブンゴ ノ カミ、 アベ ツシマ ノ カミ の レンメイ の サタショ を つくらせ、 ハリイ イサク と いう モノ を、 キョウト から ゲコウ させる。 つづいて 22 ニチ には おなじく シッセイ 3 ニン の ショメイ した サタショ を もたせて、 ソガ マタザエモン と いう サムライ を ジョウシ に つかわす。 ダイミョウ に たいする ショウグンケ の トリアツカイ と して は、 テイチョウ を きわめた もの で あった。 シマバラ セイバツ が この トシ から 3 ネン-ゼン カンエイ 15 ネン の ハル ヘイテイ して から ノチ、 エド の ヤシキ に ソエチ を たまわったり、 タカガリ の ツル を くだされたり、 ふだん インギン を つくして いた ショウグンケ の こと で ある から、 コノタビ の タイビョウ を きいて、 センレイ の ゆるす カギリ の イモン を させた の も もっとも で ある。
 ショウグンケ が こういう テツヅキ を する マエ に、 クマモト ハナバタケ の ヤカタ では タダトシ の ヤマイ が すみやか に なって、 とうとう 3 ガツ 17 ニチ サル ノ コク に 56 サイ で なくなった。 オクガタ は オガサワラ ヒョウブ タイフ ヒデマサ の ムスメ を ショウグン が ヨウジョ に して めあわせた ヒト で、 コトシ 45 サイ に なって いる。 ナ を オセン ノ カタ と いう。 チャクシ ロクマル は 6 ネン-ゼン に ゲンプク して ショウグンケ から ミツ の ジ を たまわり、 ミツサダ と なのって、 ジュ-シイ ノ ゲ ジジュウ ケン ヒゴ ノ カミ に せられて いる。 コトシ 17 サイ で ある。 エド サンキンチュウ で トオトウミ ノ クニ ハママツ まで かえった が、 フイン を きいて ひきかえした。 ミツサダ は ノチ ナ を ミツヒサ と あらためた。 ジナン ツルチヨ は ちいさい とき から タツタヤマ の タイショウジ に やって ある。 キョウト ミョウシンジ シュッシン の タイエン オショウ の デシ に なって ソウゲン と いって いる。 サンナン マツノスケ は ホソカワ-ケ に キュウエン の ある ナガオカ シ に やしなわれて いる。 ヨナン カツチヨ は カシン ナンジョウ ダイゼン の ヨウシ に なって いる。 ジョシ は フタリ ある。 チョウジョ フジヒメ は マツダイラ スオウ ノ カミ タダヒロ の オクガタ に なって いる。 ジジョ タケヒメ は ノチ に アリヨシ タノモ ヒデナガ の ツマ に なる ヒト で ある。 オトウト には タダトシ が サンサイ の サンナン に うまれた ので、 ヨナン ナカツカサ タイフ タツタカ、 ゴナン ギョウブ オキタカ、 ロクナン ナガオカ シキブ ヨリユキ の 3 ニン が ある。 イモウト には イナバ カズミチ に かした タラヒメ、 カラスマル チュウナゴン ミツカタ に かした マンヒメ が ある。 この マンヒメ の ハラ に うまれた ネネヒメ が タダトシ の チャクシ ミツヒサ の オクガタ に なって くる の で ある。 メウエ には ナガオカ シ を なのる アニ が フタリ、 マエノ ナガオカ リョウケ に かした アネ が フタリ ある。 インキョ サンサイ ソウリュウ も まだ ゾンメイ で、 79 サイ に なって いる。 この ナカ には チャクシ ミツサダ の よう に エド に いたり、 また キョウト、 その ホカ エンゴク に いる ヒトタチ も ある が、 それ が ノチ に シラセ を うけて なげいた の と ちがって、 クマモト の ヤカタ に いた カギリ の ヒトタチ の ナゲキ は、 わけて ツウセツ な もの で あった。 エド への チュウシン には ムツシマ ショウキチ、 ツダ ロクザエモン の フタリ が たった。
 3 ガツ 20 ヨッカ には ショナヌカ の イトナミ が あった。 4 ガツ 28 ニチ には それまで ヤカタ の イマ の トコイタ を ひきはなって、 ドチュウ に おいて あった カン を かきあげて、 エド から の サシズ に よって、 アキタ-ゴオリ カスガ ムラ シュウウンイン で イガイ を ダビ に して、 コウライモン の ソト の ヤマ に ほうむった。 この ミタマヤ の シタ に、 ヨクネン の フユ に なって、 ゴコクザン ミョウゲジ が コンリュウ せられて、 エド シナガワ トウカイジ から タクアン オショウ の ドウモン の ケイシツ オショウ が きて ジュウジ に なり、 それ が ジナイ の リンリュウアン に インキョ して から、 タダトシ の ジナン で シュッケ して いた ソウゲン が、 テンガン オショウ と ごうして アトツギ に なる の で ある。 タダトシ の ホウゴウ は ミョウゲ インデン タイウン ソウゴ ダイコジ と つけられた。
 シュウウンイン で ダビ に なった の は、 タダトシ の イゴン に よった の で ある。 いつ の こと で あった か、 タダトシ が バンガリ に でて、 この シュウウンイン で やすんで チャ を のんだ こと が ある。 その とき タダトシ は ふと アゴヒゲ の のびて いる の に キ が ついて ジュウジ に カミソリ は ない か と いった。 ジュウジ が タライ に ミズ を とって、 カミソリ を そえて だした。 タダトシ は キゲン よく コゴショウ に ヒゲ を そらせながら、 ジュウジ に いった。 「どう じゃ な。 この カミソリ では モウジャ の アタマ を たくさん そった で あろう な」 と いった。 ジュウジ は なんと ヘンジ を して いい か わからぬ ので、 ひどく こまった。 この とき から タダトシ は シュウウンイン の ジュウジ と こころやすく なって いた ので、 ダビショ を この テラ に きめた の で ある。 ちょうど ダビ の サイチュウ で あった。 ヒツギ の トモ を して きて いた カシン たち の ムレ に、 「あれ、 オタカ が オタカ が」 と いう コエ が した。 ケイダイ の スギ の コダチ に かぎられて、 にぶい アオイロ を して いる ソラ の シタ、 マルガタ の イシ の イヅツ の ウエ に カサ の よう に たれかかって いる ハザクラ の ウエ の ほう に、 2 ワ の タカ が ワ を かいて とんで いた の で ある。 ヒトビト が フシギ-がって みて いる うち に、 2 ワ が オ と クチバシ と ふれる よう に アトサキ に つづいて、 さっと おとして きて、 サクラ の シタ の イ の ナカ に はいった。 テラ の モンゼン で しばらく ナニ か を いいあらそって いた 5~6 ニン の ナカ から、 フタリ の オトコ が かけだして、 イ の ハタ に きて、 イシ の イヅツ に テ を かけて ナカ を のぞいた。 その とき タカ は スイテイ ふかく しずんで しまって、 シダ の シゲミ の ナカ に カガミ の よう に ひかって いる スイメン は、 もう モト の とおり に たいら に なって いた。 フタリ の オトコ は タカジョウシュウ で あった。 イ の ソコ に くぐりいって しんだ の は、 タダトシ が あいして いた アリアケ、 アカシ と いう 2 ワ の タカ で あった。 その こと が わかった とき、 ヒトビト の アイダ に、 「それでは オタカ も ジュンシ した の か」 と ささやく コエ が きこえた。 それ は トノサマ が おかくれ に なった トウジツ から オトツイ まで に ジュンシ した カシン が 10 ヨニン あって、 なかにも オトツイ は 8 ニン イチジ に セップク し、 キノウ も ヒトリ セップク した ので、 カチュウ タレイチニン ジュンシ の こと を おもわず に いる モノ は なかった から で ある。 2 ワ の タカ は どういう テヌカリ で タカジョウシュウ の テ を はなれた か、 どうして メ に みえぬ エモノ を おう よう に、 イド の ナカ に とびこんだ か しらぬ が、 それ を センサク しよう など と おもう モノ は ヒトリ も ない。 タカ は トノサマ の ゴチョウアイ なされた もの で、 それ が ダビ の トウジツ に、 しかも オダビショ の シュウウンイン の イド に はいって しんだ と いう だけ の ジジツ を みて、 タカ が ジュンシ した の だ と いう ハンダン を する には ジュウブン で あった。 それ を うたがって ベツ に ゲンイン を たずねよう と する ヨチ は なかった の で ある。

 チュウイン の シジュウクニチ が 5 ガツ イツカ に すんだ。 これまで は ソウゲン を ハジメ と して、 キセイドウ、 コンリョウドウ、 テンジュアン、 チョウショウイン、 フジアン-トウ の ソウリョ が ゴンギョウ を して いた の で ある。 さて 5 ガツ ムイカ に なった が、 まだ ジュンシ する ヒト が ぽつぽつ ある。 ジュンシ する ホンニン や オヤキョウダイ サイシ は いう まで も なく、 なんの ユカリ も ない モノ でも、 キョウト から くる オハリイ と エド から くだる ゴジョウシ との セッタイ の ヨウイ なんぞ は ウワノソラ で して いて、 ただ ジュンシ の こと ばかり おもって いる。 レイネン ノキ に ふく タンゴ の ショウブ も つまず、 ましてや ハツノボリ の イワイ を する コ の ある イエ も、 その コ の うまれた こと を わすれた よう に して、 しずまりかえって いる。
 ジュンシ には いつ どうして きまった とも なく、 シゼン に オキテ が できて いる。 どれほど トノサマ を タイセツ に おもえば と いって、 タレ でも カッテ に ジュンシ が できる もの では ない。 タイヘイ の ヨ の エド サンキン の オトモ、 いざ センソウ と いう とき の ジンチュウ への オトモ と おなじ こと で、 シデ の ヤマ サンズ の カワ の オトモ を する にも ぜひ トノサマ の オユルシ を えなくて は ならない。 その ユルシ も ない のに しんで は、 それ は イヌジニ で ある。 ブシ は ミョウモン が タイセツ だ から、 イヌジニ は しない。 テキジン に とびこんで ウチジニ を する の は リッパ では ある が、 グンレイ に そむいて ヌケガケ を して しんで は コウ には ならない。 それ が イヌジニ で ある と おなじ こと で、 オユルシ の ない に ジュンシ して は、 これ も イヌジニ で ある。 たまに そういう ヒト で イヌジニ に ならない の は、 チグウ を えた クンシン の アイダ に モッケイ が あって、 オユルシ は なくて も オユルシ が あった の と かわらぬ の で ある。 ブツネハン の ノチ に おこった ダイジョウ の オシエ は、 ホトケ の オユルシ は なかった が、 カゲンミ を つうじて しらぬ こと の ない ホトケ は、 そういう オシエ が でて くる もの だ と しって ケンキョ して おいた もの だ と して ある。 オユルシ が ない のに ジュンシ の できる の は、 コンク で とかれる と おなじ よう に、 ダイジョウ の オシエ を とく よう な もの で あろう。
 そんなら どうして オユルシ を える か と いう と、 このたび ジュンシ した ヒトビト の ナカ の ナイトウ チョウジュウロウ モトツグ が ねがった シュダン など が よい レイ で ある。 チョウジュウロウ は ヘイゼイ タダトシ の ツクエマワリ の ヨウ を つとめて、 カクベツ の ゴコンイ を こうむった モノ で、 ビョウショウ を はなれず に カイホウ を して いた。 もはや ホンプク は おぼつかない と、 タダトシ が さとった とき、 チョウジュウロウ に 「マツゴ が ちこう なったら、 あの フジ と かいて ある ダイモジ の カケモノ を マクラモト に かけて くれ」 と いいつけて おいた。 3 ガツ 17 ニチ に ヨウダイ が しだいに おもく なって、 タダトシ が 「あの カケモノ を かけえ」 と いった。 チョウジュウロウ は それ を かけた。 タダトシ は それ を ヒトメ みて、 しばらく メイモク して いた。 それから タダトシ が 「アシ が だるい」 と いった。 チョウジュウロウ は カイマキ の スソ を しずか に まくって、 タダトシ の アシ を さすりながら、 タダトシ の カオ を じっと みる と、 タダトシ も じっと みかえした。
「チョウジュウロウ オネガイ が ござりまする」
「ナン じゃ」
「ゴビョウキ は いかにも ゴジュウタイ の よう には おみうけ もうしまする が、 シンブツ の カゴ リョウヤク の コウケン で、 1 ニチ も はよう ゴゼンカイ あそばす よう に と、 キガン いたして おりまする。 それでも マンイチ と もうす こと が ござりまする。 もしも の こと が ござりましたら、 どうぞ チョウジュウロウ め に オトモ を おおせつけられます よう に」
 こう いいながら チョウジュウロウ は タダトシ の アシ を そっと もちあげて、 ジブン の ヒタイ に おしあてて いただいた。 メ には ナミダ が いっぱい うかんで いた。
「それ は いかん ぞよ」 こう いって タダトシ は イマ まで チョウジュウロウ と カオ を みあわせて いた のに、 ハンブン ネガエリ を する よう に ワキ を むいた。
「どうぞ そう おっしゃらず に」 チョウジュウロウ は また タダトシ の アシ を いただいた。
「いかん いかん」 カオ を そむけた まま で いった。
 レツザ の モノ の ナカ から、 「ジャクハイ の ミ を もって スイサン じゃ、 ひかえたら よかろう」 と いった モノ が ある。 チョウジュウロウ は トウネン 17 サイ で ある。
「どうぞ」 ノド に つかえた よう な コエ で いって、 チョウジュウロウ は 3 ド-メ に いただいた アシ を いつまでも ヒタイ に あてて はなさず に いた。
「ジョウ の こわい ヤツ じゃ な」 コエ は おこって しかる よう で あった が、 タダトシ は この コトバ と ともに 2 ド うなずいた。
 チョウジュウロウ は 「はっ」 と いって、 リョウテ で タダトシ の アシ を かかえた まま、 トコ の ウシロ に うっぷして、 しばらく うごかず に いた。 その とき チョウジュウロウ が ココロ の ウチ には、 ヒジョウ な ナンショ を かよって ゆきつかなくて は ならぬ ところ へ ゆきついた よう な、 チカラ の ユルミ と ココロ の オチツキ と が みちあふれて、 その ホカ の こと は なにも イシキ に のぼらず、 ビンゴタタミ の ウエ に ナミダ の こぼれる の も しらなかった。
 チョウジュウロウ は まだ ジャクハイ で なにひとつ きわだった コウセキ も なかった が、 タダトシ は しじゅう メ を かけて ソバ ちかく つかって いた。 サケ が すき で、 ベツジン なら ブレイ の オトガメ も ありそう な シッサク を した こと が ある のに、 タダトシ は 「あれ は チョウジュウロウ が した の では ない、 サケ が した の じゃ」 と いって わらって いた。 それで その オン に むくいなくて は ならぬ、 その アヤマチ を つぐのわなくて は ならぬ と おもいこんで いた チョウジュウロウ は、 タダトシ の ビョウキ が おもって から は、 その ホウシャ と バイショウ との ミチ は ジュンシ の ホカ ない と かたく しんずる よう に なった。 しかし こまか に この オトコ の シンチュウ に たちいって みる と、 ジブン の ハツイ で ジュンシ しなくて は ならぬ と いう ココロモチ の かたわら、 ヒト が ジブン を ジュンシ する はず の もの だ と おもって いる に ちがいない から、 ジブン は ジュンシ を よぎなく せられて いる と、 ヒト に すがって シ の ホウコウ へ すすんで ゆく よう な ココロモチ が、 ほとんど おなじ ツヨサ に ソンザイ して いた。 ハンメン から いう と、 もし ジブン が ジュンシ せず に いたら、 おそろしい クツジョク を うける に ちがいない と シンパイ して いた の で ある。 こういう ヨワミ の ある チョウジュウロウ では ある が、 シ を おそれる ネン は ミジン も ない。 それだから どうぞ トノサマ に ジュンシ を ゆるして いただこう と いう ガンモウ は、 ナニモノ の ショウガイ をも こうむらず に この オトコ の イシ の ゼンプク を りょうして いた の で ある。
 しばらく して チョウジュウロウ は リョウテ で もって いる トノサマ の アシ に チカラ が はいって すこし ふみのばされる よう に かんじた。 これ は また だるく おなり に なった の だ と おもった ので、 また サイショ の よう に しずか に さすりはじめた。 この とき チョウジュウロウ の シントウ には ロウボ と ツマ との こと が うかんだ。 そして ジュンシシャ の イゾク が シュカ の ユウタイ を うける と いう こと を かんがえて、 それで オノレ は カゾク を アンノン な チイ に おいて、 やすんじて しぬる こと が できる と おもった。 それ と ドウジ に チョウジュウロウ の カオ は はればれ した キショク に なった。

 4 ガツ 17 ニチ の アサ、 チョウジュウロウ は イフク を あらためて ハハ の マエ に でて、 はじめて ジュンシ の こと を あかして イトマゴイ を した。 ハハ は すこしも おどろかなかった。 それ は たがいに クチ に だして は いわぬ が、 キョウ は セガレ が セップク する ヒ だ と、 ハハ も とうから おもって いた から で ある。 もし セップク しない と でも いったら、 ハハ は さぞ おどろいた こと で あろう。
 ハハ は まだ もらった ばかり の ヨメ が カッテ に いた の を その セキ へ よんで ただ シタク が できた か と とうた。 ヨメ は すぐに たって、 カッテ から かねて ヨウイ して あった ハイバン を ジシン に はこんで でた。 ヨメ も ハハ と おなじ よう に、 オット が キョウ セップク する と いう こと を とうから しって いた。 カミ を きれい に なでつけて、 よい ブン の フダンギ に きかえて いる。 ハハ も ヨメ も あらたまった、 マジメ な カオ を して いる の は おなじ こと で ある が、 ただ ヨメ の メ の フチ が あかく なって いる ので、 カッテ に いた とき ないた こと が わかる。 ハイバン が でる と、 チョウジュウロウ は オトウト サヘイジ を よんだ。
 4 ニン は だまって サカズキ を とりかわした。 サカズキ が イチジュン した とき ハハ が いった。
「チョウジュウロウ や。 オマエ の すき な サケ じゃ。 すこし すごして は どう じゃ な」
「ほんに そう で ござりまする な」 と いって、 チョウジュウロウ は ビショウ を ふくんで、 ここちよげ に サカズキ を かさねた。
 しばらく して チョウジュウロウ が ハハ に いった。 「よい ココロモチ に よいました。 センジツ から かれこれ と ココロヅカイ を いたしました せい か、 イツモ より サケ が きいた よう で ござります。 ゴメン を こうむって ちょっと ヒトヤスミ いたしましょう」
 こう いって チョウジュウロウ は たって イマ に はいった が、 すぐに ヘヤ の マンナカ に ころがって、 イビキ を かきだした。 ニョウボウ が アト から そっと はいって マクラ を だして あてさせた とき、 チョウジュウロウ は 「ううん」 と うなって ネガエリ を した だけ で、 また イビキ を かきつづけて いる。 ニョウボウ は じっと オット の カオ を みて いた が、 たちまち あわてた よう に たって ヘヤ へ いった。 ないて は ならぬ と おもった の で ある。
 ウチ は ひっそり と して いる。 ちょうど シュジン の ケッシン を ハハ と ツマ と が いわず に しって いた よう に、 ケライ も ジョチュウ も しって いた ので、 カッテ から も ウマヤ の ほう から も ワライゴエ なぞ は きこえない。
 ハハ は ハハ の ヘヤ に、 ヨメ は ヨメ の ヘヤ に、 オトウト は オトウト の ヘヤ に、 じっと モノ を おもって いる。 シュジン は イマ で イビキ を かいて ねて いる。 あけはなって ある イマ の マド には、 シタ に フウリン を つけた ツリシノブ が つって ある。 その フウリン が おりおり おもいだした よう に かすか に なる。 その シタ には タケ の たかい イシ の イタダキ を ほりくぼめた チョウズバチ が ある。 その ウエ に ふせて ある マキモノ の ヒシャク に、 ヤンマ が 1 ピキ とまって、 ハネ を ヤマガタ に たれて うごかず に いる。
 ヒトトキ たつ。 フタトキ たつ。 もう ヒル を すぎた。 ショクジ の シタク は ジョチュウ に いいつけて ある が、 シュウトメ が たべる と いわれる か、 どう だ か わからぬ と おもって、 ヨメ は きき に ゆこう と おもいながら ためらって いた。 もし ジブン だけ が ショクジ の こと なぞ を おもう よう に とられ は すまい か と ためらって いた の で ある。
 その とき かねて カイシャク を たのまれて いた セキ コヘイジ が きた。 シュウトメ は ヨメ を よんだ。 ヨメ が だまって テ を ついて キゲン を うかがって いる と、 シュウトメ が いった。
「チョウジュウロウ は ちょっと ヒトヤスミ する と いうた が、 いかい トキ が たつ よう な。 ちょうど セキ ドノ も こられた。 もう おこして やって は どう じゃろう の」
「ほんに そう で ござります。 あまり おそく なりません ほう が」 ヨメ は こう いって、 すぐに たって オット を おこし に いった。
 オット の イマ に きた ニョウボウ は、 さきに マクラ を させた とき と おなじ よう に、 また じっと オット の カオ を みて いた。 しなせ に おこす の だ と おもう ので、 しばらく は コトバ を かけかねて いた の で ある。
 ジュクスイ して いて も、 ニワ から さす ヒル の アカリ が まばゆかった と みえて、 オット は マド の ほう を セ に して、 カオ を こっち へ むけて いる。
「もし、 アナタ」 と ニョウボウ は よんだ。
 チョウジュウロウ は メ を さまさない。
 ニョウボウ が すりよって、 そびえて いる カタ に テ を かける と、 チョウジュウロウ は 「あ、 ああ」 と いって ヒジ を のばして、 リョウガン を ひらいて、 むっくり おきた。
「たいそう よく おやすみ に なりました。 オフクロサマ が あまり おそく なり は せぬ か と おっしゃります から、 おおこし もうしました。 それに セキ サマ が おいで に なりました」
「そう か。 それでは ヒル に なった と みえる。 すこし の アイダ だ と おもった が、 よった の と ツカレ が あった の と で、 トキ の たつ の を しらず に いた。 そのかわり ひどく キブン が よう なった。 チャヅケ でも たべて、 そろそろ トウコウイン へ ゆかずば なるまい。 オカアサマ にも もうしあげて くれ」
 ブシ は いざ と いう とき には ホウショク は しない。 しかし また クウフク で タイセツ な こと に とりかかる こと も ない。 チョウジュウロウ は じっさい ちょっと ねよう と おもった の だ が、 おぼえず キモチ よく ねすごし、 ヒル に なった と きいた ので、 ショクジ を しよう と いった の で ある。 これから カタバカリ では ある が、 イッケ 4 ニン の モノ が フダン の よう に ゼン に むかって、 ヒル の ショクジ を した。
 チョウジュウロウ は こころしずか に シタク を して、 セキ を つれて ボダイショ トウコウイン へ ハラ を きり に いった。

 チョウジュウロウ が タダトシ の アシ を いただいて ねがった よう に、 ヘイゼイ オンコ を うけて いた カシン の ウチ で、 これ と ゼンゴ して おもいおもい に ジュンシ の ネガイ を して ゆるされた モノ が、 チョウジュウロウ を くわえて 18 ニン あった。 いずれ も タダトシ の ふかく シンライ して いた サムライ ども で ある。 だから タダトシ の ココロ では、 この ヒトビト を シソク ミツヒサ の ホゴ の ため に のこして おきたい こと は やまやま で あった。 また この ヒトビト を ジブン と イッショ に しなせる の が ザンコク だ とは じゅうぶん かんじて いた。 しかし カレラ ヒトリヒトリ に 「ゆるす」 と いう イチゴン を、 ミ を さく よう に おもいながら あたえた の は、 いきおい やむ こと を えなかった の で ある。
 ジブン の したしく つかって いた カレラ が、 イノチ を おしまぬ モノ で ある とは、 タダトシ は しんじて いる。 したがって ジュンシ を クツウ と せぬ こと も しって いる。 これ に はんして もし ジブン が ジュンシ を ゆるさず に おいて、 カレラ が いきながらえて いたら、 どう で あろう か。 カチュウ イチドウ は カレラ を しぬ べき とき に しなぬ モノ と し、 オンシラズ と し、 ヒキョウモノ と して ともに よわいせぬ で あろう。 それ だけ ならば、 カレラ も あるいは しのんで イノチ を ミツヒサ に ささげる とき の くる の を まつ かも しれない。 しかし その オンシラズ、 その ヒキョウモノ を それ と しらず に、 センダイ の シュジン が つかって いた の だ と いう モノ が あったら、 それ は カレラ の しのびえぬ こと で あろう。 カレラ は どんな に か くちおしい オモイ を する で あろう。 こう おもって みる と、 タダトシ は 「ゆるす」 と いわず には いられない。 そこで ビョウク にも ました せつない オモイ を しながら、 タダトシ は 「ゆるす」 と いった の で ある。
 ジュンシ を ゆるした カシン の カズ が 18 ニン に なった とき、 50 ヨネン の ひさしい アイダ チラン の ウチ に ミ を しょして、 ニンジョウ セイコ に あくまで つうじて いた タダトシ は ビョウク の ナカ にも、 つくづく ジブン の シ と 18 ニン の サムライ の シ と に ついて かんがえた。 ショウ ある もの は かならず めっする。 ロウボク の くちかれる ソバ で、 ワカギ は しげりさかえて ゆく。 チャクシ ミツヒサ の シュウイ に いる ワカモノ ども から みれば、 ジブン の ニンヨウ して いる トシヨリ ら は、 もう いなくて よい の で ある。 ジャマ にも なる の で ある。 ジブン は カレラ を いきながらえさせて、 ジブン に した と おなじ ホウコウ を ミツヒサ に させたい と おもう が、 その ホウコウ を ミツヒサ に する モノ は、 もう イクニン も できて いて、 テグスネ ひいて まって いる かも しれない。 ジブン の ニンヨウ した モノ は、 ネンライ ソレゾレ の ショクブン を つくして くる うち に、 ヒト の ウラミ をも かって いよう。 すくなくも ソネミ の マト に なって いる には ちがいない。 そうして みれば、 しいて カレラ に ながらえて いろ と いう の は、 ツウタツ した カンガエ では ない かも しれない。 ジュンシ を ゆるして やった の は ジヒ で あった かも しれない。 こう おもって タダトシ は タショウ の イシャ を えた よう な ココロモチ に なった。
 ジュンシ を ねがって ゆるされた 18 ニン は テラモト ハチザエモン ナオツグ、 オオツカ キヘエ タネツグ、 ナイトウ チョウジュウロウ モトツグ、 オオタ コジュウロウ マサノブ、 ハラダ ジュウジロウ ユキナオ、 ムナカタ カヘエ カゲサダ、 ドウ キチダユウ カゲヨシ、 ハシタニ イチゾウ シゲツグ、 イハラ ジュウザブロウ ヨシマサ、 タナカ イトク、 ホンジョウ キスケ シゲマサ、 イトウ タザエモン マサタカ、 ミギタ イナバ ムネヤス、 ノダ キヘエ シゲツナ、 ツザキ ゴスケ ナガスエ、 コバヤシ リエモン ユキヒデ、 ハヤシ ヨザエモン マササダ、 ミヤナガ カツザエモン ムネスケ の ヒトビト で ある。

 テラモト が センゾ は オワリ ノ クニ テラモト に すんで いた テラモト タロウ と いう モノ で あった。 タロウ の コ ナイゼンノショウ は イマガワ-ケ に つかえた。 ナイゼンノショウ の コ が サヘエ、 サヘエ の コ が ウエモンノスケ、 ウエモンノスケ の コ が ヨザエモン で、 ヨザエモン は チョウセン セイバツ の とき、 カトウ ヨシアキ に ぞくして コウ が あった。 ヨザエモン の コ が ハチザエモン で、 オオサカ ロウジョウ の とき、 ゴトウ モトツグ の シタ で はたらいた こと が ある。 ホソカワ-ケ に めしかかえられて から、 1000 ゴク とって、 テッポウ 50 チョウ の カシラ に なって いた。 4 ガツ 29 ニチ に アンヨウジ で セップク した。 53 サイ で ある。 フジモト イザエモン が カイシャク した。 オオツカ は 150 コク-ドリ の ヨコメヤク で ある。 4 ガツ 26 ニチ に セップク した。 カイシャク は イケダ ハチザエモン で あった。 ナイトウ が こと は マエ に いった。 オオタ は ソフ デンザエモン が カトウ キヨマサ に つかえて いた。 タダヒロ が ホウ を のぞかれた とき、 デンザエモン と その コ の ゲンザエモン と が ルロウ した。 コジュウロウ は ゲンザエモン の ジナン で コゴショウ に めしだされた モノ で ある。 150 コク とって いた。 ジュンシ の セントウ は この ヒト で、 3 ガツ 17 ニチ に カスガデラ で セップク した。 18 サイ で ある。 カイシャク は モジ ゲンベエ が した。 ハラダ は 150 コク-ドリ で、 オソバ に つとめて いた。 4 ガツ 26 ニチ に セップク した。 カイシャク は カマダ ゲンダユウ が した。 ムナカタ カヘエ、 ドウ キチダユウ の キョウダイ は、 ムナカタ チュウナゴン ウジサダ の コウエイ で、 オヤ セイベエ カゲノブ の ダイ に めしだされた。 キョウダイ いずれ も 200 コク-ドリ で ある。 5 ガツ フツカ に アニ は リュウチョウイン、 オトウト は レンショウジ で セップク した。 アニ の カイシャク は タカダ ジュウベエ、 オトウト の は ムラカミ イチエモン が した。 ハシタニ は イズモ ノ クニ の ヒト で、 アマコ の バツリュウ で ある。 14 サイ の とき タダトシ に めしだされて、 チギョウ 100 コク の ソバヤク を つとめ、 ショクジ の ドクミ を して いた。 タダトシ は ヤマイ が おもく なって から、 ハシタニ の ヒザ を マクラ に して ねた こと も ある。 4 ガツ 26 ニチ に セイガンジ で セップク した。 ちょうど ハラ を きろう と する と、 シロ の タイコ が かすか に きこえた。 ハシタニ は ついて きて いた ケライ に、 ソト へ でて ナンドキ か きいて こい と いった。 ケライ は かえって、 「シマイ の ヨツ だけ は ききました が、 ソウタイ の バチカズ は わかりません」 と いった。 ハシタニ を ハジメ と して、 イチザ の モノ が ほほえんだ。 ハシタニ は 「サイゴ に よう わらわせて くれた」 と いって、 ケライ に ハオリ を とらせて セップク した。 ヨシムラ ジンダユウ が カイシャク した。 イハラ は キリマイ 3 ニン フチ 10 コク を とって いた。 セップク した とき アベ ヤイチエモン の ケライ ハヤシ サヘエ が カイシャク した。 タナカ は オキク モノガタリ を ヨ に のこした オキク が マゴ で、 タダトシ が アタゴ-サン へ ガクモン に いった とき の オサナトモダチ で あった。 タダトシ が その コロ シュッケ しよう と した の を、 ひそか に いさめた こと が ある。 ノチ に チギョウ 200 コク の ソバヤク を つとめ、 サンジュツ が タッシャ で ヨウ に たった。 ロウネン に なって から は、 クンゼン で ズキン を かむった まま アンザ する こと を ゆるされて いた。 トウダイ に オイバラ を ねがって も ゆるされぬ ので、 6 ガツ 19 ニチ に コワキザシ を ハラ に つきたてて から ガンショ を だして、 とうとう ゆるされた。 カトウ ヤスダユウ が カイシャク した。 ホンジョウ は タンゴ ノ クニ の モノ で、 ルロウ して いた の を サンサイ-コウ の ヘヤヅキ ホンジョウ キュウエモン が めしつかって いた。 ナカツ で ロウゼキモノ を とりおさえて、 5 ニン フチ 15 コク の キリマイトリ に せられた。 ホンジョウ を なのった の も その とき から で ある。 4 ガツ 26 ニチ に セップク した。 イトウ は オクオナンドヤク を つとめた キリマイトリ で ある。 4 ガツ 26 ニチ に セップク した。 カイシャク は カワキタ ハチスケ が した。 ミギタ は オオトモ-ケ の ロウニン で、 タダトシ に チギョウ 100 コク で めしかかえられた。 4 ガツ 27 ニチ に ジタク で セップク した。 64 サイ で ある。 マツノ ウキョウ の ケライ タハラ カンベエ が カイシャク した。 ノダ は アマクサ の カロウ ノダ ミノ の セガレ で、 キリマイトリ に めしだされた。 4 ガツ 26 ニチ に ゲンカクジ で セップク した。 カイシャク は エラ ハンエモン が した。 ツザキ の こと は ベツ に かく。 コバヤシ は 2 ニン フチ 10 コク の キリマイトリ で ある。 セップク の とき、 タカノ カンエモン が カイシャク した。 ハヤシ は ナンゴウ シモダ ムラ の ヒャクショウ で あった の を、 タダトシ が 10 ニン フチ 15 コク に めしだして、 ハナバタケ の ヤカタ の ニワカタ に した。 4 ガツ 26 ニチ に ブツガンジ で セップク した。 カイシャク は ナカミツ ハンスケ が した。 ミヤナガ は 2 ニン フチ 10 コク の ダイドコロ ヤクニン で、 センダイ に ジュンシ を ねがった サイショ の オトコ で あった。 4 ガツ 26 ニチ に ジョウショウジ で セップク した。 カイシャク は ヨシムラ カエモン が した。 この ヒトビト の ナカ には ソレゾレ の イエ の ボダイショ に ほうむられた の も ある が、 また コウライモン-ガイ の サンチュウ に ある オタマヤ の ソバ に ほうむられた の も ある。
 キリマイトリ の ジュンシシャ は わりに タニンズ で あった が、 なかにも ツザキ ゴスケ の ジセキ は、 きわだって おもしろい から ベツ に かく こと に する。
 ゴスケ は 2 ニン フチ 6 コク の キリマイトリ で、 タダトシ の イヌヒキ で ある。 いつも タカガリ の トモ を して ノカタ で タダトシ の キ に いって いた。 シュクン に ねだる よう に して、 ジュンシ の オユルシ は うけた が、 カロウ たち は ミナ いった。 「ホカ の カタガタ は コウロク を たまわって、 エヨウ を した のに、 ソチ は トノサマ の オイヌヒキ では ない か。 ソチ が ココロザシ は シュショウ で、 トノサマ の オユルシ が でた の は、 コノウエ も ない ホマレ じゃ。 もう それ で よい。 どうぞ しぬる こと だけ は おもいとまって、 ゴトウシュ に ゴホウコウ して くれい」 と いった。
 ゴスケ は どうしても きかず に、 5 ガツ ナヌカ に いつも ひいて オトモ を した イヌ を つれて、 オイマワシ タハタ の コウリンジ へ でかけた。 ニョウボウ は トグチ まで ミオクリ に でて、 「オマエ も オトコ じゃ、 オレキレキ の シュウ に まけぬ よう に おし なされい」 と いった。
 ツザキ の イエ では オウジョウイン を ボダイショ に して いた が、 オウジョウイン は カミ の ゴユイショ の ある オテラ だ と いう ので はばかって、 コウリンジ を シニドコロ と きめた の で ある。 ゴスケ が ボチ に はいって みる と、 かねて カイシャク を たのんで おいた マツノ ヌイノスケ が サキ に きて まって いた。 ゴスケ は カタ に かけた アサギ の フクロ を おろして その ナカ から メシコウリ を だした。 フタ を あける と ニギリメシ が フタツ はいって いる。 それ を イヌ の マエ に おいた。 イヌ は すぐに くおう とも せず、 オ を ふって ゴスケ の カオ を みて いた。 ゴスケ は ニンゲン に いう よう に イヌ に いった。
「オヌシ は チクショウ じゃ から、 しらず に おる かも しれぬ が、 オヌシ の アタマ を さすって くだされた こと の ある トノサマ は、 もう おなくなり あそばされた。 それで ゴオン に なって いなされた オレキレキ は ミナ キョウ ハラ を きって オトモ を なさる。 オレ は ゲス では ある が、 ゴフチ を いただいて つないだ イノチ は オレキレキ と かわった こと は ない。 トノサマ に かわいがって いただいた アリガタサ も おなじ こと じゃ。 それで オレ は イマ ハラ を きって しぬる の じゃ。 オレ が しんで しもうたら、 オヌシ は イマ から ノライヌ に なる の じゃ。 オレ は それ が かわいそう で ならん。 トノサマ の オトモ を した タカ は シュウウンイン で イド に とびこんで しんだ。 どう じゃ。 オヌシ も オレ と イッショ に しのう とは おもわん かい。 もし ノライヌ に なって も、 いきて いたい と おもうたら、 この ニギリメシ を くって くれい。 しにたい と おもう なら、 くうな よ」
 こう いって イヌ の カオ を みて いた が、 イヌ は ゴスケ の カオ ばかり を みて いて、 ニギリメシ を くおう とは しない。
「それなら オヌシ も しぬる か」 と いって、 ゴスケ は イヌ を きっと みつめた。
 イヌ は ヒトコエ ないて オ を ふった。
「よい。 そんなら フビン じゃ が しんで くれい」 こう いって ゴスケ は イヌ を だきよせて、 ワキザシ を ぬいて、 イットウ に さした。
 ゴスケ は イヌ の シガイ を カタワラ へ おいた。 そして カイチュウ から 1 マイ の カキモノ を だして、 それ を マエ に ひろげて、 コイシ を オモリ に して おいた。 タレ やら の ヤシキ で ウタ の カイ の あった とき みおぼえた とおり に ハンシ を ヨコ に フタツ に おって、 「カロウシュウ は とまれ とまれ と オオセ あれど とめて とまらぬ この ゴスケ かな」 と、 ツネ の エイソウ の よう に かいて ある。 ショメイ は して ない。 ウタ の ナカ に ゴスケ と して ある から、 ニジュウ に ナ を かかなくて も よい と、 すなお に かんがえた の が、 シゼン に コジツ に かなって いた。
 もう これ で なにも テオチ は ない と おもった ゴスケ は 「マツノ サマ、 おたのみ もうします」 と いって、 アンザ して ハダ を くつろげた。 そして イヌ の チ の ついた まま の ワキザシ を サカテ に もって、 「オタカジョウシュウ は どう なさりました な、 オイヌヒキ は ただいま まいります ぞ」 と タカゴエ に いって、 ヒトコエ こころよげ に わらって、 ハラ を ジュウモンジ に きった。 マツノ が ウシロ から クビ を うった。
 ゴスケ は ミブン の かるい モノ では ある が、 ノチ に ジュンシシャ の イゾク の うけた ほど の テアテ は、 アト に のこった ゴケ が うけた。 ダンシ 1 ニン は ちいさい とき シュッケ して いた から で ある。 ゴケ は 5 ニン フチ を もらい、 あらた に イエヤシキ を もらって、 タダトシ の サンジュウサン カイキ の とき まで ゾンメイ して いた。 ゴスケ の オイ の コ が 2 ダイ の ゴスケ に なって、 それから は ダイダイ フレグミ で ホウコウ して いた。

 タダトシ の ユルシ を えて ジュンシ した 18 ニン の ホカ に、 アベ ヤイチエモン ミチノブ と いう モノ が あった。 ハジメ は アカシ ウジ で、 ヨウミョウ を イノスケ と いった。 はやく から タダトシ の ソバ ちかく つかえて、 1100 コク-ヨ の ミブン に なって いる。 シマバラ セイバツ の とき、 コドモ 5 ニン の ウチ 3 ニン まで グンコウ に よって シンチ 200 コク ずつ を もらった。 この ヤイチエモン は カチュウ でも ジュンシ する はず の よう に おもい、 トウニン も また タダトシ の ヨトギ に でる ジュンバン が くる たび に、 ジュンシ したい と いって ねがった。 しかし どうしても タダトシ が ゆるさない。
「ソチ が ココロザシ は マンゾク に おもう が、 それ より は いきて いて ミツヒサ に ホウコウ して くれい」 と、 ナンド ねがって も、 おなじ こと を くりかえして いう の で ある。
 いったい タダトシ は ヤイチエモン の いう こと を きかぬ クセ が ついて いる。 これ は よほど ふるく から の こと で、 まだ イノスケ と いって コショウ を つとめて いた コロ も、 イノスケ が 「ゴゼン を さしあげましょう か」 と うかがう と、 「まだ クウフク には ならぬ」 と いう。 ホカ の コショウ が もうしあげる と、 「よい、 ださせい」 と いう。 タダトシ は この オトコ の カオ を みる と、 ハンタイ したく なる の で ある。 そんなら しかられる か と いう と、 そう でも ない。 この オトコ ほど セイキン を する モノ は なく、 バンジ に キ が ついて、 テヌカリ が ない から、 しかろう と いって も シカリヨウ が ない。
 ヤイチエモン は ホカ の ヒト の いいつけられて する こと を、 いいつけられず に する。 ホカ の ヒト の もうしあげて する こと を もうしあげず に する。 しかし する こと は いつも コウケイ に あたって いて、 カンゼン す べき ところ が ない。 ヤイチエモン は イジ ばかり で ホウコウ して ゆく よう に なって いる。 タダトシ は はじめ なんとも おもわず に、 ただ この オトコ の カオ を みる と、 ハンタイ したく なった の だ が、 ノチ には この オトコ の イジ で つとめる の を しって にくい と おもった。 にくい と おもいながら、 ソウメイ な タダトシ は なぜ ヤイチエモン が そう なった か と カイソウ して みて、 それ は ジブン が しむけた の だ と いう こと に キ が ついた。 そして ジブン の ハンタイ する クセ を あらためよう と おもって いながら、 ツキ が かさなり トシ が かさなる に したがって、 それ が しだいに あらためにくく なった。
 ヒト には タ が ウエ にも すき な ヒト、 いや な ヒト と いう もの が ある。 そして なぜ すき だ か、 いや だ か と センサク して みる と、 どうか する と ホソク する ほど の ヨリドコロ が ない。 タダトシ が ヤイチエモン を すかぬ の も、 そんな ワケ で ある。 しかし ヤイチエモン と いう オトコ は どこ か に ヒト と したしみがたい ところ を もって いる に ちがいない。 それ は したしい トモダチ の すくない の で わかる。 タレ でも リッパ な サムライ と して ソンケイ は する。 しかし たやすく ちかづこう と こころみる モノ が ない。 まれ に モノズキ に ちかづこう と こころみる モノ が あって も、 しばらく する うち に コンキ が つづかなく なって とおざかって しまう。 まだ イノスケ と いって、 マエガミ の あった とき、 たびたび ハナシ を しかけたり、 ナニカ に テ を かして やったり して いた トシウエ の オトコ が、 「どうも アベ には つけいる ヒマ が ない」 と いって ガ を おった。 そこら を かんがえて みる と、 タダトシ が ジブン の クセ を あらためたく おもいながら あらためる こと の できなかった の も あやしむ に たりない。
 とにかく ヤイチエモン は ナンド ねがって も ジュンシ の ユルシ を えない で いる うち に、 タダトシ は なくなった。 なくなる すこし マエ に、 「ヤイチエモン め は オネガイ と もうす こと を もうした こと は ござりません、 これ が ショウガイ ユイイツ の オネガイ で ござります」 と いって、 じっと タダトシ の カオ を みて いた が、 タダトシ も じっと カオ を みかえして、 「いや、 どうぞ ミツヒサ に ホウコウ して くれい」 と いいはなった。
 ヤイチエモン は つくづく かんがえて ケッシン した。 ジブン の ミブン で、 この バアイ に ジュンシ せず に いきのこって、 カチュウ の モノ に カオ を あわせて いる と いう こと は、 100 ニン が 100 ニン しょせん できぬ こと と おもう だろう。 イヌジニ と しって セップク する か、 ロウニン して クマモト を さる か の ホカ、 シカタ が あるまい。 だが オレ は オレ だ。 よい わ。 ブシ は メカケ とは ちがう。 シュウ の キ に いらぬ から と いって、 タチバ が なくなる はず は ない。 こう おもって イチニチ イチニチ と レイ の ごとく に つとめて いた。
 その うち に 5 ガツ ムイカ が きて、 18 ニン の モノ が ミナ ジュンシ した。 クマモト-ジュウ ただ その ウワサ ばかり で ある。 タレ は なんと いって しんだ、 タレ の シニヨウ が タレ より も ミゴト で あった と いう ハナシ の ホカ には、 なんの ハナシ も ない。 ヤイチエモン は イゼン から ヒト に ヨウジ の ホカ の ハナシ を しかけられた こと は すくなかった が、 5 ガツ ナヌカ から こっち は、 ゴテン の ツメショ に でて いて みて も、 いっそう さびしい。 それに アイヤク が ジブン の カオ を みぬ よう に して みる の が わかる。 そっと ヨコ から みたり、 ウシロ から みたり する の が わかる。 フカイ で たまらない。 それでも オレ は イノチ が おしくて いきて いる の では ない、 オレ を どれほど わるく おもう ヒト でも、 イノチ を おしむ オトコ だ とは まさかに いう こと が できまい、 タッタイマ でも しんで よい の なら しんで みせる と おもう ので、 こうぜん と ウナジ を そらして ツメショ へ でて、 こうぜん と ウナジ を そらして ツメショ から ひいて いた。
 2~3 ニチ たつ と、 ヤイチエモン が ミミ に けしからん ウワサ が きこえだして きた。 タレ が いいだした こと か しらぬ が、 「アベ は オユルシ の ない を サイワイ に いきて いる と みえる、 オユルシ は のうて も オイバラ は きられぬ はず が ない、 アベ の ハラ の カワ は ヒト とは ちがう と みえる、 ヒョウタン に アブラ でも ぬって きれば よい に」 と いう の で ある。 ヤイチエモン は きいて おもいのほか の こと に おもった。 ワルクチ が いいたくば なんとも いう が よい。 しかし この ヤイチエモン を タテ から みて も ヨコ から みて も、 イノチ の おしい オトコ とは、 どうして みえよう ぞ。 げに いえば いわれた もの かな。 よい わ。 そんなら この ハラ の カワ を ヒョウタン に アブラ を ぬって きって みしょう。
 ヤイチエモン は その ヒ ツメショ を ひく と、 キュウシ を もって ベッケ して いる オトウト フタリ を ヤマザキ の ヤシキ に よびよせた。 イマ と キャクマ との アイダ の タテグ を はずさせ、 チャクシ ゴンベエ、 ジナン ヤゴベエ、 ツギ に まだ マエガミ の ある ゴナン シチノジョウ の 3 ニン を ソバ に おらせて、 シュジン は イギ を ただして まちうけて いる。 ゴンベエ は ヨウミョウ ゴンジュウロウ と いって、 シマバラ セイバツ に リッパ な ハタラキ を して、 シンチ 200 コク を もらって いる。 チチ に おとらぬ ワカモノ で ある。 コノタビ の こと に ついて は、 ただ イチド チチ に 「オユルシ は でませなんだ か」 と とうた。 チチ は 「うん、 でん ぞ」 と いった。 その ホカ フタリ の アイダ には なんの コトバ も かわされなかった。 オヤコ は ココロ の ソコ まで しりぬいて いる ので、 なにも いう には およばぬ の で あった。
 まもなく フタハリ の チョウチン が モン の ウチ に はいった。 サンナン イチダユウ、 ヨナン ゴダユウ の フタリ が ほとんど ドウジ に ゲンカン に きて、 アマグ を ぬいで ザシキ に とおった。 チュウイン の ヨクジツ から じめじめ と した アメ に なって、 サツキヤミ の ソラ が はれず に いる の で ある。
 ショウジ は あけはなして あって も、 むしあつくて カゼ が ない。 そのくせ ショクダイ の ヒ は ゆらめいて いる。 ホタル が 1 ピキ ニワ の コダチ を ぬって とおりすぎた。
 イチザ を みわたした シュジン が クチ を ひらいた。 「ヤイン に よび に やった のに、 ミナ よう きて くれた。 カチュウ イッパン の ウワサ じゃ と いう から、 オヌシタチ も きいた に ちがいない。 この ヤイチエモン が ハラ は ヒョウタン に アブラ を ぬって きる ハラ じゃ そう な。 それ じゃ に よって、 オレ は イマ ヒョウタン に アブラ を ぬって きろう と おもう。 どうぞ ミナ で みとどけて くれい」
 イチダユウ も ゴダユウ も シマバラ の グンコウ で シンチ 200 コク を もらって ベッケ して いる が、 なかにも イチダユウ は はやく から ワカトノヅキ に なって いた ので、 ゴダイガワリ に なって ヒト に うらやまれる 1 ニン で ある。 イチダユウ が ヒザ を すすめた。 「なるほど。 よう わかりました。 じつは ホウバイ が いう には、 ヤイチエモン ドノ は ゴセンダイ の ゴユイゴン で つづいて ゴホウコウ なさる そう な。 オヤコ キョウダイ あいかわらず そろうて おつとめ なさる、 めでたい こと じゃ と いう の で ござります。 その コトバ が ナニ か イミ ありげ で はがゆう ござりました」
 チチ ヤイチエモン は わらった。 「そう で あろう。 メ の サキ ばかり みえる チカメ ども を アイテ に するな。 そこで その しなぬ はず の オレ が しんだら、 オユルシ の なかった オレ の コ じゃ と いうて、 オヌシタチ を あなどる モノ も あろう。 オレ の コ に うまれた の は ウン じゃ。 ショウコト が ない。 ハジ を うける とき は イッショ に うけい。 キョウダイ-ゲンカ を するな よ。 さあ、 ヒョウタン で ハラ を きる の を よう みて おけ」
 こう いって おいて、 ヤイチエモン は コドモ ら の メンゼン で セップク して、 ジブン で クビスジ を ヒダリ から ミギ へ さしつらぬいて しんだ。 チチ の ココロ を はかりかねて いた 5 ニン の コドモ ら は、 この とき かなしく は あった が、 それ と ドウジ に これまで の フアンシン な キョウガイ を イッポ はなれて、 オモニ の ヒトツ を おろした よう に かんじた。
「アニキ」 と ジナン ヤゴベエ が チャクシ に いった。 「キョウダイ-ゲンカ を するな と、 オトッサン は いいおいた。 それ には タレ も イゾン は あるまい。 オレ は シマバラ で モチバ が わるうて、 チギョウ も もらわず に いる から、 これから は オヌシ が ヤッカイ に なる じゃろう。 じゃが ナニゴト が あって も、 オヌシ が テ に たしか な ヤリ 1 ポン は ある と いう もの じゃ。 そう おもうて いて くれい」
「しれた こと じゃ。 どう なる こと か しれぬ が、 オレ が もらう チギョウ は オヌシ が もらう も おなじ じゃ」 こう いった ぎり ゴンベエ は ウデグミ を して カオ を しかめた。
「そう じゃ。 どう なる こと か しれぬ。 オイバラ は オユルシ の でた ジュンシ とは ちがう なぞ と いう ヤツ が あろう て」 こう いった の は ヨナン の ゴダユウ で ある。
「それ は メ に みえて おる。 どういう メ に おうて も」 こう いいさして サンナン イチダユウ は ゴンベエ の カオ を みた。 「どういう メ に おうて も、 キョウダイ ハナレバナレ に アイテ に ならず に、 かたまって ゆこう ぞ」
「うん」 と ゴンベエ は いった が、 うちとけた ヨウス も ない。 ゴンベエ は オトウト ども を ココロ に いたわって は いる が、 やさしく モノ を いわれぬ オトコ で ある。 それに ナニゴト も ヒトリ で かんがえて、 ヒトリ で したがる。 ソウダン と いう もの を めった に しない。 それで ヤゴベエ も イチダユウ も ネン を おした の で ある。
「ニイサマ がた が そろうて おいで なさる から、 オトッサン の ワルクチ は、 うかと いわれますまい」 これ は マエガミ の シチノジョウ が クチ から でた。 オンナ の よう な コエ では あった が、 それ に つよい シンネン が こもって いた ので、 イチザ の モノ の ムネ を、 アンコク な ゼント を てらす コウミョウ の よう に てらした。
「どりゃ。 オッカサン に いうて、 オナゴ たち に イトマゴイ を さしょう か」 こう いって ゴンベエ が セキ を たった。

 ジュ-シイ ノ ゲ ジジュウ ケン ヒゴ ノ カミ ミツヒサ の カトク ソウゾク が すんだ。 カシン には それぞれ シンチ、 カゾウ、 ヤクガエ など が あった。 なかにも ジュンシ の サムライ 18 ニン の イエイエ は、 チャクシ に そのまま チチ の アト を つがせられた。 チャクシ の ある カギリ は、 いかに ヨウショウ でも その カズ には もれない。 ビボウジン、 ロウフボ には フチ が あたえられる。 イエヤシキ を ハイリョウ して、 サクジ まで も カミ から しむけられる。 センダイ が かくべつ ジッコン に せられた イエガラ で、 シデ の タビ の オトモ に さえ たった の だ から、 カチュウ の モノ が うらやみ は して も ねたみ は しない。
 しかるに イッシュ かわった アトメ の ショブン を うけた の は、 アベ ヤイチエモン の イゾク で ある。 チャクシ ゴンベエ は チチ の アト を そのまま つぐ こと が できず に、 ヤイチエモン が 1500 コク の チギョウ は こまか に さいて オトウト たち へも ハイブン せられた。 イチゾク の チギョウ を あわせて みれば、 マエ に かわった こと は ない が、 ホンケ を ついだ ゴンベエ は、 ショウシンモノ に なった の で ある。 ゴンベエ の カタハバ の せまく なった こと は いう まで も ない。 オトウト ども も ヒトリヒトリ の チギョウ は ふえながら、 これまで 1000 ゴク イジョウ の ホンケ に よって、 タイボク の カゲ に たって いる よう に おもって いた の が、 イマ は ドングリ の セイクラベ に なって、 ありがたい よう で メイワク な オモイ を した。
 セイドウ は ジミチ で ある カギリ は、 トガメ の きする ところ を とう モノ は ない。 いったん ツネ に かわった ショチ が ある と、 タレ の サバキ か と いう センギ が おこる。 トウシュ の オオボエ めでたく、 オソバ さらず に つとめて いる オオメツケヤク に、 ハヤシ ゲキ と いう モノ が ある。 コサイカク が ある ので、 ワカトノサマ ジダイ の オトギ には ソウオウ して いた が、 モノ の ダイタイ を みる こと に おいて は およばぬ ところ が あって、 とかく カサツ に かたむきたがる オトコ で あった。 アベ ヤイチエモン は コ-トノサマ の オユルシ を えず に しんだ の だ から、 シン の ジュンシシャ と ヤイチエモン との アイダ には キョウカイ を つけなくて は ならぬ と かんがえた。 そこで アベ-ケ の ホウロク ブンカツ の サク を けんじた。 ミツヒサ も シリョ ある ダイミョウ では あった が、 まだ ものなれぬ とき の こと で、 ヤイチエモン や チャクシ ゴンベエ と コンイ で ない ため に、 オモイヤリ が なく、 ジブン の テモト に つかって ナジミ の ある イチダユウ が ため に カゾウ に なる と いう ところ に メ を つけて、 ゲキ の ゲン を もちいた の で ある。
 18 ニン の サムライ が ジュンシ した とき には、 ヤイチエモン は オソバ に ホウコウ して いた のに ジュンシ しない と いって、 カチュウ の モノ が いやしんだ。 さて わずか に 2~3 ニチ を へだてて ヤイチエモン は リッパ に セップク した が、 コト の トウヒ は おいて、 いったん うけた ブジョク は ヨウイ に きえがたく、 タレ も ヤイチエモン を ほめる モノ が ない。 カミ では ヤイチエモン の イガイ を オタマヤ の カタワラ に ほうむる こと を ゆるした の で ある から、 アトメ ソウゾク の ウエ にも しいて キョウカイ を たてず に おいて、 ジュンシシャ イチドウ と おなじ アツカイ を して よかった の で ある。 そうした なら アベ イチゾク は メンボク を ほどこして、 こぞって チュウキン を はげんだ の で あろう。 しかるに カミ で イチダン さがった アツカイ を した ので、 カチュウ の モノ の アベ-ケ ブベツ の ネン が オオヤケ に みとめられた カタチ に なった。 ゴンベエ キョウダイ は しだいに ホウバイ に うとんぜられて、 おうおう と して ヒ を おくった。
 カンエイ 19 ネン 3 ガツ 17 ニチ に なった。 センダイ の トノサマ の イッシュウキ で ある。 オタマヤ の ソバ には まだ ミョウゲジ は できて いぬ が、 コウヨウイン と いう ドウウ が たって、 そこ に ミョウゲ インデン の イハイ が アンチ せられ、 キョウシュザ と いう ソウ が ジュウジ して いる。 キニチ に さきだって、 ムラサキノ ダイトクジ の テンユウ オショウ が キョウト から ゲコウ する。 ネンキ の イトナミ は はればれしい もの に なる らしく、 1 カゲツ ばかり マエ から、 クマモト の ジョウカ は ジュンビ に いそがしかった。
 いよいよ トウジツ に なった。 うららか な ヒヨリ で、 オタマヤ の ソバ は サクラ の サカリ で ある。 コウヨウイン の シュウイ には マク を ひきまわして、 ホソツ が ケイゴ して いる。 トウシュ が みずから リンジョウ して、 まず センダイ の イハイ に ショウコウ し、 ついで ジュンシシャ 19 ニン の イハイ に ショウコウ する。 それから ジュンシシャ イゾク が ゆるされて ショウコウ する。 ドウジ に ゴモンツキ カミシモ、 ドウ ジフク を ハイリョウ する。 ウママワリ イジョウ は ナガガミシモ、 カチ は ハンガミシモ で ある。 シモジモ の モノ は ゴコウデン を ハイリョウ する。
 ギシキ は トドコオリ なく すんだ が、 その アイダ に ただ ヒトツ の チンジ が シュッタイ した。 それ は アベ ゴンベエ が ジュンシシャ イゾク の 1 ニン と して、 セキジュン に よって ミョウゲ インデン の イハイ の マエ に すすんだ とき、 ショウコウ を して ノキシナ に、 ワキザシ の コヅカ を ぬきとって モトドリ を おしきって、 イハイ の マエ に そなえた こと で ある。 この バ に つめて いた サムライ ども も、 フイ の デキゴト に おどろきあきれて、 ぼうぜん と して みて いた が、 ゴンベエ が ナニゴト も ない よう に、 じじゃく と して 5~6 ポ しりぞいた とき、 ヒトリ の サムライ が ようよう ワレ に かえって、 「アベ ドノ、 おまち なされい」 と よびかけながら、 おいすがって おしとどめた。 つづいて 2~3 ニン たちかかって、 ゴンベエ を ベツマ に つれて はいった。
 ゴンベエ が ツメシュウ に たずねられて こたえた ところ は こう で ある。 キデン ら は ソレガシ を ランシンモノ の よう に おもわれる で あろう が、 まったく さよう な わけ では ない。 チチ ヤイチエモン は イッショウ カキン の ない ゴホウコウ を いたしたれば こそ、 コ-トノサマ の オユルシ を えず に セップク して も、 ジュンシシャ の レツ に くわえられ、 イゾク たる ソレガシ さえ タニン に さきだって ゴイハイ に ゴショウコウ いたす こと が できた の で ある。 しかし ソレガシ は フショウ に して チチ ドウヨウ の ゴホウコウ が なりがたい の を、 カミ にも ゴショウチ と みえて、 チギョウ を さいて オトウト ども に おつかわし なされた。 ソレガシ は コ-トノサマ にも ゴトウシュ にも なき チチ にも イチゾク の モノドモ にも ホウバイ にも メンボク が ない。 かよう に ぞんじて いる うち、 コンニチ ゴイハイ に ゴショウコウ いたす バアイ に なり、 トッサ の カン、 カンガイ ムネ に せまり、 いっそ の こと ブシ を すてよう と ケッシン いたした。 オバショガラ を かえりみざる オトガメ は あまんじて うける。 ランシン など は いたさぬ と いう の で ある。
 ゴンベエ の コタエ を ミツヒサ は きいて、 フカイ に おもった。 ダイイチ に ゴンベエ が ジブン に つらあてがましい ショギョウ を した の が フカイ で ある。 ツギ に ジブン が ゲキ の サク を いれて、 しなくて も よい こと を した の が フカイ で ある。 まだ 24 サイ の ケッキ の トノサマ で、 ジョウ を おさえ ヨク を せいする こと が たりない。 オン を もって ウラミ に むくいる カンダイ の ココロモチ に とぼしい。 ソクザ に ゴンベエ を おしこめさせた。 それ を きいた ヤゴベエ イカ イチゾク の モノ は モン を とじて カミ の ゴサタ を まつ こと に して、 ヤイン に イチドウ よりあって は、 ひそか に イチゾク の ゼント の ため に ヒョウギ を こらした。
 アベ イチゾク は ヒョウギ の スエ、 このたび センダイ イッシュウキ の ホウエ の ため に ゲコウ して、 まだ トウリュウ して いる テンユウ オショウ に すがる こと に した。 イチダユウ は オショウ の リョカン に いって イチブ シジュウ を はなして、 ゴンベエ に たいする カミ の ショチ を ケイゲン して もらう よう に たのんだ。 オショウ は つくづく きいて いった。 うけたまわれば ゴイッカ の オナリユキ キノドク センバン で ある。 しかし カミ の ゴセイドウ に たいして かれこれ いう こと は できない。 ただ ゴンベエ ドノ に シ を たまわる と なったら、 きっと ゴジョメイ を ねがって しんぜよう。 ことに ゴンベエ ドノ は すでに モトドリ を はらわれて みれば、 ソウモン ドウヨウ の ミノウエ で ある。 ゴジョメイ だけ は いかよう にも もうして みよう と いった。 イチダユウ は たのもしく おもって かえった。 イチゾク の モノ は イチダユウ の フクメイ を きいて、 イチジョウ の カツロ を えた よう な キ が した。 そのうち ヒ が たって、 テンユウ オショウ の キキョウ の とき が しだいに ちかづいて きた。 オショウ は トノサマ に あって ハナシ を する たび に、 アベ ゴンベエ が ジョメイ の こと を オリ が あったら ゴンジョウ しよう と おもった が、 どうしても オリ が ない。 それ は その はず で ある。 ミツヒサ は こう おもった の で ある。 テンユウ オショウ の トウリュウチュウ に ゴンベエ の こと を サタ したら きっと ジョメイ を こわれる に ちがいない。 オオデラ の オショウ の コトバ で みれば、 なおざり に ききすてる こと は なるまい。 オショウ の たつ の を まって ショチ しよう と おもった の で ある。 とうとう オショウ は むなしく クマモト を たって しまった。

 テンユウ オショウ が クマモト を たつ や いなや、 ミツヒサ は すぐに アベ ゴンベエ を イデノクチ に ひきいだして シバリクビ に させた。 センダイ の ゴイハイ に たいして フケイ な こと を あえて した、 カミ を おそれぬ ショギョウ と して ショチ せられた の で ある。
 ヤゴベエ イカ イチドウ の モノ は よりあつまって ヒョウギ した。 ゴンベエ の ショギョウ は フラチ には ちがいない。 しかし ボウフ ヤイチエモン は とにかく ジュンシシャ の ウチ に かぞえられて いる。 その ソウゾクニン たる ゴンベエ で みれば、 シ を たまう こと は ゼヒ が ない。 ブシ-らしく セップク おおせつけられれば イゾン は ない。 それに ナニゴト ぞ、 カントウ か なんぞ の よう に、 ハクチュウ に シバリクビ に せられた。 この ヨウス で すいすれば、 イチゾク の モノ も アンノン には さしおかれまい。 たとい べつに ゴサタ が ない に して も、 シバリクビ に せられた モノ の イチゾク が、 なんの メンボク あって、 ホウバイ に たちまじわって ゴホウコウ を しよう。 コノウエ は ゼヒ に およばない。 ナニゴト が あろう とも、 キョウダイ ワカレワカレ に なるな と、 ヤイチエモン ドノ の いいおかれた の は この とき の こと で ある。 イチゾク ウッテ を ひきうけて、 ともに しぬる ホカ は ない と、 1 ニン の イギ を となえる モノ も なく けっした。
 アベ イチゾク は サイシ を ひきまとめて、 ゴンベエ が ヤマザキ の ヤシキ に たてこもった。
 おだやか ならぬ イチゾク の ヨウス が カミ に きこえた。 ヨコメ が テイサツ に でて きた。 ヤマザキ の ヤシキ では モン を ゲンジュウ に とざして しずまりかえって いた。 イチダユウ や ゴダユウ の タク は アキヤ に なって いた。
 ウッテ の テクバリ が さだめられた。 オモテモン は ソバモノガシラ タケノウチ カズマ ナガマサ が シキヤク を して、 それ に コガシラ ソエジマ クヘエ、 おなじく ノムラ ショウベエ が したがって いる。 カズマ は 1150 コク で テッポウグミ 30 チョウ の カシラ で ある。 フダイ の オトナ シマ トクエモン が トモ を する。 ソエジマ、 ノムラ は トウジ 100 コク の モノ で ある。 ウラモン の シキヤク は チギョウ 500 コク の ソバモノガシラ タカミ ゴンエモン シゲマサ で、 これ も テッポウグミ 30 チョウ の カシラ で ある。 それ に メツケ ハタ ジュウダユウ と タケノウチ カズマ の コガシラ で トウジ 100 コク の チバ サクベエ と が したがって いる。
 ウッテ は 4 ガツ 21 ニチ に さしむけられる こと に なった。 ゼンバン に ヤマザキ の ヤシキ の シュウイ には ヨマワリ が つけられた。 ヨ が ふけて から サムライブン の モノ が ヒトリ フクメン して、 ヘイ を ウチ から のりこえて でた が、 マワリヤク の サブリ カザエモン が クミ の アシガル マルヤマ サンノジョウ が うちとった。 その ノチ ヨアケ まで ナニゴト も なかった。
 かねて キンリン の モノ には サタ が あった。 たとい トウバン たり とも ザイシュク して ヒ の ヨウジン を おこたらぬ よう に いたせ と いう の が ヒトツ。 ウッテ で ない のに、 アベ が ヤシキ に いりこんで テダシ を する こと は ゲンキン で ある が、 オチュウド は カッテ に うちとれ と いう の が フタツ で あった。
 アベ イチゾク は ウッテ の むかう ヒ を その ゼンジツ に ききしって、 まず テイナイ を くまなく ソウジ し、 みぐるしい もの は ことごとく やきすてた。 それから ロウニャク うちよって シュエン を した。 それから ロウジン や オンナ は ジサツ し、 おさない モノ は てんでに さしころした。 それから ニワ に おおきい アナ を ほって シガイ を うめた。 アト に のこった の は クッキョウ の ワカモノ ばかり で ある。 ヤゴベエ、 イチダユウ、 ゴダユウ、 シチノジョウ の 4 ニン が サシズ して、 ショウジ フスマ を とりはらった ヒロマ に ケライ を あつめて、 カネタイコ を ならさせ、 コウセイ に ネンブツ を させて ヨ の あける の を まった。 これ は ロウジン や サイシ を とむらう ため だ とは いった が、 じつは ゲニン ども に オクビョウ の ネン を おこさせぬ ヨウジン で あった。

 アベ イチゾク の たてこもった ヤマザキ の ヤシキ は、 ノチ に サイトウ カンスケ の すんだ ところ で、 ムカイ は ヤマナカ マタザエモン、 サユウ リョウドナリ は ツカモト マタシチロウ、 ヒラヤマ サブロウ の スマイ で あった。
 この ウチ で ツカモト が イエ は、 もと アマクサ グン を サンブン して りょうして いた ツカモト、 アマクサ、 シキ の 3 ケ の ヒトツ で ある。 コニシ ユキナガ が ヒゴ ハンゴク を おさめて いた とき、 アマクサ、 シキ は ツミ を おかして ちゅうせられ、 ツカモト だけ が のこって いて、 ホソカワ-ケ に つかえた。
 マタシチロウ は ヘイゼイ アベ ヤイチエモン が イッカ と こころやすく して、 シュジン ドウシ は もとより、 サイジョ まで も たがいに オウライ して いた。 なかにも ヤイチエモン の ジナン ヤゴベエ は ヤリ が トクイ で、 マタシチロウ も おなじ ワザ を たしむ ところ から、 したしい ナカ で コウゲン を しあって、 「オテマエ が ジョウズ でも ソレガシ には かなうまい」、 「いや ソレガシ が なんで オテマエ に まけよう」 など と いって いた。
 そこで センダイ の トノサマ の ビョウチュウ に、 ヤイチエモン が ジュンシ を ねがって ゆるされぬ と きいた とき から、 マタシチロウ は ヤイチエモン の キョウチュウ を さっして キノドク-がった。 それから ヤイチエモン の オイバラ、 カトク ソウゾクニン ゴンベエ の コウヨウイン での フルマイ、 それ が モト に なって の シケイ、 ヤゴベエ イカ イチゾク の タテコモリ と いう ジュンジョ に、 アベ-ケ が だんだん ヒウン に かたむいて きた ので、 マタシチロウ は シンミ の モノ にも おとらぬ シンツウ を した。
 ある ヒ マタシチロウ が ニョウボウ に いいつけて、 よふけて から アベ の ヤシキ へ ミマイ に やった。 アベ イチゾク は カミ に そむいて ロウジョウ-めいた こと を して いる から、 オトコ ドウシ は コウツウ する こと が できない。 しかるに サイショ から の ユキガカリ を しって いて みれば、 イチゾク の モノ を アクニン と して にくむ こと は できない。 ましてや ネンライ コンイ に した アイダガラ で ある。 フジョ の ミ と して ひそか に みまう の は、 よしや ゴジツ に ハッカク した とて モウシワケ の たたぬ こと でも あるまい と いう カンガエ で、 ミマイ には やった の で ある。 ニョウボウ は オット の コトバ を きいて、 よろこんで ココロヅクシ の シナ を とりそろえて、 よふけて トナリ へ おとずれた。 これ も なかなか キジョウ な オンナ で、 もし ゴジツ に ハッカク したら、 ツミ を ジシン に ひきうけて、 オット に メイワク は かけまい と おもった の で ある。
 アベ イチゾク の ヨロコビ は ヒジョウ で あった。 セケン は ハナ さき トリ うたう ハル で ある のに、 フコウ に して シンブツ にも ニンゲン にも みはなされて、 かく ロウキョ して いる ワレワレ で ある。 それ を みもうて やれ と いう オット も オット、 その イイツケ を まもって きて くれる ツマ も ツマ、 じつに ありがたい ココロガケ だ と、 しんから かんじた。 オンナ たち は ナミダ を ながして、 こう なりはてて しぬる から は、 ヨノナカ に タレヒトリ ボダイ を とむろうて くれる モノ も あるまい、 どうぞ おもいだしたら、 イッペン の エコウ を して もらいたい と たのんだ。 コドモ たち は モンガイ へ ヒトアシ も だされぬ ので、 ふだん やさしく して くれた ツカモト の ニョウボウ を みて、 ミギヒダリ から とりすがって、 たやすく はなして かえさなかった。
 アベ の ヤシキ へ ウッテ の むかう ゼンバン に なった。 ツカモト マタシチロウ は つくづく かんがえた。 アベ イッカ は ジブン とは したしい アイダガラ で ある。 それで ゴジツ の トガメ も あろう か とは おもいながら、 ニョウボウ を ミマイ に まで やった。 しかし いよいよ ミョウチョウ は カミ の ウッテ が アベ-ケ へ くる。 これ は ギャクゾク を セイバツ せられる オカミ の イクサ も おなじ こと で ある。 ゴサタ には ヒ の ヨウジン を せい、 テダシ を するな と いって ある が、 ブシ たる モノ が この バアイ に フトコロデ を して みて いられた もの では ない。 ナサケ は ナサケ、 ギ は ギ で ある。 オレ には センヨウ が ある と かんがえた。 そこで コウ たけて ヌキアシ を して、 ウシロクチ から うすくらい ニワ へ でて、 アベ-ケ との サカイ の タケガキ の ムスビナワ を ことごとく きって おいた。 それから かえって ミジタク を して、 ナゲシ に かけた テヤリ を おろし、 タカノハ の モン の ついた サヤ を はらって、 ヨ の あける の を まって いた。

 ウッテ と して アベ の ヤシキ の オモテモン に むかう こと に なった タケノウチ カズマ は、 ブドウ の ホマレ ある イエ に うまれた モノ で ある。 センゾ は ホソカワ タカクニ の テ に ぞくして、 ゴウキュウ の ナ を えた シマムラ ダンジョウ タカノリ で ある。 キョウロク 4 ネン に タカクニ が セッツ ノ クニ アマガサキ に やぶれた とき、 ダンジョウ は テキ フタリ を リョウワキ に はさんで ウミ に とびこんで しんだ。 ダンジョウ の コ イチベエ は カワチ の ヤスミ-ケ に つかえて イチジ ヤスミ と しょうした が、 タケノウチコエ を りょうする こと に なって、 タケノウチ と あらためた。 タケノウチ イチベエ の コ キチベエ は コニシ ユキナガ に つかえて、 キイ ノ クニ オオタ の シロ を ミズゼメ に した とき の コウ で、 トヨトミ タイコウ に シロネリ に シュ の ヒノマル の ジンバオリ を もらった。 チョウセン セイバツ の とき には コニシ-ケ の ヒトジチ と して、 リ オウキュウ に 3 ネン おしこめられて いた。 コニシ-ケ が ほろびて から、 カトウ キヨマサ に 1000 ゴク で めしだされて いた が、 シュクン と モノアラソイ を して ハクチュウ に クマモト ジョウカ を たちのいた。 カトウ-ケ の ウッテ に そなえる ため に、 テッポウ に タマ を こめ、 ヒナワ に ヒ を つけて もたせて のいた。 それ を サンサイ が ブゼン で 1000 ゴク に めしかかえた。 この キチベエ に 5 ニン の ダンシ が あった。 チョウナン は やはり キチベエ と なのった が、 ノチ テイハツ して ヤスミ ケンザン と いった。 ジナン は シチロウエモン、 サンナン は ジロウダユウ、 ヨナン は ハチベエ、 ゴナン が すなわち カズマ で ある。
 カズマ は タダトシ の コゴショウ を つとめて、 シマバラ セイバツ の とき トノサマ の ソバ に いた。 カンエイ 15 ネン 2 ガツ 25 ニチ ホソカワ の テノモノ が シロ を のりとろう と した とき、 カズマ が 「どうぞ オサキテ へ おつかわし くだされい」 と タダトシ に ねがった。 タダトシ は きかなかった。 おしかえして ねだる よう に ねがう と、 タダトシ が リップク して、 「コセガレ、 カッテ に うせおれ」 と さけんだ。 カズマ は その とき 16 サイ で ある。 「あっ」 と いいさま かけだす の を みおくって、 タダトシ が 「ケガ を するな よ」 と コエ を かけた。 オトナ シマ トクエモン、 ゾウリトリ 1 ニン、 ヤリモチ 1 ニン が アト から つづいた。 シュウジュウ 4 ニン で ある。 シロ から うちだす テッポウ が はげしい ので、 シマ が カズマ の きて いた ショウジョウヒ の ジンバオリ の スソ を つかんで アト へ ひいた。 カズマ は ふりきって シロ の イシガキ に よじのぼる。 シマ も ぜひなく ついて のぼる。 とうとう ジョウナイ に はいって はたらいて、 カズマ は テ を おった。 おなじ バショ から せめいった ヤナガワ の タチバナ ヒダ ノ カミ ムネシゲ は 72 サイ の フルツワモノ で、 この とき の ハタラキブリ を みて いた が、 ワタナベ シンヤ、 ナカミツ ナイゼン と カズマ との 3 ニン が あっぱれ で あった と いって、 3 ニン へ レンメイ の カンジョウ を やった。 ラクジョウ の ノチ、 タダトシ は カズマ に セキ カネミツ の ワキザシ を やって、 ロク を 1150 コク に カゾウ した。 ワキザシ は 1 シャク 8 スン、 スグヤキ ムメイ、 ヨコヤスリ、 ギン の クヨウ の ミツナラビ の メヌキ、 シャクドウブチ、 キンゴシラエ で ある。 メヌキ の アナ は フタツ あって、 ヒトツ は ナマリ で うめて あった。 タダトシ は この ワキザシ を ヒゾウ して いた ので、 カズマ に やって から も、 トジョウ の とき など には、 「カズマ、 あの ワキザシ を かせ」 と いって、 かりて さした こと も たびたび ある。
 ミツヒサ に アベ の ウッテ を いいつけられて、 カズマ が よろこんで ツメショ へ さがる と、 ホウバイ の 1 ニン が ささやいた。
「カンブツ にも トリエ は ある。 オヌシ に オモテモン の サイハイ を ふらせる とは、 ハヤシ ドノ に して は よく できた」
 カズマ は ミミ を そばだてた。 「なに コノタビ の オヤクメ は ゲキ が もうしあげて おおせつけられた の か」
「そう じゃ。 ゲキ ドノ が トノサマ に いわれた。 カズマ は ゴセンダイ が シュッカク の オトリタテ を なされた モノ じゃ。 ゴオンホウジ に あれ を おやり なされい と いわれた。 モッケ の サイワイ では ない か」
「ふん」 と いった カズマ の ミケン には、 ふかい シワ が きざまれた。 「よい わ。 ウチジニ する まで の こと じゃ」 こう いいはなって、 カズマ は ついと たって ヤカタ を さがった。
 この とき の カズマ の ヨウス を ミツヒサ が きいて、 タケノウチ の ヤシキ へ ツカイ を やって、 「ケガ を せぬ よう に、 シュビ よく いたして まいれ」 と いわせた。 カズマ は 「ありがたい オコトバ を たしか に うけたまわった と もうしあげて くだされい」 と いった。
 カズマ は ホウバイ の クチ から、 ゲキ が ジブン を おして コノタビ の ヤク に あたらせた の だ と きく や いなや、 ソクジ に ウチジニ を しよう と ケッシン した。 それ が どうしても うごかす こと の できぬ ほど ケンゴ な ケッシン で あった。 ゲキ は ゴオンホウジ を させる と いった と いう こと で ある。 この コトバ は はからず きいた の で ある が、 じつは きく まで も ない、 ゲキ が すすめる には、 そう いって すすめる に きまって いる。 こう おもう と、 カズマ は たって も すわって も いられぬ よう な キ が する。 ジブン は ゴセンダイ の ヒキタテ を こうむった には ちがいない。 しかし ゲンプク を して から ノチ の ジブン は、 いわば オオゼイ の キンジュ の ウチ の 1 ニン で、 べつに シュッショク の オアツカイ を うけて は いない。 ゴオン には タレ も よくして いる。 ゴオンホウジ を ジブン に かぎって しなくて は ならぬ と いう の は、 どういう イミ か。 いう まで も ない、 ジブン は ジュンシ する はず で あった のに、 ジュンシ しなかった から、 イノチガケ の バショ に やる と いう の で ある。 イノチ は ナンドキ でも よろこんで すてる が、 さきに しおくれた ジュンシ の カワリ に しのう とは おもわない。 イマ イノチ を おしまぬ ジブン が、 なんで ゴセンダイ の チュウイン の ハテ の ヒ に イノチ を おしんだ で あろう。 イワレ の ない こと で ある。 ひっきょう どれ だけ の ゴジッコン に なった ヒト が ジュンシ する と いう、 はっきり した サカイ は ない。 おなじ よう に つとめて いた ゴキンジュ の ワカザムライ の ウチ に ジュンシ の サタ が ない ので、 ジブン も ながらえて いた。 ジュンシ して よい こと なら、 ジブン は タレ より も サキ に する。 それほど の こと は タレ の メ にも みえて いる よう に おもって いた。 それに とうに する はず の ジュンシ を せず に いた ニンゲン と して ゴクイン を うたれた の は、 かえすがえす も くちおしい。 ジブン は すすぐ こと の できぬ ケガレ を ミ に うけた。 それほど の ハジ を ヒト に くわえる こと は、 あの ゲキ で なくて は できまい。 ゲキ と して は さも ある べき こと で ある。 しかし トノサマ が なぜ それ を おききいれ に なった か。 ゲキ に きずつけられた の は しのぶ こと も できよう。 トノサマ に すてられた の は しのぶ こと が できない。 シマバラ で シロ に のりいろう と した とき、 ゴセンダイ が およびとめ なされた。 それ は オウママワリ の モノ が わざと サキテ に くわわる の を おとめ なされた の で ある。 このたび ゴトウシュ の ケガ を するな と おっしゃる の は、 それ とは ちがう。 おしい イノチ を いたわれ と おっしゃる の で ある。 それ が なんの ありがたかろう。 ふるい キズ の ウエ を あらた に むちうたれる よう な もの で ある。 ただ イッコク も はやく しにたい。 しんで すすがれる ケガレ では ない が、 しにたい。 イヌジニ でも よい から、 しにたい。
 カズマ は こう おもう と、 ヤ も タテ も たまらない。 そこで サイシ には アベ の ウッテ を おおせつけられた と だけ、 てみじか に いいきかせて、 ヒトリ ひたすら シタク を いそいだ。 ジュンシ した ヒトタチ は ミナ アンド して シ に つく と いう ココロモチ で いた のに、 カズマ が ココロモチ は クツウ を のがれる ため に シ を いそぐ の で ある。 オトナ シマ トクエモン が ジジョウ を さっして、 シュジン と おなじ ケッシン を した ホカ には、 イッカ の ウチ に カズマ の シンテイ を くみしった モノ が ない。 コトシ 21 サイ に なる カズマ の ところ へ、 キョネン きた ばかり の まだ ムスメ-らしい ニョウボウ は、 トウサイ の オンナ の コ を だいて うろうろ して いる ばかり で ある。
 アス は ウチイリ と いう 4 ガツ ハツカ の ヨ、 カズマ は ギョウズイ を つかって、 サカヤキ を そって、 カミ には タダトシ に ハイリョウ した メイコウ ハツネ を たきこめた。 シロムク に シロダスキ、 シロハチマキ を して、 カタ に アイジルシ の スミトリガミ を つけた。 コシ に おびた カタナ は 2 シャク 4 スン 5 ブ の マサモリ で、 センゾ シマムラ ダンジョウ が アマガサキ で ウチジニ した とき、 コキョウ に おくった カタミ で ある。 それ に ウイジン の とき ハイリョウ した カネミツ を さしそえた。 カドグチ には ウマ が いなないて いる。
 テヤリ を とって ニワ に おりたつ とき、 カズマ は ワラジ の オ を オトコムスビ に して、 あまった オ を ショウトウ で きって すてた。

 アベ の ヤシキ の ウラモン に むかう こと に なった タカミ ゴンエモン は もと ワダ ウジ で、 オウミ ノ クニ ワダ に すんだ ワダ タジマ ノ カミ の スエ で ある。 はじめ ガモウ カタヒデ に したがって いた が、 ワダ ショウゴロウ の ダイ に ホソカワ-ケ に つかえた。 ショウゴロウ は ギフ、 セキガハラ の タタカイ に コウ の あった モノ で ある。 タダトシ の アニ ヨイチロウ タダタカ の シタ に ついて いた ので、 タダタカ が ケイチョウ 5 ネン オオサカ で ツマ マエダ シ の はやく おちのびた ため に チチ の カンキ を うけ、 ニュウドウ キュウム と なって ルロウ した とき、 コウヤサン や キョウト まで トモ を した。 それ を サンサイ が コクラ へ よびよせて、 タカミ ウジ を なのらせ、 バンガシラ に した。 チギョウ 500 コク で あった。 ショウゴロウ の コ が ゴンエモン で ある。 シマバラ の タタカイ に コウ が あった が、 グンレイ に そむいた カド で、 いったん ヤク を めしあげられた。 それ が しばらく して から キサン して ソバモノガシラ に なって いた の で ある。 ゴンエモン は ウチイリ の シタク の とき クロハブタエ の モンツキ を きて、 かねて ヒゾウ して いた ビゼン オサフネ の カタナ を とりだして おびた。 そして ジュウモンジ の ヤリ を もって でた。
 タケノウチ カズマ の テ に シマ トクエモン が いる よう に、 タカミ ゴンエモン は ヒトリ の コショウ を つれて いる。 アベ イチゾク の こと の あった 2~3 ネン-ゼン の ナツ の ヒ に、 この コショウ は ヒバン で ヘヤ に ヒルネ を して いた。 そこ へ アイヤク の ヒトリ が トモサキ から かえって マハダカ に なって、 テオケ を さげて イド へ ミズ を くみ に ゆきかけた が、 ふと この コショウ の ねて いる の を みて、 「オレ が オトモ から かえった に、 ミズ も くんで くれず に ねて おる かい」 と いいざま に マクラ を けった。 コショウ は はねおきた。
「なるほど。 メ が さめて おったら、 ミズ も くんで やろう。 じゃが マクラ を アシゲ に する と いう こと が ある か。 コノママ には すまん ぞ」 こう いって ヌキウチ に アイヤク を オオゲサ に きった。
 コショウ は しずか に アイヤク の ムネ の ウエ に またがって トドメ を さして、 オトナ の コヤ へ いって シサイ を はなした。 「ソクザ に しぬる はず で ござりました が、 ゴフシン も あろう か と ぞんじまして」 と、 ハダ を ぬいで セップク しよう と した。 オトナ が 「まず まて」 と いって ゴンエモン に つげた。 ゴンエモン は まだ ヤクショ から さがって、 イフク も あらためず に いた ので、 そのまま ヤカタ へ でて タダトシ に もうしあげた。 タダトシ は 「もっとも の こと じゃ、 セップク には およばぬ」 と いった。 この とき から コショウ は ゴンエモン に イノチ を ささげて ホウコウ して いる の で ある。
 コショウ は エビラ を おい ハンキュウ を とって、 シュウ の カタワラ に ひきそった。

 カンエイ 19 ネン 4 ガツ 21 ニチ は ムギアキ に よく ある ウスグモリ の ヒ で あった。
 アベ イチゾク の たてこもって いる ヤマザキ の ヤシキ に うちいろう と して、 タケノウチ カズマ の テノモノ は フツギョウ に オモテモン の マエ に きた。 よどおし カネタイコ を ならして いた ヤシキ の ウチ が、 イマ は ひっそり と して アキヤ か と おもわれる ほど で ある。 モン の トビラ は とざして ある。 イタベイ の ウエ に 2~3 ジャク のびて いる キョウチクトウ の ウラ には、 クモノイ が かかって いて、 それ に ヨツユ が シンジュ の よう に ひかって いる。 ツバメ が 1 ワ どこ から か とんで きて、 つと ヘイ の ウチ に いった。
 カズマ は ウマ を のりはなって おりたって、 しばらく ヨウス を みて いた が、 「モン を あけい」 と いった。 アシガル が フタリ ヘイ を のりこして ウチ に はいった。 モン の マワリ には テキ は ヒトリ も いない ので、 ジョウマエ を うちこわして カンノキ を ぬいた。
 リンカ の ツカモト マタシチロウ は カズマ の テノモノ が モン を あける モノオト を きいて、 ゼンヤ ムスビナワ を きって おいた タケガキ を ふみやぶって、 かけこんだ。 マイニチ の よう に ユキキ して、 スミズミ まで アンナイ を しって いる イエ で ある。 テヤリ を かまえて ダイドコロ の クチ から、 つと はいった。 ザシキ の ト を しめきって、 こみいる ウッテ の モノ を ヒトリヒトリ うちとろう と して ひかえて いた イチゾク の ナカ で、 ウラグチ に ヒト の ケハイ の する の に、 まず キ の ついた の は ヤゴベエ で ある。 これ も テヤリ を さげて ダイドコロ へ み に でた。
 フタリ は ヤリ の ホサキ と ホサキ と が ふれあう ほど に あいたいした。 「や、 マタシチロウ か」 と、 ヤゴベエ が コエ を かけた。
「おう。 かねて の コウゲン が ある。 オヌシ が ヤリ の テナミ を み に きた」
「よう わせた。 さあ」
 フタリ は イッポ しざって ヤリ を まじえた。 しばらく たたかった が、 ソウジュツ は マタシチロウ の ほう が すぐれて いた ので、 ヤゴベエ の ムナイタ を したたか に つきぬいた。 ヤゴベエ は ヤリ を からり と すてて、 ザシキ の ほう へ ひこう と した。
「ヒキョウ じゃ。 ひくな」 マタシチロウ が さけんだ。
「いや にげ は せぬ。 ハラ を きる の じゃ」 いいすてて ザシキ に はいった。
 その セツナ に 「オジサマ、 オアイテ」 と さけんで、 マエガミ の シチノジョウ が デンコウ の ごとく に とんで でて、 マタシチロウ の フトモモ を ついた。 ジッコン の ヤゴベエ に フカデ を おわせて、 おぼえず キ が ゆるんで いた ので、 シュレン の マタシチロウ も ショウネン の テ に かかった の で ある。 マタシチロウ は ヤリ を すてて その バ に たおれた。
 カズマ は モンナイ に いって ニンズ を ヤシキ の スミズミ に くばった。 さて マッサキ に ゲンカン に すすんで みる と、 ショウメン の イタド が ホソメ に あけて ある。 カズマ が その ト に テ を かけよう と する と、 シマ トクエモン が おしへだてて、 コトバ せわしく ささやいた。
「おまち なさりませ。 トノ は キョウ の ソウダイショウ じゃ。 ソレガシ が オサキ を いたします」
 トクエモン は ト を がらり と あけて とびこんだ。 まちかまえて いた イチダユウ の ヤリ に、 トクエモン は ミギ の メ を つかれて よろよろ と カズマ に たおれかかった。
「ジャマ じゃ」 カズマ は トクエモン を おしのけて すすんだ。 イチダユウ、 ゴダユウ の ヤリ が サユウ の ヒハラ を つきぬいた。
 ソエジマ クヘエ、 ノムラ ショウベエ が つづいて かけこんだ。 トクエモン も イタデ に くっせず とって かえした。
 この とき ウラモン を おしやぶって はいった タカミ ゴンエモン は ジュウモンジヤリ を ふるって、 アベ の ケライ ども を つきまくって ザシキ に きた。 チバ サクベエ も つづいて こみいった。
 ウラオモテ フタテ の モノドモ が いりちがえて、 おめきさけんで ついて くる。 ショウジ フスマ は とりはらって あって も、 30 ジョウ に たらぬ ザシキ で ある。 シガイセン の サンジョウ が ヤセン より はなはだしい と おなじ ドウリ で、 サラ に もられた ヒャクチュウ の あいくらう にも たとえつ べく、 メ も あてられぬ アリサマ で ある。
 イチダユウ、 ゴダユウ は アイテ きらわず ヤリ を まじえて いる うち、 ゼンシン に かぞえられぬ ほど の キズ を うけた。 それでも くっせず に、 ヤリ を すてて カタナ を ぬいて きりまわって いる。 シチノジョウ は いつのまにか たおれて いる。
 フトモモ を つかれた ツカモト マタシチロウ が ダイドコロ に ふして いる と、 タカミ の テノモノ が みて、 「テ を おおい なされた な、 おみごと じゃ、 はよう おひき なされい」 と いって、 オク へ とおりぬけた。
「ひく アシ が あれば、 ワシ も オク へ はいる が」 と、 マタシチロウ は にがにがしげ に いって ハガミ を した。 そこ へ シュウ の アト を したって いりこんだ ケライ の ヒトリ が かけつけて、 カタ に かけて しりぞいた。
 いま ヒトリ の ツカモト-ケ の ヒカン アマクサ ヘイクロウ と いう モノ は、 シュウ の ノキクチ を まもって、 ハンキュウ を もって メ に かかる テキ を いて いた が、 その バ で ウチジニ した。
 タケノウチ カズマ の テ では シマ トクエモン が まず しんで、 ついで コガシラ ソエジマ クヘエ が しんだ。
 タカミ ゴンエモン が ジュウモンジヤリ を ふるって はたらく アイダ、 ハンキュウ を もった コショウ は いつも ヤリワキ を つめて テキ を いて いた が、 ノチ には カタナ を ぬいて きって まわった。 ふと みれば テッポウ で ゴンエモン を ねらって いる モノ が ある。
「あの タマ は ワタクシ が うけとめます」 と いって、 コショウ が ゴンエモン の マエ に たつ と、 タマ が きて あたった。 コショウ は ソクシ した。 タケノウチ の クミ から ぬいて タカミ に つけられた コガシラ チバ サクベエ は オモデ を おって ダイドコロ に でて、 ミズガメ の ミズ を のんだ が、 そのまま そこ に へたばって いた。
 アベ イチゾク は サイショ に ヤゴベエ が セップク して、 イチダユウ、 ゴダユウ、 シチノジョウ は とうとう ミナ フカデ に イキ が きれた。 ケライ も オオク は ウチジニ した。
 タカミ ゴンエモン は ウラオモテ の ニンズ を あつめて、 アベ が ヤシキ の ウラテ に あった モノオキゴヤ を くずさせて、 それ に ヒ を かけた。 カゼ の ない ヒ の ウスグモリ の ソラ に、 ケムリ が マッスグ に のぼって、 エンポウ から みえた。 それから ヒ を ふみけして、 アト を ミズ で しめして ひきあげた。 ダイドコロ に いた チバ サクベエ、 その ホカ オモデ を おった モノ は ケライ や ホウバイ が カタ に かけて つづいた。 ジコク は ちょうど ヒツジ ノ コク で あった。

 ミツヒサ は たびたび カチュウ の おもだった モノ の イエ へ あそび に ゆく こと が あった が、 アベ イチゾク を うち に やった 21 ニチ の ヒ には、 マツノ サキョウ の ヤシキ へ フツギョウ から でかけた。
 ヤカタ の ある オハナバタケ から は、 ヤマザキ は すぐ ムコウ に なって いる ので、 ミツヒサ が ヤカタ を でる とき、 アベ の ヤシキ の ホウガク に ヒトゴエ モノオト が する の が きこえた。
「イマ うちいった な」 と いって、 ミツヒサ は カゴ に のった。
 カゴ が ようよう 1 チョウ ばかり いった とき、 チュウシン が あった。 タケノウチ カズマ が ウチジニ を した こと は、 この とき わかった。
 タカミ ゴンエモン は ウッテ の ソウゼイ を ひきいて、 ミツヒサ の いる マツノ の ヤシキ の マエ まで ひきあげて、 アベ の イチゾク を のこらず うちとった こと を シッソウ して もらった。 ミツヒサ は じきに あおう と いって、 ゴンエモン を ショイン の ニワ に まわらせた。
 ちょうど ウノハナ の マッシロ に さいて いる カキ の アイダ に、 ちいさい シオリド の ある の を あけて はいって、 ゴンエモン は シバフ の ウエ に ついいた。 ミツヒサ が みて、 「テ を おった な、 いちだん ホネオリ で あった」 と コエ を かけた。 クロハブタエ の イフク が チミドレ に なって、 それに ヒキアゲ の とき コヤ の ヒ を ふみけした とき とびちった スミ や ハイ が マダラ に ついて いた の で ある。
「いえ。 カスリキズ で ござりまする」 ゴンエモン は ナニモノ か に ミズオチ を したたか つかれた が カイチュウ して いた カガミ に あたって ホサキ が それた。 キズ は わずか に チ を ハナガミ に にじませた だけ で ある。
 ゴンエモン は ウチイリ の とき の メイメイ の ハタラキ を くわしく ゴンジョウ して、 ダイイチ の コウ を タンシン で ヤゴベエ に フカデ を おわせた リンカ の ツカモト マタシチロウ に ゆずった。
「カズマ は どう じゃった」
「オモテモン から ヒトアシ サキ に かけこみました ので みとどけません」
「さよう か。 ミナノモノ に ニワ へ はいれ と いえ」
 ゴンエモン が イチドウ を よびいれた。 オモデ で ジタク へ かいて ゆかれた ヒトタチ の ホカ は、 ミナ シバフ に ヘイフク した。 はたらいた モノ は チ に よごれて いる。 コヤ を やく テツダイ ばかり した モノ は、 ハイ ばかり あびて いる。 その ハイ ばかり あびた ナカ に、 ハタ ジュウダユウ が いた。 ミツヒサ が コエ を かけた。
「ジュウダユウ。 ソチ の ハタラキ は どう じゃった」
「はっ」 と いった ぎり だまって ふして いた。 ジュウダユウ は ダイヒョウ の オクビョウモノ で、 アベ が ヤシキ の ソト を うろついて いて、 ヒキアゲ の マエ に コヤ に ヒ を かけた とき、 やっと おずおず はいった の で ある。 サイショ ウッテ を おおせつけられた とき に、 オツギ へ でる ところ を ケンジュツシャ シンメン ムサシ が みて、 「ミョウガ シゴク の こと じゃ、 ずいぶん オテガラ を なされい」 と いって セナカ を ぽんと うった。 ジュウダユウ は イロ を うしなって、 ゆるんで いた ハカマ の ヒモ を しめなおそう と した が、 テ が ふるえて しまらなかった そう で ある。
 ミツヒサ は ザ を たつ とき いった。 「ミナ シュッセイ で あった ぞ。 かえって キュウソク いたせ」

 タケノウチ カズマ の おさない ムスメ には ヨウシ を させて カトク ソウゾク を ゆるされた が、 この イエ は ノチ に たえた。 タカミ ゴンエモン は 300 コク、 チバ サクベエ、 ノムラ ショウベエ は カク-50 コク の カゾウ を うけた。 ツカモト マタシチロウ へは コメダ ケンモツ が うけたまわって、 クミガシラ タニ クラノスケ を シシャ に やって、 ホメコトバ が あった。 シンセキ ホウユウ が ヨロコビ を いい に くる と、 マタシチロウ は わらって、 「ゲンキ テンショウ の コロ は、 シロゼメ ノアワセ が アサユウ の メシ ドウヨウ で あった、 アベ イチゾク ウチトリ なぞ は チャノコ の チャノコ の アサチャノコ じゃ」 と いった。 2 ネン たって、 ショウホウ ガンネン の ナツ、 マタシチロウ は キズ が いえて ミツヒサ に ハイエツ した。 ミツヒサ は テッポウ 10 チョウ を あずけて、 「キズ が コンジ する よう に トウジ が したくば いたせ、 また フガイ に ベッソウチ を つかわす から、 バショ を のぞめ」 と いった。 マタシチロウ は マシキ コイケ ムラ に ヤシキチ を もらった。 その ハイゴ が ヤブヤマ で ある。 「ヤブヤマ も つかわそう か」 と、 ミツヒサ が いわせた。 マタシチロウ は それ を ジタイ した。 タケ は ヘイジツ も ゴヨウ に たつ。 センソウ でも ある と、 タケタバ が たくさん いる。 それ を ワタクシ に ハイリョウ して は キ が すまぬ と いう の で ある。 そこで ヤブヤマ は エイタイ オアズケ と いう こと に なった。
 ハタ ジュウダユウ は ツイホウ せられた。 タケノウチ カズマ の アニ ハチベエ は ワタクシ に ウッテ に くわわりながら、 オトウト の ウチジニ の バショ に いあわせなかった ので、 ヘイモン を おおせつけられた。 また ウママワリ の コ で キンジュ を つとめて いた ソレガシ は、 アベ の ヤシキ に ちかく すまって いた ので、 「ヒ の ヨウジン を いたせ」 と いって トウバン を ゆるされ、 チチ と イッショ に ヤネ に あがって ヒノコ を けして いた。 ノチ に せっかく トウバン を ゆるされた オボシメシ に そむいた と こころづいて オイトマ を ねがった が、 ミツヒサ は 「そりゃ オクビョウ では ない、 イゴ は もすこし キ を つける が よい ぞ」 と いって、 そのまま つとめさせた。 この キンジュ は ミツヒサ の なくなった とき ジュンシ した。
 アベ イチゾク の シガイ は イデノクチ に ひきだして、 ギンミ せられた。 シラカワ で ヒトリヒトリ の キズ を あらって みた とき、 ツカモト マタシチロウ の ヤリ に ムナイタ を つきぬかれた ヤゴベエ の キズ は、 タレ の うけた キズ より も リッパ で あった ので、 マタシチロウ は いよいよ メンボク を ほどこした。

2015/08/21

オウゴン フウケイ

 オウゴン フウケイ

 ダザイ オサム

   ウミ の キシベ に ミドリ なす カシ の キ、 その カシ の キ に オウゴン の ほそき クサリ の むすばれて   ――プーシキン――

 ワタシ は コドモ の とき には、 あまり タチ の いい ほう では なかった。 ジョチュウ を いじめた。 ワタシ は、 のろくさい こと は きらい で、 それゆえ、 のろくさい ジョチュウ を ことにも いじめた。 オケイ は、 のろくさい ジョチュウ で ある。 リンゴ の カワ を むかせて も、 むきながら ナニ を かんがえて いる の か、 2 ド も 3 ド も テ を やすめて、 おい、 と その たび ごと に きびしく コエ を かけて やらない と、 カタテ に リンゴ、 カタテ に ナイフ を もった まま、 いつまでも、 ぼんやり して いる の だ。 たりない の では ない か、 と おもわれた。 ダイドコロ で、 なにも せず に、 ただ のっそり つったって いる スガタ を、 ワタシ は よく みかけた もの で ある が、 コドモゴコロ にも、 うすみっともなく、 ミョウ に カン に さわって、 おい、 オケイ、 ヒ は みじかい の だぞ、 など と おとなびた、 イマ おもって も セスジ の さむく なる よう な ヒドウ の コトバ を なげつけて、 それ で たりず に イチド は オケイ を よびつけ、 ワタシ の エホン の カンペイシキ の ナンビャクニン と なく うようよ して いる ヘイタイ、 ウマ に のって いる モノ も あり、 ハタ もって いる モノ も あり、 ジュウ になって いる モノ も あり、 その ヒトリヒトリ の ヘイタイ の カタチ を ハサミ で もって きりぬかせ、 ブキヨウ な オケイ は、 アサ から ヒルメシ も くわず ヒグレ-ゴロ まで かかって、 やっと 30 ニン くらい、 それ も タイショウ の ヒゲ を カタホウ きりおとしたり、 ジュウ もつ ヘイタイ の テ を、 クマ の テ みたい に おそろしく おおきく きりぬいたり、 そうして いちいち ワタシ に どなられ、 ナツ の コロ で あった、 オケイ は アセカキ なので、 きりぬかれた ヘイタイ たち は ミンナ、 オケイ の テ の アセ で、 びしょびしょ ぬれて、 ワタシ は ついに カンシャク を おこし、 オケイ を けった。 たしか に カタ を けった はず なのに、 オケイ は ミギ の ホオ を おさえ、 がばと なきふし、 なきなき いった。 「オヤ に さえ カオ を ふまれた こと は ない。 イッショウ おぼえて おります」 うめく よう な クチョウ で、 とぎれ、 とぎれ そう いった ので、 ワタシ は、 さすが に いや な キ が した。 その ホカ にも、 ワタシ は ほとんど それ が テンメイ でも ある か の よう に、 オケイ を いびった。 イマ でも、 タショウ は そう で ある が、 ワタシ には ムチ な ロドン の モノ は、 とても カンニン できぬ の だ。
 イッサクネン、 ワタシ は イエ を おわれ、 イチヤ の うち に キュウハク し、 チマタ を さまよい、 ショショ に なきつき、 その ヒ その ヒ の イノチ つなぎ、 やや ブンピツ で もって、 ジカツ できる アテ が つきはじめた と おもった トタン、 ヤマイ を えた。 ヒトビト の ナサケ で ヒトナツ、 チバ ケン フナバシ マチ、 ドロ の ウミ の すぐ チカク に ちいさい イエ を かり、 ジスイ の ホヨウ を する こと が でき、 マイヨ マイヨ、 ネマキ を しぼる ほど の ネアセ と たたかい、 それでも シゴト は しなければ ならず、 マイアサ マイアサ の つめたい 1 ゴウ の ギュウニュウ だけ が、 ただ それ だけ が、 キミョウ に いきて いる ヨロコビ と して かんじられ、 ニワ の スミ の キョウチクトウ の ハナ が さいた の を、 めらめら ヒ が もえて いる よう に しか かんじられなかった ほど、 ワタシ の アタマ も ほとほと いたみつかれて いた。
 その コロ の こと、 コセキシラベ の 40 に ちかい、 やせて コガラ の オマワリ が ゲンカン で、 チョウボ の ワタシ の ナマエ と、 それから ブショウヒゲ ノバシホウダイ の ワタシ の カオ と を、 つくづく みくらべ、 おや、 アナタ は…… の オボッチャン じゃ ございません か? そう いう オマワリ の コトバ には、 つよい コキョウ の ナマリ が あった ので、
「そう です」 ワタシ は ふてぶてしく こたえた。 「アナタ は?」
 オマワリ は やせた カオ に くるしい ばかり に いっぱい の エミ を たたえて、
「やあ。 やはり そう でした か。 オワスレ かも しれない けれど、 かれこれ 20 ネン ちかく マエ、 ワタシ は K で バシャヤ を して いました」
 K とは、 ワタシ の うまれた ムラ の ナマエ で ある。
「ゴラン の とおり」 ワタシ は、 にこり とも せず に おうじた。 「ワタシ も、 イマ は おちぶれました」
「とんでもない」 オマワリ は、 なおも たのしげ に わらいながら、 「ショウセツ を おかき なさる ん だったら、 それ は なかなか シュッセ です」
 ワタシ は クショウ した。
「ところで」 と オマワリ は すこし コエ を ひくめ、 「オケイ が いつも アナタ の オウワサ を して います」
「オケイ?」 すぐに は のみこめなかった。
「オケイ です よ。 オワスレ でしょう。 オタク の ジョチュウ を して いた――」
 おもいだした。 ああ、 と おもわず うめいて、 ワタシ は ゲンカン の シキダイ に しゃがんだ まま、 アタマ を たれて、 その 20 ネン マエ、 のろくさかった ヒトリ の ジョチュウ に たいして の ワタシ の アクギョウ が、 ヒトツヒトツ、 はっきり おもいだされ、 ほとんど ザ に たえかねた。
「コウフク です か?」 ふと カオ を あげて そんな トッピョウシ ない シツモン を はっする ワタシ の カオ は、 たしか に ザイニン、 ヒコク、 ヒクツ な ワライ を さえ うかべて いた と キオク する。
「ええ、 もう、 どうやら」 クッタク なく、 そう ほがらか に こたえて、 オマワリ は ハンケチ で ヒタイ の アセ を ぬぐって、 「かまいません でしょう か。 コンド あれ を つれて、 イチド ゆっくり オレイ に あがりましょう」
 ワタシ は とびあがる ほど、 ぎょっと した。 いいえ、 もう、 それ には、 と はげしく キョヒ して、 ワタシ は いいしれぬ クツジョクカン に ミモダエ して いた。
 けれども、 オマワリ は、 ほがらか だった。
「コドモ が ねえ、 アナタ、 ここ の エキ に つとめる よう に なりまして な、 それ が チョウナン です。 それから オトコ、 オンナ、 オンナ、 その スエ の が ヤッツ で コトシ ショウガッコウ に あがりました。 もう ヒトアンシン。 オケイ も クロウ いたしました。 なんと いう か、 まあ、 オタク の よう な タイケ に あがって ギョウギ ミナライ した モノ は、 やはり どこ か、 ちがいまして な」 すこし カオ を あかく して わらい、 「おかげさま でした。 オケイ も、 アナタ の オウワサ、 しじゅう して おります。 コンド の コウキュウ には、 きっと イッショ に オレイ に あがります」 キュウ に マジメ な カオ に なって、 「それじゃ、 キョウ は シツレイ いたします。 オダイジ に」
 それから、 ミッカ たって、 ワタシ が シゴト の こと より も、 キンセン の こと で おもいなやみ、 ウチ に じっと して おれなくて、 タケ の ステッキ もって、 ウミ へ でよう と、 ゲンカン の ト を がらがら あけたら、 ソト に 3 ニン、 ユカタ きた チチ と ハハ と、 あかい ヨウフク きた オンナ の コ と、 エ の よう に うつくしく ならんで たって いた。 オケイ の カゾク で ある。
 ワタシ は ジブン でも イガイ な ほど の、 おそろしく おおきな ドセイ を はっした。
「きた の です か。 キョウ、 ワタシ これから ヨウジ が あって でかけなければ なりません。 オキノドク です が、 また の ヒ に おいで ください」
 オケイ は、 ヒン の いい チュウネン の オクサン に なって いた。 ヤッツ の コ は、 ジョチュウ の コロ の オケイ に よく にた カオ を して いて、 ウスノロ-らしい にごった メ で ぼんやり ワタシ を みあげて いた。 ワタシ は かなしく、 オケイ が まだ ヒトコト も いいださぬ うち、 にげる よう に、 カイヒン へ とびだした。 タケ の ステッキ で、 カイヒン の ザッソウ を なぎはらい なぎはらい、 イチド も アト を ふりかえらず、 イッポ、 イッポ、 ジダンダ ふむ よう な すさんだ アルキカタ で、 とにかく カイガン-ヅタイ に マチ の ほう へ、 マッスグ に あるいた。 ワタシ は マチ で ナニ を して いたろう。 ただ イミ も なく、 カツドウゴヤ の エカンバン みあげたり、 ゴフクヤ の カザリマド を みつめたり、 ちえっちえっ と シタウチ して は、 ココロ の どこ か の スミ で、 まけた、 まけた、 と ささやく コエ が きこえて、 これ は ならぬ と はげしく カラダ を ゆすぶって は、 また あるき、 30 プン ほど そうして いたろう か、 ワタシ は ふたたび ワタシ の イエ へ とって かえした。
 ウミギシ に でて、 ワタシ は たちどまった。 みよ、 ゼンポウ に ヘイワ の ズ が ある。 オケイ オヤコ 3 ニン、 のどか に ウミ に イシ の ナゲッコ して は わらいきょうじて いる。 コエ が ここ まで きこえて くる。
「なかなか」 オマワリ は、 うんと チカラ こめて イシ を ほうって、 「アタマ の よさそう な カタ じゃ ない か。 あの ヒト は、 いまに えらく なる ぞ」
「そう です とも、 そう です とも」 オケイ の ほこらしげ な たかい コエ で ある。 「あの カタ は、 おちいさい とき から ヒトリ かわって おられた。 メシタ の モノ にも それ は シンセツ に、 メ を かけて くだすった」
 ワタシ は たった まま ないて いた。 けわしい コウフン が、 ナミダ で、 まるで キモチ よく とけさって しまう の だ。
 まけた。 これ は、 いい こと だ。 そう なければ、 いけない の だ。 カレラ の ショウリ は、 また ワタシ の アス の シュッパツ にも、 ヒカリ を あたえる。

ある オンナ (ゼンペン)

 ある オンナ  (ゼンペン)  アリシマ タケオ  1  シンバシ を わたる とき、 ハッシャ を しらせる 2 バンメ の ベル が、 キリ と まで は いえない 9 ガツ の アサ の、 けむった クウキ に つつまれて きこえて きた。 ヨウコ は ヘイキ で それ ...